2022.07.01更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による『自賠責保険会社に対する損害賠償請求』についての解説です。
 交通事故に遭った際、加害者が任意保険会社と保険契約していた場合、被害者はその任意保険会社から損害の補填を受けることが、一般的です。
 しかし、加害者が任意保険会社と保険契約をしていなかった場合、被害者は、加害者に損害賠償請求を行うか、加害者が加入している自賠責保険会社に対して、自動車損害賠償保障法(以下、「法」という。)16条1項に基づいて損害賠償請求を行い、損害の補填を図ります。
 この点、自賠責保険会社からの賠償額については、法律上、支払基準が定められています(自賠法16条の3第1項)。

 訴訟以外で、自賠責保険会社から損害の補填が行われる場合、同基準に基づく損害賠償金の支払が行われます。

 では、自賠責保険会社を被告として、損害賠償請求訴訟を行った場合、その損害賠償金の金額については、どの様になるのでしょうか。

 この点、最高裁判所平成18年3月30日判決は、「法16条の3第1項は,保険会社が被保険者に対して支払うべき保険金又は法16条1項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額(以下「保険金等」という。)を支払うときは,死亡,後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従ってこれを支払わなければならない旨を規定している。法16条の3第1項の規定内容からすると,同項が,保険会社に,支払基準に従って保険金等を支払うことを義務付けた規定であることは明らかであって,支払基準が保険会社以外の者も拘束する旨を規定したものと解することはできない。支払基準は,保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に従うべき基準にすぎないものというべきである。そうすると,保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合の支払額と訴訟で支払を命じられる額が異なることがあるが,保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合には,公平かつ迅速な保険金等の支払の確保という見地から,保険会社に対して支払基準に従って支払うことを義務付けることに合理性があるのに対し,訴訟においては,当事者の主張立証に基づく個別的な事案ごとの結果の妥当性が尊重されるべきであるから,上記のように額に違いがあるとしても,そのことが不合理であるとはいえない。
したがって,法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において,裁判所は,法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができるというべきである。」と判示しました。

 このように、被告が自賠責保険会社であっても、訴訟の場合、裁判所は、自賠法の支払基準(法16条の3第1項)に基づかず、自賠法の支払基準を超える金額を内容とする判決を下すことができます。

投稿者: 小島法律事務所

2017.01.04更新

弁護士が書面を作成するうえで、最高裁判例や下級審裁判例を引用したり、参考にしたりすることがあります。従来は、判例タイムズ等の法律雑誌を購入(定期購読)することが主流でしたが、法科大学院では、判例検索システムの利用が必須となっていることから、現在では、判例検索システムの利用契約を締結する事務所が多くなっていることと思います。当事務所では、交通事故案件に利用する判例検索システム(及び雑誌)として、以下のものを利用しています。判例検索だけで3つ契約しているというのは比較的多い方ではないかと思います。

1 ウエストロージャパン:交通事故民事判例集、判例タイムズの検索に便利です。

2 判例秘書:裁判所でも採用されているといわれていますので、当事務所でも契約しています。個人的には、判例タイムズに掲載される、裁判官が執筆した「記事」(PDF)をよく利用しています。

3 自動車保険ジャーナル:通常「自保ジャーナル」定期的に更新されるCD-ROMと雑誌(定期購読)の両方を契約しています。保険金請求事件についても解説されているのが特徴です。

4 交通事故判例速報:昨年、600号を最後に廃刊になってしまいましたが、当事務所では、300号から600号まで所有しています。交通事故に精通した弁護士が解説しているのが特徴です。

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.26更新

乗用車を運転信号待ち停止中に被告乗用車に追突され、頸椎捻挫等から低髄液圧症候群を発症し、9年余り通院して12級後遺障害を残したと主張する男子会社員の原告について(自賠責14級9号)、低髄液圧症候群の発症を否認し、14級後遺障害としました(東京地方裁判所平成25年11月27日判決・自動車保険ジャーナル37頁)。

