無自賠と政府保障事業

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「無自賠と政府保証事業」についての解説です。

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは、原則すべての自動車(原付含む)の所有者に法律により加入が義務付けられている対人の損害保険です(自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」といいます)5条)。自賠責保険に加入していない(無自賠)車両での運転は、懲役も含めた刑罰を受けます(自賠法86条の3第1号)。通常は、車検の際に車検の年数分を併せて加入ケースが多いと思います。

そして、すべての自動車が自賠責保険に加入していることによって、自動車事故による被害者は、その人身損害について、一定の金額を加害自動車側が加入する自賠責保険から回収できるようになっています。

ただし、この自賠責保険は、加害者側が被害側に賠償することを目的としていますから、ひき逃げで加害者不詳の場合などでは、自賠責保険を使用することはできないという事態になります。

ですが、ひき逃げなどの場合に補償がされないとなると、被害者保護に欠けることは明らかです。そこで、加害者が不明の場合や(自賠法72条1項前段)、加害者が自賠責に未加入・有効期限徒過など(同項後段)で、無自賠の場合には、政府保障事業として、自賠責に代わって、国が被害者に対して補償を行います(自賠法71条以下)。

補償される範囲は基本的には自賠責と同じです。被害者側の過失に関しても、以前は自賠責よりも厳しい判断がされていましたが、現在の事故では自賠責と同様の保障がされます。

ただし、加害者からの請求(いわゆる加害者請求)は認められない点や、国が支払った分の求償権を取得する等、自賠責との違いもあります。