2015.06.17更新

乗用車を運転停止中の追突事故の被害者が脳脊髄液減少症の診断を受け、自賠責9級10号に該当すると主張した事案について、事故の約1年4か月後の受診までに起立性頭痛等の症状を訴えていたと認められず、また、ブラッドパッチ治療の効果もなく、画像所見もないことから、脳脊髄液減少症の発症を否認して14級9号を認定しました(大阪地方裁判所平成25年7月23日判決・自動車保険ジャーナル14頁)。

<弁護士のコメント>

本件は自賠責で後遺障害が非該当となったにもかかわらずず裁判では原告は9級10号相当の主張された事案です。脳脊髄液減少症の診断基準については定説はないものの①起立性頭痛、②髄液圧低下、③MRIでの硬膜増強効果があげられるとしています。そして、裁判所は、診断基準として、①国際頭痛分類第2版(IDHD-Ⅱ)、②脳脊髄液減少症外ガイドライン2007、③外傷に伴う低髄液圧症候群の診断基準、④脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究 平成22年度総括研究報告書を挙げ、本件では診断基準を満たす状況が存在することの立証がないとしました。本件では、通常の脳脊髄液減少症の要件を充足しないことのみならず、1年4か月もの期間経過後に症状を訴えている点が問題になっています。

また、治療費の負担について、確定診断がなされる前の治療費については、否認しています。脳脊髄液減少症を主張して訴訟に至る場合、確定診断までの間に相当の期間を有し、治療費の負担も大きくなりますから、それについて加害者の負担を求めることができないという状況は、被害者の現実問題としては苦しいと言わざるをえません。もっとも、法的に加害者が負担することが相当であるかという判断においては、この裁判例のとおり、負担させるべきではないと考えています。

<争点>

・脳脊髄液減少症

・確定診断前の治療費

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.15更新

会社と被害者が原告になった事件で、原告会社の請求について、原告会社が損害賠償を請求することができるような原告との経済的一体性は認められないとして請求を棄却した一方で、原告が休業せざるを得なくなったことによって店舗に一定の影響が出たことから、当該店舗の営業を担当していた原告の請求について慰謝料を増額しました(横浜地方裁判所平成25年9月30日判決・自動車保険ジャーナル1912号131頁)。

<弁護士のコメント>

企業損害に関する最高裁判所昭和43年11月15日判決(民集22巻12号2614頁)については「事例判断」としましたが「相応の経済的一体性」が必要と判断しています。もっとも、本件では、原告は、原告会社の取締役ではあるものの、設立者でも代表取締役でもなく、株式も所有していないことから、経済的一体性は認められないとしました。

治療費については、4か月半の空白があったことや整骨院の施術については医師の指示がなかったことなどから、相当因果関係を否認しました。

また、通院慰謝料については、「相当因果関係のある一切の事情を考慮して定めるべき」とし、慰謝料額を増額しています。

<争点>

・治療費(相当因果関係)

・企業損害

・入通院慰謝料

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.15更新

3000台のみ生産されたバイク(95周年限定記念モデルの98年式ハーレーダビッドソン)の損害について、購入額である100万円を超えた230万円を損害額として認定しました。また、右足関節機能障害(自賠責併合9級)について、就労可能年数にわたって30%の労働能力喪失率を認めました。

<弁護士のコメント>

裁判所の判断の根底には、100万円以上の価値のあるもの(230万円の価値のあるバイク)を100万円で購入しただけであり、230万円の損害を認めることが原状回復になるということになります。仮にもう1台同じバイクを購入しようとしたら、100万円では購入できないでしょうから、裁判所の判断は相当だと考えられます。

また、後遺障害逸失利益については、減収の割合が多くなっていない(20%)ことは原告の努力によるものであるとして、労働能力喪失率としては30%としています。自賠責9級の場合、35%が原則となりますから、若干低めになっています。もっとも「機能障害」=「就労可能年数にわたる労働能力喪失期間」として、67歳までの労働能力喪失を認めています。本件では原告の減収が少ないこと及び後遺障害自体の影響について争いがあったことから労働能力喪失率が争点となっています。

