2015.06.24更新

信号のない交差点での直進車と対向右折車との交通事故(いわゆる右直事故)で直進バイクの過失を60%とし、対向右折原付の過失を40%としました(横浜地方裁判所平成25年10月28日判決・自動車保険ジャーナル1913号135頁)。

<弁護士のコメント>

交差点内の右直事故の場合、直進車両と比べ、右折車両の過失が重くなるのが通常ですが、本件では、直進車が制限時速50キロの道路を100~115キロで走行していたとの推認をされ、直進車両の過失が重く認定されました。なお、原付とバイクの交通事故の過失割合については、「別冊判例タイムズ38号」に記載がないので、裁判例の集積が参考になります。

<争点>

・過失相殺(バイクVS原付)

・自賠責保険の充当

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.23更新

夜間(午後10時ころ)、交差点における自動車同士の出合頭衝突で、原告車運転中の被害者(昭和50年生まれ)が車外に放り出されて死亡した事案について、被告が本件交差点にすら気づかず、一時停止義務も怠ったことなどを理由に過失相殺を否定しました(名古屋地方裁判所平成25年10月25日判決・自動車保険ジャーナル1913号128頁)。

<弁護士のコメント>

被害者の死因が頭部外傷による脳挫傷であることからすると、被害者がシートベルトを装着していなかった点が損害の拡大につながったとも考えられますが、本件では、たとえシートベルトを装着していたとしても重大な結果が生じていた可能性が高いとされました。

なお、物損の示談や人身損害の交渉段階においても、過失相殺を主張していませんでしたが、この点について裁判所は特に判断していません。

<争点>

過失相殺(自動車VS自動車)

・過失相殺(シートベルト不装着)

・死亡逸失利益(老齢基礎年金部分・否認)

・入院慰謝料(搬送当日死亡・肯定)

・弁護士費用相当損害金(被害者請求をしていないことを考慮)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.22更新

信号交差点における原付と自動車の出合頭衝突で被害者が死亡した事案について、加害自動車に制限速度違反があったものの事故との因果関係を否定し、原付の赤信号無視から加害者を免責しました(東京高等裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1913号・108頁)

<弁護士のコメント>

本件のような事故態様では、供述の信用性が問題になります。裁判所は、一貫して供述していること、制限速度30キロの道路を50~60キロで進行したという自身に不利な事実も供述していることから、青信号を確認したとの加害者の供述の信用性を認めました。また、青信号進入の場合に過失が問われるかという点について、最高裁判所昭和46年6月21日判決、同昭和52年2月18日判決を引用し、基本的には過失責任を問われないことを確認しています。

信号交差点で赤進入二輪車対青進入四輪車の過失認定事例としては、他に、①大阪地裁平成3年8月30日判決(交民集24巻4号986頁。赤信号進入の被害原付車に9割の過失相殺)、②東京地裁平成6年6月9日判決(交民集27巻3号783頁。赤信号無視の原付に対して加害者が自賠法3条但書免責、③東京地裁平成11年11月26日判決(自保ジャーナル1356号。被害バイクの赤信号無視を認定し加害タクシーを免責。)があります。

<争点>

・過失割合(原付VS自転車)

・過失割合(信号のある交差点での出合頭衝突)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.16更新

丁字路を左折した自転車と左方から直進してきた自転車の出会い頭衝突の過失割合について。裁判所は50:50と判断しました(東京地裁平成25年10月28日判決・自動車保険ジャーナル157頁)。

<弁護士のコメント>

自転車同士の交通事故ですから、別冊判例タイムズ38号によって過失割合を判断することができません。本件では、直進自転車が右寄りを通行していたことや、右側から進入してくる車両はないものと考えて漫然と交差点に進入したことをもって、直進車の過失を通常よりもやや重く判断しています。なお、実況見分調書の内容について争った点については、自身が立ち会っていることや実況見分調書の記載を前提に作成された供述調書に署名・押印していることから実況見分調書の記載にしたがった判断がなされました。民事訴訟に先立って作成された刑事記録の信用性について争うことはたまにありますが、人身事故の場合、上記のプロセスにしたがって実況見分調書や供述調書が作成されていることから、争うことが困難であると想定できます。

