「ながら運転」の厳罰化

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「ながら運転」の厳罰化についての解説です。 

近年、スマホが普及したのも原因の一つかと思いますが、自動車による「ながら運転」による事故が増加しています。

「ながら運転」とは、道路交通法によれば、「自動車又は原動機付自転車・・を運転する場合に・・当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置・・を通話・・のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置・・に表示された画像を注視」することであると規定されています(71条5号の5)。「持ち込まれた画像表示用装置」にはスマートフォンが含まれます。

以上を簡単に説明すると、「ながら運転」とは、スマートフォンやカーナビを操作したり、見たりしながら運転することです。よって、スマートフォンをハンズフリーにしての通話は、厳密には「ながら運転」には該当しないといえます(ただし、条例によって規制されている都道府県もあります)。

警察庁のデータによると、「ながら運転」が原因の事故は、平成20年からは平成30年にかけて2倍以上に増加しています。例えば、平成26年には、トラックを運転中にスマホ向けのゲームをしていた男性が小学生をはねて死亡させるという事故が発生しています。

この「ながら運転」自体は、平成11年の道路交通法改正で規制が開始されました。しかし現在、上に述べたような事故の増加を受けて、2019年5月、「ながら運転」の罰則を強化する改正案が衆議院を通過しました。

すなわち、現行法では「ながら運転」そのものは5万円以下の罰金(道路交通法71条5号の5、120条11号)ですが、これが6か月以下の懲役または10万円以下の罰金に引き上げられます。さらに、「ながら運転」によって事故を発生させるなど「公共の危険」を発生させるに至った場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(119条9号)だったものが、1年以下の懲役または30万円の罰金に引き上げられます。

つまり、今後は単なる「ながら運転」でも懲役刑を科される可能性があるということです。またこれに加えて、違反点数と反則金の上限も引き上げられます。 

ちなみに、この「ながら運転」は、自転車でも条例によって禁止されているところもあります。福岡県では、違反者には5万円以下の罰金に科せられます(福岡県道路交通法施行細則第14条3号、道路交通法120条1項9号)。