<弁護士のコメント>

原告が「低髄液圧症候群」との診断を受けたのは、本件事故から1年9か月もの期間を経過した後でした。したがって、外傷性のものかどうかの判断が極めて困難と考えれらます。また、低髄液圧症候群の要件も充足していませんでした。さらに、原告が12級を主張していますから他覚的所見の有無が争われましたが、裁判所は他覚的所見が一貫していないとして否認しました。

後遺障害逸失利益については、原告の給与が増額していることが問題になりましたが、原告には後遺障害逸失利益を免れるべく特別な努力をしたものと認定され、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間5年間で後遺障害逸失利益が認定されています。

<争点>

・後遺障害(低髄液圧症候群)

・後遺障害逸失利益(減収がなくむしろ増加)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.26更新

他人所有の軽四輪貨物車を被告が運転中に起こした事故は、被告の夫が契約するアルファードの自動車保険契約における他車運転危険担保特約「他車」に該当するかについて、被告は年に数回程度本件車両を運転することはあったものの、日常的にはアルファードを運転していたことから、被告が本件車両を常時運転していたものと認められないとして「他車」と認定しました(東京地方裁判所平成25年10月3日判決・自動車保険ジャーナル)。

<弁護士のコメント>

本件では、被告車両が無保険であったことから、①原告加入の保険会社に対する無保険車事故傷害特約に基づく請求及び②被告の夫に対する他車運転危険担保特約に基づく請求をしていました。②が認容されたことで被告車は「無保険車」とはいえないとして①は棄却されています。また、本件では、高次脳機能障害1級の後遺障害を残す8歳男子原告について、入院中の近親者付添費として日額6500円、退院後症状固定まで1万円を認定しています。また、近親者(母)の介護を必要とするとして、将来介護費として、原告母が67歳に達するまで1日あたり1万円の介護費用を認め、その後原告の平均余命まで1万5000円の将来介護費用を認定しています。

<争点>

・他車運転危険担保特約

・将来介護費

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.25更新

キャンディ・フレーク塗装を施す普通貨物自動車後部10数センチメートルの擦過痕の補修について、原告が主張した「全塗装」ではなく損傷部の「部分塗装」で足りると認定しました(東京高等裁判所平成26年1月29日判決・自動車保険ジャーナル148頁)。

<弁護士のコメント>

本件は原告車両の塗装色が特別な色で色合わせが困難という事情がありましたが、全塗装までは必要ないとしました。なお、キャンディフレーク塗装とは、フレーク塗装(光を反射する薄片(フレーク)を塗料に混入して塗布することにより粒状の光沢を出す塗装方法)の後にキャンディ・カラー塗装(メタリックカラーやパールカラーの塗料を下塗りした後に、有色透明のキャンディ・カラー塗料とクリアコート剤とを混ぜたものを塗布して独特の光沢を出す塗装方法)を施して独特の光沢を出す塗装方法です。

また、代車費用については、遊休車の存在を認定して否認しました。

<争点>

・修理費用(全塗装・否認)

・代車費用(否認)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.25更新

被害車両に積載されたレース用エンジンの損害について、8基が一部損傷したことから補修費用を1基15万円として120万円を損害をして認定しました(横浜地方裁判所平成25年11月14日判決・自動車保険ジャーナル141頁)。

<弁護士のコメント>

交差点の出合頭衝突で、双方車両の修理費用が100万円以上に及んでいますから、車両積載物への影響が皆無とはいえない事案でした。また、非常に繊細に作られているというレース用エンジンの性質上、たとえ外観上の損傷が目立たなくても、少なくとも損傷の点検を兼ねた補修が必要としてその費用を1基あたり15万円としています。

また、本件では、求償金請求訴訟における弁護士費用の請求が否認されていますが、これは従来の裁判例どおりです。

<争点>

・修理費用(車両積載物)

・弁護士費用(求償訴訟・否認)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.24更新

信号のない交差点での直進車と対向右折車との交通事故(いわゆる右直事故)で直進バイクの過失を60%とし、対向右折原付の過失を40%としました(横浜地方裁判所平成25年10月28日判決・自動車保険ジャーナル1913号135頁)。

