2015.06.09更新

被害者に自賠責7級の高次脳機能障害と自賠責10級の聴覚障害が残存した事案において、労働能力の喪失をもっぱら高次脳機能障害の問題であるとして、労働能力喪失率56%としました。また、被害者が未成年者(症状固定時16歳)であることなどを理由に、母親の通院付添の必要性を認め、通院付添看護費として日額1000円を認めました(大阪地方裁判所平成25年8月28日判決・自動車保険ジャーナル72頁)。

<弁護士のコメント>

裁判所が認定した労働能力喪失率56%は、自賠責7級相当ですから、要するに、裁判所は聴覚障害を度外視して労働能力喪失率を認定したことになります。聴力の問題で具体的な支障が認められない事案でしたから、裁判所の判断は相当であると考えられます。これに対して、聴覚障害による生活や仕事への影響が顕著な場合にまで本裁判例は妥当するものではないと考えられます。

<争点>

・高次脳機能障害

・聴覚障害

・通院付添看護費

・裁判基準差額説

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.22更新

自賠責9級16号左前額部醜状を残した45歳男子本件事故時無職の後遺障害逸失利益について、「原告は、デリバリーヘルスの経営をしていたが平成19年春ころから体調を崩し、平成20年2月以降はアルコール依存症の治療のためF病院への入退院を繰り返していたが、平成22年5月に退院して以降は体調も落ち着いてきた。しかし、デリバリーヘルスの経営は心身ともに負担が大きいことから、これに復帰する気はなく、ハローワークを利用し、月額20万円程度の収入を得られる職を求めて就職活動をするようになり、平成23年2月にテレホン・アポインターの職に就いたが、約8万円の収入を得ることしかできず、将来にも期待できなかったことから1ヶ月で退職し、本件事故当時は無職であった。原告は、本件事故後の平成25年5月から介護付きのグループホームでパートのヘルパーとして稼働しており、将来は正社員として採用される可能性もある。以上の事実によれば、原告は、本件事故当時、無職であったものの就労の意欲はあり、本件事故後、現に就職していることから就労の能力もあったということはできる。そして、原告の後遺障害は、外貌醜状の部位や程度、更に原告の年齢からすると、労働能力に大きな影響を及ぼすものとは認められないが、将来原告の希望する営業職への転職の機会が制限される可能性が皆無とはいえないことなども考慮すると、原告は、本件事故による後遺障害により、症状固定時の46歳から67歳までの21年間にわたり労働能力を喪失し、そのうち55歳までの9年間は10%、その後12年間は5%の労働能力を喪失するものと認めるのが相当である」とした。また、逸失利益算定について、「月額20万円程度の収入を得られる職を求めていたところ、ようやく平成25年5月就職するに至ったことからすると、原告主張の平成21年賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・男性労働者学歴計の年収額529万8200円を得る蓋然性を認めることはできず、年収240万円(20万円×12か月)を基礎とするのが相当である。」としました(神戸地方裁判所25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル106頁)。

<弁護士のコメント>

外貌醜状による逸失利益は認定が困難なところ、本件では、将来の転職の機会の制限を理由に一定の労働能力喪失率を認定しました。

<争点>

外貌醜状による後遺障害逸失利益

投稿者: 小島法律事務所

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