2015.05.29更新

初度登録23年10月の原告車両について同年12月28日発生事故時(走行距離2204キロメートル)の全損時価額を新車販売価格とほぼ同額としました。また、買い替え諸費用としては、検査登録代行費用(半額)、車庫証明手続代行費用(半額)、納車費用(半額)、法定費用(登録手続費用及び車庫証明手続費用)を認めました。代車使用期間としては、全損通知を保険会社から受けたのが事故からほぼ1ヶ月後であることなどから50日を認めました。

<弁護士のコメント>

本件は、買い替え諸費用について、詳細な認定をしています。買い替え諸費用は、車両が全損(時価額を修理費用が上回る場合)に、時価額に加えて損害として認められます。つまり、車を買うときには、値札通りの金額では購入できず、実際にはいろいろな費用をディーラーに支払うことが避けられません。そこで、そのような現実に即して、買い替え諸費用についても被害者の損害として認められているのです。買い替え諸費用の一部が半額になっているのは「当該費用が手続を代行した業者に対する報酬である」ことが理由です。本件では全損にしては長めの代車使用期間が認定されていますが、修理費用と時価額が近かったことや全損通知が遅れたことから50日とされたものと考えられます。全損の場合は、買い替え期間相当の代車使用期間が認定されるのが原則で、通常は1か月程度になります。

<争点>

・全損時価額

・買い替え諸費用

・代車使用期間

・右直事故の過失割合

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.28更新

追突され自賠責14級後遺障害を残す男子公務員の原告の後遺障害逸失利益について、「現実には、本件事故も給料面で格別不利益な取扱いを受けていない」として後遺障害逸失利益を認めませんでした。もっとも、後遺障害が残存しつつ通常業務をこなしている点については後遺障害逸失利益で斟酌されました(通常110万円のところ150万円)(京都地方債裁判所平成25年7月25日判決・自動車保険ジャーナル1911号112頁)。

<弁護士のコメント>

本件は被害者が公務員であり、休業損害も発生していない事案でした。被害者が公務員の場合、同様の問題が発生することと思われます。この点、最高裁判所昭和42年11月10日判決(民集21・9・2352)では「損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかった場合には、それを理由とする賠償請求ができないことをいうまでもない」としていますから、減収がない場合には原則として後遺障害逸失利益が認められないことになります。被害者としては、口頭弁論終結時において減収が一切ないにもかかわらず、逸失利益を請求するのであれば、将来的に減収の可能性があることを主張・立証することになります。本件のように、後遺障害逸失利益が何らかの理由によって否定される場合は、後遺障害慰謝料で斟酌されることがあります。つまり、後遺障害逸失利益としては認められないけれど、別のところ(後遺障害慰謝料)でフォローしますといった判断になります。

<争点>

・後遺障害逸失利益

・後遺障害慰謝料

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.27更新

原告の高次脳機能障害の主張(自賠責認定なし)について、交通事故から約5年が経過した後の診断であること、外傷性脳損傷を裏付けるような画像所見が全くないこと、本件事故直後には意識障害もなかったことから、本件事故後約5年が経過して実施された神経学的諸検査の結果を検討するまでもなく、高次脳機能障害を認めた医師の診断は十分な医学的根拠があるものとはいえず、到底信用できるものではないとして、高次脳機能障害の発生を否定しました(東京地方裁判所平成25年9月10日判決・自動車保険ジャーナル1911号104頁)。

<弁護士のコメント>

本件は事故から長期間経過後に発症したとされる高次脳機能障害の事案であり、高次脳機能障害が争われる典型例です。外傷性の脳損傷による高次脳機能障害の場合、意識障害の有無、画像所見の有無が裁判所では大きな比重をもっています。本件でも同様の視点によって判断がされています。本件でも明らかなように、事故から長期間が経過した場合には高次脳機能障害の認定は厳しいものとなります。本件では、医師の判断についても裁判所が「信用性なし」としています。つまり、医師の意見書があっても、それだけでは高次脳機能障害が認定されるものではないということになります。

<争点>

・高次脳機能障害

・因果関係

・素因減額

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.27更新

54歳男子会社役員の原告が、左踵骨骨折から躁うつ病に罹患したとの事案について、証拠上、は原告に精神疾患の既往があった様子は見受けられないこと、身体疾患の経過中に抑うつ状態を来たすことはあり得ること、原告の本件事故による受傷の入院治療は相当長期に及んだこと、原告が本件事故で受傷することがなくとも躁うつ病を発症したであろうことを窺わせる事情は見受けられないこと、大学病院の医師も本件事故を契機として発症したと診断していることを理由に、原告の躁うつ病と事故との相当因果関係を肯定しました(大阪地方裁判所平成25年6月28日判決・自動車保険ジャーナル1911号91頁)。

