2015.06.26更新

乗用車を運転信号待ち停止中に被告乗用車に追突され、頸椎捻挫等から低髄液圧症候群を発症し、9年余り通院して12級後遺障害を残したと主張する男子会社員の原告について(自賠責14級9号)、低髄液圧症候群の発症を否認し、14級後遺障害としました(東京地方裁判所平成25年11月27日判決・自動車保険ジャーナル37頁)。

<弁護士のコメント>

原告が「低髄液圧症候群」との診断を受けたのは、本件事故から1年9か月もの期間を経過した後でした。したがって、外傷性のものかどうかの判断が極めて困難と考えれらます。また、低髄液圧症候群の要件も充足していませんでした。さらに、原告が12級を主張していますから他覚的所見の有無が争われましたが、裁判所は他覚的所見が一貫していないとして否認しました。

後遺障害逸失利益については、原告の給与が増額していることが問題になりましたが、原告には後遺障害逸失利益を免れるべく特別な努力をしたものと認定され、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間5年間で後遺障害逸失利益が認定されています。

<争点>

・後遺障害(低髄液圧症候群)

・後遺障害逸失利益(減収がなくむしろ増加)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.22更新

ゴミ収集業務に従事する42歳男子公務員(事故後の減収なし)の左橈骨骨折等から自賠責併合14級後遺障害を残す事案の後遺障害逸失利益について、原告に職務上具体的な支障が生じていることや事故後に配転をしてもらったこと、原告自身の工夫によって職務に営業を与えないようにしていること等から、減収がなかったにもかかわらず、10年間5%の労働能力喪失を認めました(神戸地方裁判所平成25年9月12日判決・自動車保険ジャーナル1913号97頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、減収が生じない場合であっても、後遺障害逸失利益が認められています。本件のように、減収がないにもかかわらず後遺障害逸失利益を主張する場合は、その労働に対する影響や本人の努力によって減収がなかったことを主張・立証することになりますが、本件の特徴は、被害者が「公務員」であり、本人がたとえ努力しなくても減収がそもそも観念できないような事案であることです。なお、労働能力喪失率及び労働能力喪失期間については、神経症状は経年により緩和する可能性が高いと考えられることを理由に。労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間10年間としました。

<争点>

・後遺障害逸失利益(減収なし)

・交通事故証明書及び印鑑証明書取付費用(因果関係肯定)

・車両時価額(インターネット<レッドブック)。

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.19更新

胸椎圧迫骨折等から「脊柱に著しい変形」の後遺障害を残す症状固定時80歳女子家事従事者について、退院後の自宅での日常生活に一定期間制約があったことから退院から1年間1日あたり3000円の自宅介護費を認定しました。また、休業損害及び後遺障害逸失利益の基礎収入については、年齢を考慮して賃金センサスの7割としています(さいたま地方裁判所平成25年10月31日判決・自動車保険ジャーナル1913号・72頁)。

<弁護士のコメント>

退院後の近親者による自宅介護費を認定しためずらしい事案です。退院後に家族が退社してまで介護にあたっていた事情がありますが、一方で、一定期間経過後に自立して屋外歩行ができるようになっていることから、上記認定となりました。80代女子の後遺障害逸失利益については、①大阪地裁平成23年1月14日判決(自保ジャーナル1859号)は、14級9号を認定しつつ逸失利益を否認し、②神戸地裁平成19年9月10日判決(自保ジャーナル1737号)は、1級1号を認定しつつ一人暮らしであることから逸失利益を否認しました。一方、③神戸地裁平成13年2月21日判決(自保ジャーナル1409号)は、82歳女子について賃金センサス女子学歴計65歳以上の50%を基礎収入としています。

<争点>

・退院後の自宅介護費

・成年後見手続費用(否認)

・休業損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.16更新

自転車同士の衝突事故において、横断歩道を途中から右折した自転車が左方から直進してきた時点車の右後方から衝突した事案において、左折自転車の過失を7割、直進自転車の過失を3割と判断しました。また、後遺障害が残存したとの原告の主張を認めませんでした(東京地方裁判所平成25年10月29日判決・自動車保険ジャーナル152頁)。

<弁護士のコメント>

直進していただけの自転車に3割の過失を認定していますが、これは、本件事故現場が横断歩道を途中から左折して横断する自転車が多い現場だったことから、そのような自転車の存在にも注意を払うべきとされたことが理由です。本件のように、自転車同士の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38号には記載がないので、裁判例の集積によって判断することになります。

