2015.06.18更新

自賠責5級2号高次脳機能障害を残す66歳女子パート兼家事従事者について、平均余命まで22年間、日額2000円の自宅介護費(将来介護費)を認定しました。また、兼業主婦の休業損害について、賃金センサスの6割を基礎収入としました(さいたま地方裁判所平成25年10月10日判決・自動車保険ジャーナル1913号)。

<弁護士のコメント>

5級2号高次脳機能障害の場合、一般的には介護が必要とされる後遺障害等級(高次脳機能障害1級・2級)ではないことから、将来介護費が認められるかどうかは、原告それぞれの事情によることになります。したがって、生活状況等について原告による詳細な主張・立証が必要となります。

なお、5級2号高次脳機能障害を残す将来介護費について、①横浜地裁平成23年12月27日判決(自動車保険ジャーナル1865号)は否認しているものの、②東京地裁平成24年12月18日判決(自動車保険ジャーナル1893号)は認定(日額2000円)し、③名古屋地裁平成25年3月19日判決(自動車保険ジャーナル1898号)も認定(日額3000円)しています。

休業損害については、原告が賃金センサスに基づく主婦休損の請求をしたところ、給与所得が約116万円あったことや相応の家事労働を行っていること等から賃金センサスの6割を基礎収入としています。生活実態に伴う相当な判断であると考えられます。

<争点>

・将来介護費(5級2号高次脳機能障害)

・兼業主婦の休業損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.08更新

バイクを運転中に自動車と衝突し、CRPSの診断を受けた原告(自賠責12級13号。ただし疼痛ではない。)について、原告は後遺障害5級相当であると主張しましたが、裁判所は、症状固定時における労働能力喪失率は12級13号事案より高いとしても、症状永続の蓋然性に疑問があり、67歳時には労働能力喪失率が14%を大きく下回り得ることを織り込んで、「全体を平準化」して67歳まで14%の労働能力喪失率を認めました(大阪地方裁判所平成25年7月11日判決・自動車保険ジャーナル1912号38頁)。

<弁護士のコメント>

本件の裁判所の判断は、2つの特徴があります。まず、原告の損害の算定を考える上で、原告がCRPSかどうかの二者択一では判断していない点です。次に、具体的な損害の判断において、後遺障害逸失利益を算定する際に、全体の平準化という視点で判断している点です。最初の点については、そもそも損害の判断は、傷病名や自賠責の判断にとらわれない法的な判断であることからすれば、むしろ当然の態度と考えられます。もっとも、2つ目の点については、非常にユニークで今後、同様の判断が示される事案が登場するか注目していきたいと思います(当職が知らないだけで以前にも同じような判断が示された事案があったかもしれませんんが。)。

<争点>

・後遺障害(CRPS)

・休業損害(個人事業主)

・意見書作成費用の相当因果関係(否定)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.02更新

横断歩道上の自転車同士の追い抜き事故について、①先行自転車の運転者Xが80歳であったこと、②後行自転車が強引に抜き去ったことなどから過失割合を50:50としました。また、Xの休業損害については、賃金センサス女子70歳以上の7割未満の日額5700円を基礎にして入院期間について休業損害を認めています(大阪地方裁判所平成25年6月18日判決・自動車保険ジャーナル140頁)。

<弁護士のコメント>

・過失割合:別冊判例タイムズ38号には自転車同士のものが掲載されていません。もっとも、本件は先行車がかなり特殊な走行をしていることから、汎用性がある裁判例とは考えられず、過失割合については事例判断としての意味しか持たないと考えられます。

・高齢女子の家事従事者の休業損害:高齢女子の場合、休業損害の算定にあたっては、本件のように賃金センサスを一部修正するのが一般的です。もっとも、どのような家事労働を行っているかは、年齢によって一義的に決することができるものではありませんから、結局、実態に即した判断となります。