<争点>

・過失割合(自転車VS自転車)

・人身傷害保険と過失相殺(裁判基準差額説)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.16更新

自転車同士の衝突事故において、横断歩道を途中から右折した自転車が左方から直進してきた時点車の右後方から衝突した事案において、左折自転車の過失を7割、直進自転車の過失を3割と判断しました。また、後遺障害が残存したとの原告の主張を認めませんでした(東京地方裁判所平成25年10月29日判決・自動車保険ジャーナル152頁)。

<弁護士のコメント>

直進していただけの自転車に3割の過失を認定していますが、これは、本件事故現場が横断歩道を途中から左折して横断する自転車が多い現場だったことから、そのような自転車の存在にも注意を払うべきとされたことが理由です。本件のように、自転車同士の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38号には記載がないので、裁判例の集積によって判断することになります。

また、自転車同士の事故ですから後遺障害について自賠責の認定を受けることができないことから、被害者は裁判所に12級相当の後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料を認定するよう求めていますが、結論としては否認されました。その理由は①自覚症状はあるものの、症状の程度、内容、経過等があきらかでないこと、②後遺障害を裏付ける他覚的所見が各診断書にないことです。

<争点>

・過失割合(自転車VS自転車)

・後遺障害の有無

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.10更新

信号交差点において双方交差道路から進入した事案において、どちらが信号無視をしたかが争われた事案において、裁判所は、事故当時の信号表示がどうであったかは不明として、双方の請求を棄却しました。もっとも、自賠法3条に基づく請求は過失相殺をすることなく認めました(大阪地方裁判所平成25年7月16日判決・自動車保険ジャーナル1912号85頁)。

<弁護士のコメント>

本件は、信号交差点において、交差する道路から進入してきたにもかかわらず、双方が相手の信号無視を主張した事案です。このような事案の場合、双方運転者の供述の信用性の判断が中心になりますが、本件では、双方の供述がともに信用性が乏しいと判断されています。民事訴訟では、原告に立証責任があることから、本件のような事案では、双方の請求が棄却されることは十分にあり得ることです。ただ、実際にはどちらかが嘘をついている可能性が高いわけですから、双方棄却という結論は、双方の依頼者にとっては納得のいくものではないでしょう。

もっとも、裁判所は、被害者の損害については自賠法3条によって認めています。これもまた、理論上はその通りではあるのですか、一般市民の感覚からするとなかなか理解しがたいところだと思います。なお、自賠法3条による請求なので「人身損害」のみが対象となり、「物損」については棄却ということになります。

<争点>

・過失相殺

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.09更新

歩行中に普通貨物自動車に衝突され、初診時に頸椎捻挫等の診断を受け、排便・排尿障害12級13号(自賠責14級9号)を主張する42歳男子について、排便・排尿障害を12級相当と認定しました。また、労働能力喪失率については、少なくとも14%以上の影響があるとして、原告が主張する14%を認めています。なお、本件では、交差点において、被害者が赤点滅信号で横断し、加害車両が黄点滅信号で交差点に進入した事案ですが、被害者に過失相殺をしませんでした(大阪地方裁判所平成25年8月27日判決・自動車保険ジャーナル1912号・56頁)。

<弁護士のコメント>

本件で問題になった排便・排尿障害について、裁判所は、便や尿の外部への流出という形で症状が客観的に判明することから、詐病の危険性は低く、画像所見(馬尾神経の圧迫)があることから、因果関係を肯定しています。交通事故によって排便・排尿障害が発生したというのは特異な事案ではありますが、本件が歩行者と貨物自動車との衝突事故であり、決して軽微なものとはいえないことからすると、事故との因果関係を否定することも困難だと考えられます。なお、本件以外に排尿障害と交通事故との相当因果関係が争われた事例としては、腰椎椎間板障害が排尿障害の原因とされた名古屋地方裁判所平成22年10月22日判決(自動車保険ジャーナル1838号)があります。 また、労働能力喪失率については、常時おむつを必要とすることになった被害者の状況及び被害者が警備員であることから継続勤務が困難になることなどを評価しています。

