交通事故事故から5年もの期間が経過した後の高次脳機能障害を否定した事案

原告の高次脳機能障害の主張(自賠責認定なし)について、交通事故から約5年が経過した後の診断であること、外傷性脳損傷を裏付けるような画像所見が全くないこと、本件事故直後には意識障害もなかったことから、本件事故後約5年が経過して実施された神経学的諸検査の結果を検討するまでもなく、高次脳機能障害を認めた医師の診断は十分な医学的根拠があるものとはいえず、到底信用できるものではないとして、高次脳機能障害の発生を否定しました(東京地方裁判所平成25年9月10日判決・自動車保険ジャーナル1911号104頁)。

<弁護士のコメント>

本件は事故から長期間経過後に発症したとされる高次脳機能障害の事案であり、高次脳機能障害が争われる典型例です。外傷性の脳損傷による高次脳機能障害の場合、意識障害の有無、画像所見の有無が裁判所では大きな比重をもっています。本件でも同様の視点によって判断がされています。本件でも明らかなように、事故から長期間が経過した場合には高次脳機能障害の認定は厳しいものとなります。本件では、医師の判断についても裁判所が「信用性なし」としています。つまり、医師の意見書があっても、それだけでは高次脳機能障害が認定されるものではないということになります。

<争点>

・高次脳機能障害

・因果関係

・素因減額