2015.06.11更新

乗用車を運転停止中、被告乗用車に追突されて統合失調症を発症したとする24歳女性会社員について、裁判所は、交通事故と統合失調症発症との相当因果関係を否定しました(名古屋地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1912号112頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、訴訟に先立つ自賠責の認定においても、事故と統合失調症発症との因果関係が否定されていました。また、被害者は、事故以前にも精神疾患(適応障害)をかかえていました。裁判所は、事故以前から統合失調症であったか、または事故後の発症としても事故が有意な影響を与えたものではないと判断しました。

事故と精神症状との因果関係が争われ、否認された事案としては、他に、①事故と自律神経失調症との因果関係を否認した大阪地方裁判所平成25年9月19日判決(自動車保険ジャーナル1370号)、②事故とPTSDとの因果関係を否認した大阪地方裁判所平成24年12月12日判決(自動車保険ジャーナル1888号)などがあります。

<争点>

・後遺障害(精神疾患)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.10更新

本件事故の約8か月前に事故にあい、入院を伴う通院中の被害者がダンプカーの牛とにバイクで停止していたところ、後退してきたダンプカーと衝突し、自賠責14級9号の認定を受けた事案について、裁判所は、本件事故によって傷害や外傷後ストレス障害等の非器質性精神障害を受傷したとは認められないとして、因果関係を認めませんでした(東京地方裁判所平成25年10月1日判決・自動車保険ジャーナル1912号96頁)。

<弁護士のコメント>

本件事故で、被害者は、衝突によって店頭することなく、バイクにまたがったまま立っていました。このような事故状況では、PTSDを発症したと考えるのは困難です。また、頸椎捻挫等については、自賠責による後遺障害認定がなされていたにもかかわらず、損害の発生が否認されています。本件事案においては、器質的損傷を裏付ける画像所見がなく、また前の事故の傷害も治癒していませんでした。なお、交通事故によるPTSDの発症を否認した事例としては、他にも名古屋高裁平成25年6月21日判決(自動車保険ジャーナル1902号)、大阪地裁平成24年11月27日判決(自動車保険ジャーナル1889号)、新潟地裁平成24年10月30日判決があります。

<争点>

・後遺障害(PTSD)

・後遺障害(自賠責認定を否定)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.01更新

商店街道路におい原告歩行者の左肩と対向被告普通貨物車のサイドミラーが衝突した事故について、事故と傷害結果との相当因果関係を認めるとともに、整骨院の施術費については一部減額して認めました(大阪地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1911号129頁)。

<弁護士のコメント>

この裁判例では、①被害者が歩行者であること、②加害車両が貨物自動車であること、③衝撃は軽微とはいえないこと、④医師の診断等を根拠に、相当因果関係が認められています。一般的に、車両のサイドミラーが接触したことで後遺障害が残存するほどの傷害が発生するかというと疑問ですが、本件は上記事情から相当因果関係が肯定されたものです。

また、整骨院の施術費については、医師の指示がない場合であっても、その内容からして一部の相当性を認めています。

さらに、休業損害については、症状固定時に労働能力喪失率が14%であることを根拠に「相当程度の労働能力の回復」を認めていますが、これは珍しい理由づけだと思います。

<争点>

・相当因果関係

・整骨院の施術費

・休業損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.27更新

54歳男子会社役員の原告が、左踵骨骨折から躁うつ病に罹患したとの事案について、証拠上、は原告に精神疾患の既往があった様子は見受けられないこと、身体疾患の経過中に抑うつ状態を来たすことはあり得ること、原告の本件事故による受傷の入院治療は相当長期に及んだこと、原告が本件事故で受傷することがなくとも躁うつ病を発症したであろうことを窺わせる事情は見受けられないこと、大学病院の医師も本件事故を契機として発症したと診断していることを理由に、原告の躁うつ病と事故との相当因果関係を肯定しました(大阪地方裁判所平成25年6月28日判決・自動車保険ジャーナル1911号91頁)。

<弁護士のコメント>

踵の骨を骨折したことが躁うつ病につながるかどうかは難しい判断になります。本件でも「一般に、左踵骨骨折等の外傷を負ったからといって、抑うつ状態や躁うつ状態になるのが通常ではない」としつつ、上記事情を考慮して、本件交通事故と傷害結果との相当因果関係を肯定しました。もっとも、素因減額を行うことでバランスをとっているものと考えられます。本件のように、交通事故によって精神疾患が発生したという主張はよくあるのですが、相当因果関係の存否の判断は非常に困難です。ただ、実際上、精神疾患の場合、治療の頻度が少ないことが一般ですから、加害者側保険会社が柔軟に対応することで解決している事案もあるのではないかと考えられます。仮に、精神疾患と交通事故の因果関係の有無について、毎回保険会社が厳密に判断することになれば、結局のところ、因果関係不明という判断にしかならざるを得ないのではないでしょうか。

<争点>

・事故と躁うつ病との因果関係

・素因減額

・会社役員の消極損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.13更新

乳がんがステージⅣと診断された女性(生存率17.1%)が氏名不詳者に接触された事故で路上に横臥していた際に、第2事故が発生し、死亡するに至った事案について、遺書等がなく、被害者に自殺のそぶりも見られないことから、乳がんステージⅣであったとしても、直ちに自殺であると認めることはできないとしました。また、被害者が事故当時横臥(横になっていること)していたことについては、第1事故によるものであると認定し、単に被害者が横臥していたことをもって、自殺の事情とすることはできないと判断しました。そして、自殺が否定される以上、故意による事故ではないとされ、因果関係が肯定されました。また、過失相殺については第1事故の事故態様が不明なことから「相対的過失割合」によることとし、被害者の過失を6割としました(名古屋地裁平成25年7月3日判決・自動車保険ジャーナル1909号79頁)。

<弁護士のコメント>

仮に、被害者による自殺であるとの認定がされた場合、加害者の過失と損害との間に相当因果関係がないことになります。本件では、路上横臥者が自殺であることを疑わせるような事情があったとしても、自殺であることを裏付ける客観的証拠がないことから自殺であることは否認されました。

<争点>

・因果関係(自殺)

・共同不法行為(相対的過失割合)

投稿者: 小島法律事務所

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