自転車を押しながら歩道を歩行中の男性が対向してきた自転車に衝突された事案について、被告自転車が前方の見通しが悪い急な下り坂において目線を下に向けながら速度の調節もせずに時速20キロメートル程度で進行していたことを重視して、歩行者の損害について過失相殺を認めませんでした。また、後遺障害逸失利益(首、顔等のしびれ)については、痛みを裏付ける他覚的所見がないことを理由に12級13号の主張を認めず、14級9号と認定しました。また、労働能力喪失期間を5年に限定しています(大阪地方裁判所平成25年8月30日判決・自動車保険ジャーナル1911号140頁)。
<弁護士のコメント>
本件は自転車と歩行者の正面衝突の事案における過失割合が問題になりました。歩道における対向自転車と歩行者の衝突事故においては、過半数の事案において歩行者の過失が認定されていないとされています(「自転車事故過失相殺の分析」(ぎょうせい))。しかも、本件事故現場の歩道は自転車通行可とはなっていませんでした。ですから、歩行者の過失が否定されたのは相当と考えられます。また、後遺障害については、本件では自転車が相手の交通事故なので自賠責の認定がなく、症状について裁判所の判断で後遺障害の有無が認定されることになりました。14級の場合に5年程度に労働能力喪失期間が制限されるのは、症状が「しびれ」であることからするとやむを得ないと考えられます。
<争点>
・過失相殺(自転車VS歩行者)
・後遺障害