2015.05.21更新

自転車にまたがって停車中の女子の左肘に対向原付の荷台集荷箱が接触した事案(自賠責14級9号)について「本件事故の発生状況によれば、被告車は、自転車にまたがって停止していた原告の側方を通過する際に、荷台に積んであった集荷用の箱を原告の左肘に接触させ、そのまま走り去ったというのであるから、左肘に腫脹や皮下出血が認められることも併せ考慮すると、接触の際、原告の左肘に対して後方に強い外力が加わり、したがって、左肘とつながっている左肩、左上腕及び頚部に対しても、後方に向かって強い外力が認められる」として頚部痛、左肩痛と本件事故との相当因果関係を肯定し、整骨院等の施術について「①原告は、診療時間が限られているD医院には、ほとんど週末しか受診することができなかったことから、早期治癒のため、勤務終了後に通院することができる整骨院等に通院することとし、D医院の担当医師もこれを承知していたこと、②原告が整骨院等で受けていた施術の内容は、D医院で受けていた消炎鎮痛等処置と概ね同じであり、症状改善に効果的であったことが認められる。以上によれば、E整骨院及びF接骨院における施術は、本件事故後の原告の症状を改善するために必要かつ相当であったということができ、本件事故と相当因果関係がある」としました。

なお、後遺障害逸失利益(14級9号)の算定については、症状固定から5年間にわたり、労働能力を5%喪失したと認定しています(自動車保険ジャーナル1910号64頁)。

<弁護士のコメント>

被害者の左肘に原付の荷台集荷箱が接触したという一見軽微な事故において、自賠責と同様、14級9号の後遺障害を認定しました。

<争点>

・後遺障害の有無

・整骨院、接骨院の施術の相当性

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.20更新

左鎖骨骨折後の自賠責12級5号を残す27歳女子保育所勤務の後遺障害逸失利益の算定について、①基礎収入を本件前年である平成21年の原告の年収は約200万円であるものの、本件事故当時の実収入からすると、平成22年の年収は、約250万円になる蓋然性があったとし、さらに、原告が本件事故当時27歳であったことにも鑑みて、原告の基礎収入は、250万円としました。なお、原告は、実収入額と年齢別平均賃金(賃金センサス)との差を克服するだけの事情が十分備わっていると主張しましたが、裁判所は、平成21年の収入実績にも鑑み、これを認めるに足りないとしました。また、②労働能力喪失率及び喪失期間については、原告の後遺障害の内容及び程度、特に自賠責保険における等級認定を受けた後遺障害が左鎖骨の変形障害に留まり、派生的に生じるものである左肩の痛みについては、経年により緩和する可能性が高いと考えられること、左肩の関節可動域制限は軽度のもので、症状経過にも鑑み、労働能力に影響を与えるものとは考えがたいこと、そのほか、原告の年齢、就労状況などを総合考慮して、原告の労働能力喪失率は10%、労働能力喪失期間は10年間としました(神戸地方裁判所平成25年9月5日判決・自動車保険ジャーナル1910号・50頁)。

<弁護士のコメント>

被害者の実収入が低い場合、賃金センサスによって基礎収入を認定してほしいという主張がよく出ます。本件でも原告はそのような主張をしていますが、立証が困難であり、本件でも認められませんでした。次に、労働能力喪失率及び労働能力喪失期間に関しては、裁判所は、原告の就労状況や後遺障害の内容によって、一定の制限をしています。このような制限はむち打ちの場合は通常よくみられるところですが、本件のように、明らかな外傷性の後遺障害においても制限が認められた点が重要となります。結局のところ、後遺障害等級にとらわれず、その実態や被害者の置かれている状況に即して、具体的に決する必要があるということでしょう。

<争点>

・後遺障害逸失利益(基礎収入)

・労働能力喪失率

・労働能力喪失期間

・慰謝料(犬の死亡)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.19更新

症状固定時46歳男子の「右長拇指伸筋断裂」後の「右拇指の橈側外転・掌側外転の可動域制限」について自賠責は対象とせず、労災は「10級6号」とされたところ、裁判所は、平成23年8月24日、C労働局地方労災医員が拇指の橈側外転は右30度、左60度、掌側外転は右45度、左90度と測定し、患側の可動域(右75度)が腱側の可動域(左150度)の2分の1以下に制限されていることから認定されたされたものであることが認められる。証拠によれば、傷病名に「右長拇指伸筋断裂」があるが、自覚症状には拇指に関する障害の記載がなく、可動域の測定自体がされていないことが認められ、このため、自賠においては、右拇指に関する後遺障害が判断の対象とされなかったものと推認される。被告らは、右拇指の可動域制限がなかったから記載されなかったと主張するが、証拠において、右拇指の可動域を測定した上で、可動域制限がないことを確認した形跡がない以上、実際の測定に基づく証拠における認定の方が信用性がある。したがって、障害⑤は、自賠においても、第10級7号に該当するものと認められるとしました(横浜地方裁判所平成25年9月30日判決・自保ジャーナル1910号42頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、自賠責で、対象とすらされなかった後遺障害について裁判所が証拠に基づいて認定した点が特徴です。なお、「長拇指」とは、前腕にあり親指(拇指)につながっている細長い筋のことをいいます。原告が自賠責の等級認定に対して異議申立てをしたのかどうかは不明ですが、後遺障害の有無について問題になる場合、通常は異議申立てによって対応することになると考えられます。

<争点>

後遺障害の有無

投稿者: 小島法律事務所

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