<弁護士のコメント>

踵の骨を骨折したことが躁うつ病につながるかどうかは難しい判断になります。本件でも「一般に、左踵骨骨折等の外傷を負ったからといって、抑うつ状態や躁うつ状態になるのが通常ではない」としつつ、上記事情を考慮して、本件交通事故と傷害結果との相当因果関係を肯定しました。もっとも、素因減額を行うことでバランスをとっているものと考えられます。本件のように、交通事故によって精神疾患が発生したという主張はよくあるのですが、相当因果関係の存否の判断は非常に困難です。ただ、実際上、精神疾患の場合、治療の頻度が少ないことが一般ですから、加害者側保険会社が柔軟に対応することで解決している事案もあるのではないかと考えられます。仮に、精神疾患と交通事故の因果関係の有無について、毎回保険会社が厳密に判断することになれば、結局のところ、因果関係不明という判断にしかならざるを得ないのではないでしょうか。

<争点>

・事故と躁うつ病との因果関係

・素因減額

・会社役員の消極損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.26更新

公認会計士試験の短答式試験に合格していることから、公認会計士の平均年収を基礎収入と主張する21歳男子大学3年生Aの死亡逸失利益算定について、Aは本件事故当時、未だ大学3年生で、大学を卒業してすらいないこと、就職先が内定していたわけでもなく、将来において大卒者の平均賃金を上回る収入を得ることができるという高度の蓋然性があるとまではいうことができないことから、死亡逸失利益の基礎収入については、賃金センサス男性労働者大学・大学院卒の全年齢平均と認定して、生活費控除を5割としました(東京高等裁判所平成25年5月22日判決・自動車保険ジャーナル1911号75頁)。

<弁護士のコメント>

本件の1審判決では、裁判所は、被害者が大学生であるところ、公認会計士試験における合格率や難易度を問題にしています。 この点、別の裁判例では、歯科医のケースで似たような判断がなされています。大阪地方裁判所平成20年3月27日判決(自動車保険ジャーナル1761号)は、歯学部の大学生の死亡逸失利益について、合格率の高さ等を考慮してセンサス男子歯科医平均の90%を基礎収入にしています。この2つの裁判例を比較すると、要するに、公認会計士は合格率が低く、歯科医は合格率が高いということになるでしょう。歯科医の場合、大学入学時点で、専門の学科に入っているわけですから、合格率が高いこととあいまって、たとえ大学生であっても、歯科医として勤務する可能性が高いといえるでしょう。

<争点>

・死亡逸失利益の基礎収入

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.26更新

生保会社社長女子Xは、平成18年12月18日、乗用車を運転中、Y運転の乗用車に追突され(第1事故)、脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏)を発症、その約1年5か月後にZ運転の乗用車に追突され(第2事故)、脳脊髄液減少症が増悪し、12級後遺障害が残存したとする(自賠責非該当)事案につき、起立性頭痛を否認し、ブラッドパッチの改善効果も否認し、結論として、脊髄液減少症については否認しました。なお、本件では、第1事故と第2事故の関係については、民法719条1項前段の共同不法行為に該当しないとされました(福岡高等裁判所平成25年10月10日・自動車保険ジャーナル26頁)。

<弁護士のコメント>

脳脊髄液減少症の要件を充足しないと判断しないとした裁判例です。本件のポイントとしては、診療録に起立性頭痛についての記載があり、医師がブラッドパッチ治療による改善を明確に述べていたという点がありますが、裁判所は、どちらについても、その実態を具体的事実から判断し、否認しました。

<争点>

・脳脊髄液減少症(起立性頭痛・RIの膀胱内の早期集積、RI脳槽シンチ画像、ブラッドパッチ)

・共同不法行為

・訴訟提起前の保険会社による和解提示の撤回

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.25更新

身体障害者手帳5級交付の72歳男子が前頭葉脳挫傷等受傷後の後遺障害認定につき、9級既存障害の素因減額が争点になった事案の判断の枠組みについて「本件の損害項目を見てみると、その内容は治療費と雑費の他は慰謝料(入通院に関するもの、後遺障害にかんするもの)のみであり、休業損害や逸失利益といった消極損害が争われているわけではない。また、金銭的にも後遺障害慰謝料がその大半を占めている一方、治療費、雑費、入通院慰謝料の各項目は相対的に小さい比重しか占めておらず、また治療期間についても、原告の主張によっても、入院3日、通院実日数17日と短く、上記のような事故態様や、脳挫傷・硬膜下血腫等の診断を受けた事案の治療として、殊更に遷延化しているとか、治療費や入通院慰謝料が膨張しているというような状況にあるわけでもなく、これらの損害項目について素因のために殊更に拡大が生じているとか、あるいは事故態様との間で著しい不均衡が生じているということはできないところであり、素因の関与はもっぱら後遺障害慰謝料について生じているものと考えられる。そして、実際問題として、治療費や入通院慰謝料について、事故による急性症状の部分、後遺障害につながる起立障害の部分、難聴の部分に明確に切り分けることも困難であることを考慮すべきである。このように考え、本件では素因減額をしなければ晃平に反すると考えられるのはもっぱら後遺障害慰謝料であるとととらえることとし」たと判断しました(大阪地方裁判所平成25年7月16日判決・自動車保険ジャーナル1911号13頁)。