また、自転車同士の事故ですから後遺障害について自賠責の認定を受けることができないことから、被害者は裁判所に12級相当の後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料を認定するよう求めていますが、結論としては否認されました。その理由は①自覚症状はあるものの、症状の程度、内容、経過等があきらかでないこと、②後遺障害を裏付ける他覚的所見が各診断書にないことです。

<争点>

・過失割合(自転車VS自転車)

・後遺障害の有無

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.11更新

乗用車を運転停止中、被告乗用車に追突されて統合失調症を発症したとする24歳女性会社員について、裁判所は、交通事故と統合失調症発症との相当因果関係を否定しました(名古屋地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1912号112頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、訴訟に先立つ自賠責の認定においても、事故と統合失調症発症との因果関係が否定されていました。また、被害者は、事故以前にも精神疾患(適応障害)をかかえていました。裁判所は、事故以前から統合失調症であったか、または事故後の発症としても事故が有意な影響を与えたものではないと判断しました。

事故と精神症状との因果関係が争われ、否認された事案としては、他に、①事故と自律神経失調症との因果関係を否認した大阪地方裁判所平成25年9月19日判決(自動車保険ジャーナル1370号)、②事故とPTSDとの因果関係を否認した大阪地方裁判所平成24年12月12日判決(自動車保険ジャーナル1888号)などがあります。

<争点>

・後遺障害(精神疾患)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.03更新

自転車を押しながら歩道を歩行中の男性が対向してきた自転車に衝突された事案について、被告自転車が前方の見通しが悪い急な下り坂において目線を下に向けながら速度の調節もせずに時速20キロメートル程度で進行していたことを重視して、歩行者の損害について過失相殺を認めませんでした。また、後遺障害逸失利益(首、顔等のしびれ)については、痛みを裏付ける他覚的所見がないことを理由に12級13号の主張を認めず、14級9号と認定しました。また、労働能力喪失期間を5年に限定しています(大阪地方裁判所平成25年8月30日判決・自動車保険ジャーナル1911号140頁)。

<弁護士のコメント>

本件は自転車と歩行者の正面衝突の事案における過失割合が問題になりました。歩道における対向自転車と歩行者の衝突事故においては、過半数の事案において歩行者の過失が認定されていないとされています(「自転車事故過失相殺の分析」(ぎょうせい))。しかも、本件事故現場の歩道は自転車通行可とはなっていませんでした。ですから、歩行者の過失が否定されたのは相当と考えられます。また、後遺障害については、本件では自転車が相手の交通事故なので自賠責の認定がなく、症状について裁判所の判断で後遺障害の有無が認定されることになりました。14級の場合に5年程度に労働能力喪失期間が制限されるのは、症状が「しびれ」であることからするとやむを得ないと考えられます。

<争点>

・過失相殺(自転車VS歩行者)

・後遺障害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.28更新

追突され自賠責14級後遺障害を残す男子公務員の原告の後遺障害逸失利益について、「現実には、本件事故も給料面で格別不利益な取扱いを受けていない」として後遺障害逸失利益を認めませんでした。もっとも、後遺障害が残存しつつ通常業務をこなしている点については後遺障害逸失利益で斟酌されました(通常110万円のところ150万円)(京都地方債裁判所平成25年7月25日判決・自動車保険ジャーナル1911号112頁)。

<弁護士のコメント>

本件は被害者が公務員であり、休業損害も発生していない事案でした。被害者が公務員の場合、同様の問題が発生することと思われます。この点、最高裁判所昭和42年11月10日判決(民集21・9・2352)では「損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかった場合には、それを理由とする賠償請求ができないことをいうまでもない」としていますから、減収がない場合には原則として後遺障害逸失利益が認められないことになります。被害者としては、口頭弁論終結時において減収が一切ないにもかかわらず、逸失利益を請求するのであれば、将来的に減収の可能性があることを主張・立証することになります。本件のように、後遺障害逸失利益が何らかの理由によって否定される場合は、後遺障害慰謝料で斟酌されることがあります。つまり、後遺障害逸失利益としては認められないけれど、別のところ(後遺障害慰謝料)でフォローしますといった判断になります。

<争点>

・後遺障害逸失利益

・後遺障害慰謝料

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.26更新

公認会計士試験の短答式試験に合格していることから、公認会計士の平均年収を基礎収入と主張する21歳男子大学3年生Aの死亡逸失利益算定について、Aは本件事故当時、未だ大学3年生で、大学を卒業してすらいないこと、就職先が内定していたわけでもなく、将来において大卒者の平均賃金を上回る収入を得ることができるという高度の蓋然性があるとまではいうことができないことから、死亡逸失利益の基礎収入については、賃金センサス男性労働者大学・大学院卒の全年齢平均と認定して、生活費控除を5割としました(東京高等裁判所平成25年5月22日判決・自動車保険ジャーナル1911号75頁)。