<弁護士のコメント>

交差点内の右直事故の場合、直進車両と比べ、右折車両の過失が重くなるのが通常ですが、本件では、直進車が制限時速50キロの道路を100~115キロで走行していたとの推認をされ、直進車両の過失が重く認定されました。なお、原付とバイクの交通事故の過失割合については、「別冊判例タイムズ38号」に記載がないので、裁判例の集積が参考になります。

<争点>

・過失相殺(バイクVS原付)

・自賠責保険の充当

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.23更新

夜間(午後10時ころ)、交差点における自動車同士の出合頭衝突で、原告車運転中の被害者(昭和50年生まれ)が車外に放り出されて死亡した事案について、被告が本件交差点にすら気づかず、一時停止義務も怠ったことなどを理由に過失相殺を否定しました(名古屋地方裁判所平成25年10月25日判決・自動車保険ジャーナル1913号128頁)。

<弁護士のコメント>

被害者の死因が頭部外傷による脳挫傷であることからすると、被害者がシートベルトを装着していなかった点が損害の拡大につながったとも考えられますが、本件では、たとえシートベルトを装着していたとしても重大な結果が生じていた可能性が高いとされました。

なお、物損の示談や人身損害の交渉段階においても、過失相殺を主張していませんでしたが、この点について裁判所は特に判断していません。

<争点>

過失相殺(自動車VS自動車)

・過失相殺(シートベルト不装着)

・死亡逸失利益(老齢基礎年金部分・否認)

・入院慰謝料(搬送当日死亡・肯定)

・弁護士費用相当損害金(被害者請求をしていないことを考慮)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.22更新

信号交差点における原付と自動車の出合頭衝突で被害者が死亡した事案について、加害自動車に制限速度違反があったものの事故との因果関係を否定し、原付の赤信号無視から加害者を免責しました(東京高等裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1913号・108頁)

<弁護士のコメント>

本件のような事故態様では、供述の信用性が問題になります。裁判所は、一貫して供述していること、制限速度30キロの道路を50~60キロで進行したという自身に不利な事実も供述していることから、青信号を確認したとの加害者の供述の信用性を認めました。また、青信号進入の場合に過失が問われるかという点について、最高裁判所昭和46年6月21日判決、同昭和52年2月18日判決を引用し、基本的には過失責任を問われないことを確認しています。

信号交差点で赤進入二輪車対青進入四輪車の過失認定事例としては、他に、①大阪地裁平成3年8月30日判決(交民集24巻4号986頁。赤信号進入の被害原付車に9割の過失相殺)、②東京地裁平成6年6月9日判決(交民集27巻3号783頁。赤信号無視の原付に対して加害者が自賠法3条但書免責、③東京地裁平成11年11月26日判決(自保ジャーナル1356号。被害バイクの赤信号無視を認定し加害タクシーを免責。)があります。

<争点>

・過失割合(原付VS自転車)

・過失割合(信号のある交差点での出合頭衝突)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.22更新

ゴミ収集業務に従事する42歳男子公務員(事故後の減収なし)の左橈骨骨折等から自賠責併合14級後遺障害を残す事案の後遺障害逸失利益について、原告に職務上具体的な支障が生じていることや事故後に配転をしてもらったこと、原告自身の工夫によって職務に営業を与えないようにしていること等から、減収がなかったにもかかわらず、10年間5%の労働能力喪失を認めました(神戸地方裁判所平成25年9月12日判決・自動車保険ジャーナル1913号97頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、減収が生じない場合であっても、後遺障害逸失利益が認められています。本件のように、減収がないにもかかわらず後遺障害逸失利益を主張する場合は、その労働に対する影響や本人の努力によって減収がなかったことを主張・立証することになりますが、本件の特徴は、被害者が「公務員」であり、本人がたとえ努力しなくても減収がそもそも観念できないような事案であることです。なお、労働能力喪失率及び労働能力喪失期間については、神経症状は経年により緩和する可能性が高いと考えられることを理由に。労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間10年間としました。

<争点>

・後遺障害逸失利益(減収なし)

・交通事故証明書及び印鑑証明書取付費用(因果関係肯定)

・車両時価額(インターネット<レッドブック)。

投稿者: 小島法律事務所

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