自賠責保険と任意保険との関係 その1

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自賠責保険と任意保険との関係 その1」についての解説です。

交通事故を起こしてしまったときに、車に任意保険がついていたが、手違いのため自賠責保険が期限切れとなっていた場合に、任意保険からはいくら払ってもらえるのか問題となります。

結論からいうと、自賠責保険金額を控除した分のみが任意保険から支払われます。
例えば、損害額が300万円で、自賠責保険がついていたときに120万円が支払われる場合には、差額の180万円のみが任意保険から支払われます。

差額しか払われないのは、任意保険の対人賠償保険は、「上積み保険」と呼ばれ、自賠責保険を超過した損害を支払う契約となっているからです。
なお、任意保険の対人賠償保険の約款では、多くの場合、「当会社は、…自賠責保険等…よって支払われる金額を超過する場合にかぎり、その超過額のみ保険金を支払います」と記載されています。

そこで、加害者の車の自賠責の期限が切れていた場合、被害者は、自賠責保険金額分は、直接加害者から回収しなければならないのか問題となります。
この点、自賠責保険のついていない自動車事故や、ひき逃げなど加害車両が不明な場合には、自動車損害賠償保障法第72条1項に基づき、事故の加害者にかわって、被害者に対して事故による損害にかかる治療費、慰謝料等の保障金(以下、「てん補金」という。)を支払う政府保障事業があります。
そして、この請求は、加害者・被害者のいずれかの自賠責保険会社または自賠責共済を通じて、政府に対して行います。
そのため、てん補金が支払われた場合には、被害者は、自賠責保険が支払われる場合と同等の保障を受けられる可能性があるといえます。
なお、てん補金が支払われた場合、自動車損害賠償保障法第76条1項に基づき、政府は、加害者に対して被害者の有していた損害賠償請求権を代位して求償する可能性があるので、加害者は自賠責保険から支払われるはずだった賠償金の負担を免れないといえます。