<争点>

・後遺障害(排便・排尿障害)

・労働能力喪失率

・過失相殺(歩行者VS自動車)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.05更新

自動車と自転車が正面衝突し、自転車の運転者が死亡した事案の過失割合において、①自転車が逆行していたこと、②自転車が蛇行していたこと、③深夜1時20分ころの交通事故であるにもかかわらず、自転車が無灯火であったこと、④血中アルコール濃度が高かったことから、自転車の運転者の過失を6割としました(横浜地方裁判所平成25年10月28日判決・自動車保険ジャーナル1911号178頁)。

<弁護士のコメント>

自転車が右側通行していた場合、「別冊判例タイムズ38号」【303】図によると、基本過失割合は自転車20:自動車80となります。本件では自転車側の不利な修正要素として「ふらふら走行」「著しい過失」がありますから、同書に従った場合も自転車40:自動車60となります。

<争点>

・過失割合(自動車VS自転車)・葬儀費用

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.03更新

自転車を押しながら歩道を歩行中の男性が対向してきた自転車に衝突された事案について、被告自転車が前方の見通しが悪い急な下り坂において目線を下に向けながら速度の調節もせずに時速20キロメートル程度で進行していたことを重視して、歩行者の損害について過失相殺を認めませんでした。また、後遺障害逸失利益(首、顔等のしびれ)については、痛みを裏付ける他覚的所見がないことを理由に12級13号の主張を認めず、14級9号と認定しました。また、労働能力喪失期間を5年に限定しています(大阪地方裁判所平成25年8月30日判決・自動車保険ジャーナル1911号140頁)。

<弁護士のコメント>

本件は自転車と歩行者の正面衝突の事案における過失割合が問題になりました。歩道における対向自転車と歩行者の衝突事故においては、過半数の事案において歩行者の過失が認定されていないとされています(「自転車事故過失相殺の分析」(ぎょうせい))。しかも、本件事故現場の歩道は自転車通行可とはなっていませんでした。ですから、歩行者の過失が否定されたのは相当と考えられます。また、後遺障害については、本件では自転車が相手の交通事故なので自賠責の認定がなく、症状について裁判所の判断で後遺障害の有無が認定されることになりました。14級の場合に5年程度に労働能力喪失期間が制限されるのは、症状が「しびれ」であることからするとやむを得ないと考えられます。

<争点>

・過失相殺(自転車VS歩行者)

・後遺障害

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.02更新

横断歩道上の自転車同士の追い抜き事故について、①先行自転車の運転者Xが80歳であったこと、②後行自転車が強引に抜き去ったことなどから過失割合を50:50としました。また、Xの休業損害については、賃金センサス女子70歳以上の7割未満の日額5700円を基礎にして入院期間について休業損害を認めています(大阪地方裁判所平成25年6月18日判決・自動車保険ジャーナル140頁)。

<弁護士のコメント>

・過失割合:別冊判例タイムズ38号には自転車同士のものが掲載されていません。もっとも、本件は先行車がかなり特殊な走行をしていることから、汎用性がある裁判例とは考えられず、過失割合については事例判断としての意味しか持たないと考えられます。

・高齢女子の家事従事者の休業損害:高齢女子の場合、休業損害の算定にあたっては、本件のように賃金センサスを一部修正するのが一般的です。もっとも、どのような家事労働を行っているかは、年齢によって一義的に決することができるものではありませんから、結局、実態に即した判断となります。

・人身傷害先行払いの場合の過失相殺:人身傷害保険とは、自分が契約している保険会社に対して人身損害に関する補償を求めるものです。人身傷害保険が賠償に先行して支払われた場合(人傷先行払い)のときに過失相殺をどのように判断するかについては、かつては諸説ありましたが、現在は裁判基準差額説が通説です。本件でもいわゆる裁判基準差額説を採用したものと考えられます。

<争点>

・過失割合

・休業損害(高齢女子)

・裁判基準差額説

投稿者: 小島法律事務所

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