2015.06.15更新

3000台のみ生産されたバイク(95周年限定記念モデルの98年式ハーレーダビッドソン)の損害について、購入額である100万円を超えた230万円を損害額として認定しました。また、右足関節機能障害(自賠責併合9級)について、就労可能年数にわたって30%の労働能力喪失率を認めました。

<弁護士のコメント>

裁判所の判断の根底には、100万円以上の価値のあるもの(230万円の価値のあるバイク)を100万円で購入しただけであり、230万円の損害を認めることが原状回復になるということになります。仮にもう1台同じバイクを購入しようとしたら、100万円では購入できないでしょうから、裁判所の判断は相当だと考えられます。

また、後遺障害逸失利益については、減収の割合が多くなっていない(20%)ことは原告の努力によるものであるとして、労働能力喪失率としては30%としています。自賠責9級の場合、35%が原則となりますから、若干低めになっています。もっとも「機能障害」=「就労可能年数にわたる労働能力喪失期間」として、67歳までの労働能力喪失を認めています。本件では原告の減収が少ないこと及び後遺障害自体の影響について争いがあったことから労働能力喪失率が争点となっています。

この点、足関節障害等から併合9級の後遺障害残存事例の逸失利益については、①大阪地裁平成25年2月8日判決(自保ジャーナル1900号)が67歳まで27%の喪失率を認め、②横浜地裁平成23年9月29日判決(自保ジャーナル1860号)が67歳まで35%の喪失率を認め、③徳島地裁平成21年3月5日判決(自保ジャーナル1824号)が平均余命の2分の1の期間について35%の喪失率を認めています。したがって、喪失期間については通常通りとなり、喪失率については争いがあることがうかがわれます。

<争点>

・物損(車両時価額)

・物損(車両積載物)

・治療費(飛蚊症の検査費用及び治療費)

・後遺障害逸失利益(労働能力喪失率)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.09更新

歩行中に普通貨物自動車に衝突され、初診時に頸椎捻挫等の診断を受け、排便・排尿障害12級13号(自賠責14級9号)を主張する42歳男子について、排便・排尿障害を12級相当と認定しました。また、労働能力喪失率については、少なくとも14%以上の影響があるとして、原告が主張する14%を認めています。なお、本件では、交差点において、被害者が赤点滅信号で横断し、加害車両が黄点滅信号で交差点に進入した事案ですが、被害者に過失相殺をしませんでした(大阪地方裁判所平成25年8月27日判決・自動車保険ジャーナル1912号・56頁)。

<弁護士のコメント>

本件で問題になった排便・排尿障害について、裁判所は、便や尿の外部への流出という形で症状が客観的に判明することから、詐病の危険性は低く、画像所見(馬尾神経の圧迫)があることから、因果関係を肯定しています。交通事故によって排便・排尿障害が発生したというのは特異な事案ではありますが、本件が歩行者と貨物自動車との衝突事故であり、決して軽微なものとはいえないことからすると、事故との因果関係を否定することも困難だと考えられます。なお、本件以外に排尿障害と交通事故との相当因果関係が争われた事例としては、腰椎椎間板障害が排尿障害の原因とされた名古屋地方裁判所平成22年10月22日判決(自動車保険ジャーナル1838号)があります。 また、労働能力喪失率については、常時おむつを必要とすることになった被害者の状況及び被害者が警備員であることから継続勤務が困難になることなどを評価しています。

<争点>

・後遺障害(排便・排尿障害)

・労働能力喪失率

・過失相殺(歩行者VS自動車)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.23更新

左下肢機能障害及び左下肢の短縮等から自賠責併合6級後遺障害認定をうけた症状固定時36歳男子会社員の後遺障害逸失利益について「原告の左足関節の機能障害及び左股関節の機能障害は、長時間の立位・歩行等を含む下肢動作全般に支障を生じるものである。また、原告の後遺障害診断書に原告の左下肢が右下肢に比べて3.5センチメートル短い旨記載されていることに照らすと、画像により客観的に確認できる左下肢の短縮が3センチメートルに満たないものであるとはいえ、その短縮の程度が軽いものであるということはできず、原告の左下肢の短縮障害も原告の歩行等の下肢動作に相当程度の影響をもたらすものと考えられる。原告が本件事故当時従事していた業務は、鉄鋼の加工現場における複数の機械の操作等を中心とするほか、原材料や製品を運搬する場合もあるなど、立位や歩行を伴うことが多い業務であったことにも鑑みると、同業務の遂行において、原告の左下肢の機能障害及び短縮障害による影響が大きいことは明らかであり、現に原告は平成22年5月の就労復帰後は上記業務から生産管理業務に担当業務が変更されたことが認められる。また、原告の供述によれば、生産管理業務を担当していても鉄鋼の加工現場の業務を応援する場合があることが認められるほか、原告の後遺障害が歩行等の基本的な下肢動作に支障を生じるものである以上、歩行等を伴う通常の業務に従事する限り、業務の円滑な遂行に影響を生じることは免れない」としました。もっとも、労働能力喪失率については「原告の後遺障害は、後遺障害等級7級に相当する左下肢(左足関節。左股関節)の機能障害、後遺障害等級12級に該当する左下肢の醜状障害、後遺障害等級13級に該当する後遺障害左下肢の短縮障害により、後遺障害併合6級に該当するものであるが、原告の左下肢の醜状障害が原告の従事する業務の円滑な遂行に有意的な影響を与えるものとは言い難く、労働省労働基準局長通達別表に定める労働能力喪失率による場合、後遺障害等級7級の労働能力喪失率56%と後遺障害等級13級の労働能力喪失率9%の合計は65%であり、後遺障害等級6級の労働能力喪失率67%を下回る」として、65%と認定しました(名古屋地方裁判所平成25年8月5日判決・自動車保険ジャーナル1910号131頁)。

<弁護士のコメント>

足の短縮という後遺障害について、逸失利益が存在するかが問題になりました。なお、左下肢の醜状障害については、後遺障害逸失利益は否定されています。

<争点>

・後遺障害逸失利益の有無(下肢の短縮障害)

・後遺障害逸失利益の有無(下肢の醜状障害)

・労働能力喪失率

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.11更新

12級7号右股関節機能障害と13級8号右下肢短縮の併合11級を認定しつつ(行政通達によれば労働能力喪失率20%)、後遺障害逸失利益の額を認定するにあたって、後遺障害等級及び労災保険に関する行政通達が定める労働能力喪失率は、「考慮すべき一資料」とはしたものの、拘束力を認めず、、被害者と加害者の間における示談の交渉経過も同様としました。そして、原告の業務が肉体労働を中心とするものはなく、右股関節の可動域制限や右下肢短縮が、原告の業務の円滑な遂行を顕著に阻害するものとは言い難いとして、労働能力喪失率を16%と認定しました(名古屋地裁平成25年7月18日判決・自動車保険ジャーナル63頁)。

<弁護士のコメント>

後遺障害の内容及び被害者の業務の実態から後遺障害逸失利益の労働能力喪失率の有無・程度を判断した裁判例です。足が短くなったことがどのような労働能力喪失をもたらすかを判断しています。訴訟においては、被害者から自賠責の労働能力喪失率が主張されることが多いですが、それは1つの目安に過ぎないことを確認しています。

<争点>

・後遺障害逸失利益

・自賠責の労働能力喪失率

・保険会社と被害者の示談交渉経過

投稿者: 小島法律事務所

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