2015.06.16更新

更改契約を控えた初度登録から7年を経過した改造セルシオの盗難に関し車両保険金を請求した事案で、裁判所は、前提として保険金請求者が、「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的事実の主張・立証責任を負うこと及びその立証は単に「外形的・客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況」が立証されるだけでは、盗難の外形的な事実を合理的な疑いを超える程度にまで立証したことにはならないことを確認しました(最高裁判所平成19年4月23日判決・裁判集民事224号171頁)。そして、本件では、盗難の外形的事実な事実を合理的な疑いを超える程度にまで立証したとはいえないと判断しました(名古屋地方裁判所平成25年9月10日判決・自動車保険ジャーナル1912号164頁)。

<弁護士のコメント>

裁判所の判断の根拠としては、本件車両のマフラーは改造されてエンジン音は爆音が鳴ることから、隣接する駐車場から盗難されたにしては、盗難の際に一切駐車場を確認していなかったのは不自然であるということや、エンジン音を聞いた近隣者がいないことを挙げています。

また、原告は、保険金が支払われないことを違法として、保険会社に対して慰謝料を請求していましたが、そもそも車両保険金請求に理由がないとして、「その余の点につき判断するまでもなく」損害賠償請求については理由がないとしました。保険金の不払いの違法性について正面から判断したものではない点には注意が必要です。もっとも、実際問題として、保険金の不払い(実際には遅滞でしょうが)が違法性を帯びるかというと、よほどの事情がない限り、個人的には疑問です。

争点>

・車両保険金請求

・車両保険が支払われないことへの慰謝料請求

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.14更新

山岳道路での事故について、裁判所は、本件事故は1度の走行では起こり得ない、すなわち、本件事故は一連のものではなく、甲野車が乙山車に追突された第1衝突の後、甲野車は一旦停止したにもかかわらず、その後に第2衝突や第3衝突が起こったものであるとし、第1衝突も意図的であると考えるのが合理的であること、本件事故発生場所に至る経緯にも合理性はないこと、甲野の関わる事故歴は多く本件事故も利益目的と疑うべき事情があること、本件事故が物損事故に止まっていることなどを総合すれば、本件事故は、甲野及び乙山が通謀して故意に発生させたものと認めるのが相当であるとして、加害者による保険金請求及び被害者の損害賠償額の保険金の直接請求について棄却しました(大阪地方裁判所平成25年3月25日判決・自動車保険ジャーナル144頁)。

<弁護士のコメント>

保険金請求の場合、通常は、契約に基づいて適正な請求がなされれば支払を受けることができます。もっとも、故意によって事故が発生した場合には保険会社は保険金の支払を免れることができます。本件は、保険金請求権者と第三者との間で、通謀による故意免責が認定された珍しい事例です。当事者は顔見知りだったことや保険契約状況、そして何より事故状況が決めてになって通謀による事故であると認定されたものと思われます。

<争点>

・故意免責(通謀)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.14更新

後退車両が倉庫に衝突し、倉庫所有者が①加害者に対して損害賠償請求をし、②加害者側保険会社に直接請求権に基づいて加害者の損害賠償義務が確定することを条件に同額の支払を求めた事案において、裁判所は、本件事故は、1審被告が、1審原告代表者と意を通じて又はその意を体して、本件保険契約に基づき支払われる保険金を1審原告に受領させるため、本件車両を意図的に操縦して発生させたものと推認されるとしました。そして、本件事故は、保険契約者である1審被告の故意によって生じたものといえるから、本件約款9条1項1号により、1審被告Y保険会社は、保険金の支払義務を免れるとして、保険会社に対する請求を棄却しました(名古屋高等裁判所平成25年6月14日判決・自動車保険ジャーナル1909号111頁)。

<弁護士のコメント>

保険金の請求については、故意によって発生した場合は支払われないという、いわゆる「故意免責」の条項が問題になります。通常は自身が加入する保険会社に対して契約に基づいて保険金請求をすれば認められるわけですが、本件の裁判所の判断によると、本件は、いわゆるモラル事案とされ、第1審の判断が変更され、確定しました。

<争点>

・事故の発生

・故意免責

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.08更新

前方を走行していた車両(トラック)の荷台からの落石飛び石事故で車両が損傷したとして、前車運転者に対して損害賠償請求するとともに、加入保険会社に対して車両保険金を請求した事案において、最高裁判所は、前車からの落石が想定しにくいこと、再生落石が風により飛翔する事態も考えられないこと、被害車両の損傷部位が不自然であること、前車による巻き上げ、対向車からの落石の可能性も考えられないこと、事故同日に路上に再生砕石の散乱記録がないことや他に多額の保険金が支払われ、その支払状況に疑義があることなどを理由に、不法行為及び「偶然な事故」の発生を認めず、原告の請求をいずれも棄却した高裁判決への上告受理を認めませんでした(最高裁判所平成25年10月17日決定・自動車保険ジャーナル1909号1頁)。

<弁護士のコメント>

本件は、損害賠償請求とあわせて車両保険金請求もなされています。保険金の請求は、自身が契約する保険会社に対する契約責任の追及ですから、多くの場合は特に問題とはなりません。本件では、「飛び石事故」という形態について保険会社が支払を拒絶したことから訴訟が提起されています。第1審の認容判決が高裁で逆転され、最高裁では上告が受理されませんでした。高裁判決では、いわゆる「飛び石事故」について、抽象的なイメージとしてではなく、具体的事実や証拠に即した判断がなされています。

<争点>

・不法行為の存否

・偶然な事故の発生の存否

 

 

投稿者: 小島法律事務所

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