この点、足関節障害等から併合9級の後遺障害残存事例の逸失利益については、①大阪地裁平成25年2月8日判決(自保ジャーナル1900号)が67歳まで27%の喪失率を認め、②横浜地裁平成23年9月29日判決(自保ジャーナル1860号)が67歳まで35%の喪失率を認め、③徳島地裁平成21年3月5日判決(自保ジャーナル1824号)が平均余命の2分の1の期間について35%の喪失率を認めています。したがって、喪失期間については通常通りとなり、喪失率については争いがあることがうかがわれます。

<争点>

・物損(車両時価額)

・物損(車両積載物)

・治療費(飛蚊症の検査費用及び治療費)

・後遺障害逸失利益(労働能力喪失率)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.04更新

神奈川県在住の原告が通院していた栃木県の整骨院の通院交通費について、同時に他の接骨院でも施術を受けていたことや、遠方の通院先を選択したことに特別な事情が認められないとして、相当因果関係を否定されました(横浜地方裁判所平成25年10月17日判決・自動車保険ジャーナル1911号167頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、治療費について被告が争わず、通院交通費について争っています。本件のように、遠方への通院交通費が認められる場合としては、当該傷病の権威の医師の治療を受けるなどの特別な事情が必要になると考えられます。また、通院交通費についてはタクシー代の是非についても争われ、タクシーを利用する必要性を認めるに足らないとされました。

<争点>

・通院交通費

・治療費(施術費)

・過失相殺(損害拡大防止義務)

・車両損害(全損)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.01更新

商店街道路におい原告歩行者の左肩と対向被告普通貨物車のサイドミラーが衝突した事故について、事故と傷害結果との相当因果関係を認めるとともに、整骨院の施術費については一部減額して認めました(大阪地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1911号129頁)。

<弁護士のコメント>

この裁判例では、①被害者が歩行者であること、②加害車両が貨物自動車であること、③衝撃は軽微とはいえないこと、④医師の診断等を根拠に、相当因果関係が認められています。一般的に、車両のサイドミラーが接触したことで後遺障害が残存するほどの傷害が発生するかというと疑問ですが、本件は上記事情から相当因果関係が肯定されたものです。

また、整骨院の施術費については、医師の指示がない場合であっても、その内容からして一部の相当性を認めています。

さらに、休業損害については、症状固定時に労働能力喪失率が14%であることを根拠に「相当程度の労働能力の回復」を認めていますが、これは珍しい理由づけだと思います。

<争点>

・相当因果関係

・整骨院の施術費

・休業損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.13更新

10歳児が時速30キロメートル制限のスクールゾーンの車道に進出した事案について、歩行者は、進路右方に注意を払っておらず、むしろ被告車両と衝突するまでほとんど時間はなかったことから、被害少年の不注意の程度は「甚だしい」としながら、訴訟に先立つ自賠責保険の審査においては、被害少年に対して、7割以上の過失を対象とする重過失減額が適用されていないとして、6割の過失相殺をしました。

また、将来治療費について、本件事故により脱落した2本の永久歯については、原告が成人し上顎の成長が止まって安定した頃に、インプラント治療を行うのが相当であるとして、将来治療費を認定しました(横浜地方裁判所平成25年8月8日判決・自動車保険ジャーナル95頁)。

<弁護士のコメント>

過失割合の判断の際に訴訟に先行して審査された自賠責の重過失減額の有無を参考にしています。本件のように、インプラント治療の将来的な必要性がある場合、将来治療費の請求の可否が問題になりますが、本件では、被害者が10歳であることを考慮し、将来的にインプラント治療が必要であるとして、将来治療費が認められています。

<争点>

・過失割合(重過失減額)

・将来治療費(インプラント)

投稿者: 小島法律事務所

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