<弁護士のコメント>

本件の1審判決では、裁判所は、被害者が大学生であるところ、公認会計士試験における合格率や難易度を問題にしています。 この点、別の裁判例では、歯科医のケースで似たような判断がなされています。大阪地方裁判所平成20年3月27日判決(自動車保険ジャーナル1761号)は、歯学部の大学生の死亡逸失利益について、合格率の高さ等を考慮してセンサス男子歯科医平均の90%を基礎収入にしています。この2つの裁判例を比較すると、要するに、公認会計士は合格率が低く、歯科医は合格率が高いということになるでしょう。歯科医の場合、大学入学時点で、専門の学科に入っているわけですから、合格率が高いこととあいまって、たとえ大学生であっても、歯科医として勤務する可能性が高いといえるでしょう。

<争点>

・死亡逸失利益の基礎収入

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.15更新

7級請求の高次脳機能障害について、頭部外傷、意識障害、画像所見をいずれも認めず、また、高次脳機能障害をうかがわせるような症状が発現したのは、事故発生から1年以上経過してからであること等を理由に、本件事故により脳の器質的損傷が生じ、これを原因とする高次脳機能障害が発症したとは認めがたいとしました。

後遺障害として局部の神経症状(頭痛、頚部痛)が残存し、これが少なくとも14級10号に該当することについては争いがなかったところ、後遺障害逸失利益については、症状固定から弁論終結時まで6年あまりが経過しているものの依然として局部の神経症状が認められることから、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間を10年としました。さらに、被害者が大学院を卒業(23歳)していること及び上記労働能力喪失期間に照らし、基礎収入を平成19年賃金センサス男子学歴計・全年齢平均賃金554万7200円としました(東京地方裁判所平成25年9月6日判決・自動車保険ジャーナル1910号1頁)。

<弁護士のコメント>

高次脳機能障害の有無が問題になり、本件の被害者の場合、症状の経過、画像所見がない、意識障害がないといった点が判断のポイントになっています。症状の発現が遅かったり、徐々に増悪していくようなケースでは、高次脳機能障害の有無について激しく争われることになります。また、神経心理学的検査については「認知障害を評価するにはある程度適したものといえるが、行動障害及び人格変化を評価するものではない」という評価をしています。神経心理学的検査の結果だけをもって、高次脳機能障害の発生を主張するのは困難ということになりそうです。また、事故直後の意識障害や画像所見がない場合、高次脳機能障害が脳外傷によって発生したものであるか否かが問題になります。つまり、交通事故に限らず高次脳機能障害の患者はいるところ、高次脳機能障害の発生が認められたからといって、交通事故による外傷性のものであるかどうかは、また別次元の問題になるということです。

<争点>

・高次脳機能障害

・軽症頭部外傷(MTBI)

・労働能力喪失期間(14級10号)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.14更新

交差点を赤信号で横断した歩行者Xと交差道路から黄信号で交差点に進入した車両Yの過失割合について、Xは歩行者用信号が赤色だったにもかかわらず、交差道路を進行してくる車がないものと軽信して道路を横断した過失があり、他方、Yには、対面信号の信号変化を注視せず、これが黄色を示したにもかかわらず、安全に停止できない速度で本件車両を進行させて本件交差点内に進入し、かつ、前方を注視せず進行して歩行者であるXの発見が遅れたために、本件車両を同人に衝突させた過失があるとしました。そして、本件事故はXYの過失があいまって発生したものとして、双方の過失割合を50:50としました。

また、被告は、原告が脾臓摘出等後遺障害等級13級11号)による労働能力喪失率については人体に影響がないと主張しましたが、裁判所は、脾臓の摘出により、感染予防希機能が低下する可能性があることなどを考慮すると、その労働能力喪失率は、腹部機器の機能に障害を残すもの(後遺障害等級13級11号)と同等の9%と認められるとしました(千葉地方裁判所平成25年8月27日判決・自動車保険ジャーナル1909号・103頁)。

<弁護士のコメント>

脾臓がなくても人間は生きていけることから、交通事故外傷によってダメージを受けた場合に、本件のように、脾臓が摘出されることがあります。裁判所は、脾臓が摘出されたことによる労働能力の喪失を否定する被告の主張を退け、一定の割合による後遺障害逸失利益を認定しました。自賠責によって後遺障害が認定されたとしても、本件のように、後遺障害の内容によっては労働能力喪失率が問題になります。

<争点>

・過失相殺

・後遺障害逸失利益(労働能力喪失率)

投稿者: 小島法律事務所

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