<弁護士のコメント>

素因減額をする場合に、どの損害項目から減額するかが問題になりますが、本件では、損害額及び治療状況からして後遺障害慰謝料に限定して素因減額をしている点が重要です。

<争点>

・素因減額

・労働能力喪失率

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.23更新

自賠責2級1号高次脳機能障害を残す69歳男子原告の症状固定後の将来介護費について「原告の懸命な努力により、症状固定後、身体的機能は相当な回復をみせ、自動車や自転車の運転が可能で、1人でゴルフ練習場に行けるなど、一定の社会的行動ができるに至っている。しかしながら、特定のゴルフ練習場に行くことができるようになったことをもって、高次脳機能障害による記憶障害や感情コントロール低下、対人技能拙劣、固執性等の症状が完全に喪失したとはいえず、原告や花子の供述等に照らすと、なお、日常生活における声かけなど、随時看視や見守りを要する状況にあると考えられる。そこで、原告の症状に照らし日額2000円の将来介護費を認める」と認定しました。

また、後遺障害逸失利益については、原告が代表取締役として1200万円の年収を得ていたとの原告の主張を認めなかった一方で「本件事故の頃にも就労意欲を有し、年齢や体調等をみても就労の蓋然性はあったといえる。そこで、基礎収入は、平成23年賃金センサス男・学歴計・年齢別(70歳~)平均賃金379万200円を採用する」とし、7年間100%の労働能力喪失を認めました。

<弁護士のコメント>

自賠責2級1号の高次脳機能障害を残す69歳男性とはいっても、本件では身体的機能について相当な回復を見せていることを考慮して、日額2000円の将来介護費が認定されました。なお、赤い本では近親者付添人による将来介護費を日額8000円としていることからすると、本件の認定額は低額といえます。

<争点>

・将来介護費

・後遺障害逸失利益

・損益相殺の方法(最高裁判所平成16年12月20日判決>

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.23更新

障害者使用の被保険車両(軽自動車)が海中から発見され、統合失調症でも治療を受けている57歳男子3級身体障害者のAが車内から発見されたことで、遺族が保険金請求する事案について「太郎は、本件事故当時、午後あるいは夕方ころになると心理状態が悪化することが多く、セレネースの服用量を減らすとこれが更に悪化する傾向がうかがわれたにもかかわらず、平成22年11月11日以降、心理状態が悪化する時間帯である夕食後の分も、セレネースの服用量をそれまでの半分(0.75ミリグラム)に減らしたところ、そのわずか5日後に本件事故が発生したのであるから、本件事故については、セレネースの減量等により心理状態が悪化した太郎が自殺を図ったものである可能性が相当程度認められる」として「本件事故が偶然の事故であることの立証はされていない」ことを理由に請求を棄却しました(大分地方裁判所佐伯支部平成25年9月17日判決・自動車保険ジャーナル1910号171頁)。

<弁護士のコメント>

被害者の自殺であることを認定し、事故の偶然性を否認した裁判例です。被害者の薬の処方の状況のほか、本件が海中転落死であることがポイントになっています。

<争点>

・偶然の事故(自殺)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.23更新

初度登録平成12年12月の原告車両ランボルギーニ・ディアブロが被告車両に接触され、右フロントフェンダー等が割損したことから、理費用約306万円を請求する事案について、「原告車の右フロントフェンダー中央部の損傷には割損があるが、その亀裂は大きくはない。したがって、構造上に問題があるダメージと言い難く、積層作業で足りると考えて問題はないと認められる。加えて、保険会社と修理工場等との修理協定は、当該修理が応急修理の状態であれば、締結されないと考えられるところ、原告車については、被告の保険会社とB会社との間で修理協定がされているから、丙川も本件修理は応急修理ではなく本修理として考えた上で修理をしていたと解される」として、被告の主張に従い、120万7500円を修理費用として認定しました。

また、評価損については「原告車は、新車価格が3700万円という高級外車であり、しかも、生産台数が80台の限定車であったことなどからすれば、原告車には、本件事故による価値の下落が認められ、評価損が発生しているといえる。もっとも、本件事故後である平成22年9月時点での、原告車の走行距離は約1万5000キロメートルであり、一定程度の走行距離が認められること、原告車の修理箇所は、躯体などの構造部分に及んでいないことなどを踏まえ、原告車の評価損は修理費用の約3割に当たる36万円と解するのが相当である。」としました(大阪地方裁判所平成25年6月14日判決・自動車保険ジャーナル1910号164頁)。

<弁護士のコメント>

高級外国車の評価損について判断した裁判例です。損傷箇所自体は骨格と関係ないですし、初度登録から10年経過という事情があったにもかかわらず、修理費用の30%の評価損が認定されています。

<争点>

・修理費用(過剰修理)

・評価損

投稿者: 小島法律事務所

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