・人身傷害先行払いの場合の過失相殺:人身傷害保険とは、自分が契約している保険会社に対して人身損害に関する補償を求めるものです。人身傷害保険が賠償に先行して支払われた場合(人傷先行払い)のときに過失相殺をどのように判断するかについては、かつては諸説ありましたが、現在は裁判基準差額説が通説です。本件でもいわゆる裁判基準差額説を採用したものと考えられます。

<争点>

・過失割合

・休業損害(高齢女子)

・裁判基準差額説

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.01更新

商店街道路におい原告歩行者の左肩と対向被告普通貨物車のサイドミラーが衝突した事故について、事故と傷害結果との相当因果関係を認めるとともに、整骨院の施術費については一部減額して認めました(大阪地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1911号129頁)。

<弁護士のコメント>

この裁判例では、①被害者が歩行者であること、②加害車両が貨物自動車であること、③衝撃は軽微とはいえないこと、④医師の診断等を根拠に、相当因果関係が認められています。一般的に、車両のサイドミラーが接触したことで後遺障害が残存するほどの傷害が発生するかというと疑問ですが、本件は上記事情から相当因果関係が肯定されたものです。

また、整骨院の施術費については、医師の指示がない場合であっても、その内容からして一部の相当性を認めています。

さらに、休業損害については、症状固定時に労働能力喪失率が14%であることを根拠に「相当程度の労働能力の回復」を認めていますが、これは珍しい理由づけだと思います。

<争点>

・相当因果関係

・整骨院の施術費

・休業損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.22更新

週3回人工透析に通院する原告妻(専業主婦)の休業損害算定の収入認定につき、原告妻は「本件事故当時、夫である原告及び長男と同居し、専業主婦として家事を行っていたものの、慢性腎不全を患い、末期腎不全と診断されて、1週間に3回、午後2時30分ころより人工透析に通っており、透析日には透析前におおよその家事を済ませていたものの、透析後には家事を行える状態ではなかったことが認められる。これらの事実によれば、原告妻の本件事故当時の家事労働を金銭評価すれば、賃金センサス平成22年第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者の全年齢平均の賃金額345万9400円の50%に当たる172万9700円と認めるのが相当である」と認定しました(神戸地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル95頁)。

<弁護士のコメント>

主婦休損については賃金センサスに従うのが通例ですが、本件においては、週3回の人工透析の日には家事ができる状態ではないという理由で賃金センサスの50%を基礎収入としました。

<争点>

・休業損害(主婦休損)

・会社の損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.13更新

対面信号が青矢印であったために右折したタクシーと対向車線から赤信号無視で直進してきたバイクが衝突した交通事故における過失割合が問題になりました。なお、本件に先立って判断された自賠責では、バイクの運転者について傷害分20%、後遺障害分30%の重過失減額がされていました(8割以上9割未満の過失)。裁判所は、原告車が本件交差点入口手前の停止線を通過した時点では、対面する信号信号は既に赤に変わっており、又は黄色から赤に変わる間際であったと認定しました。そして、原告車が停止線を通過した後に本件交差点に進入する時点では、既に赤色信号に変わっていたとしました。 他方、本件交差点の規模・客観的や交通量に照らすと、タクシーの運転者は、交差点を右折するに当たり、対面する信号機の信号表示が黄から赤・青右折矢印に変わった直後であったから、対向車線を黄色信号から赤色信号に変わった直後に進入してくる車両の存在に注意しつつ徐行して進行すべき義務があるのに、これを怠ったものと判断しました。そして、結論として、バイクの運転者の過失割合を80%としました。

また、休業損害については、本件事故による欠勤を理由に解雇されたとの原告の主張を否認しつつも、「本件事故発生日から退職日までの101日に加え、再就職のために必要な期間として退職後90日分を休業損害算定の基礎に加えるのが相当」としました(東京地裁平成25年8月7日・自動車保険ジャーナル1909号・87頁)。

<弁護士のコメント>

右折の青矢印に従って右折した場合、対向車は赤信号で交差点に進入したことになります。したがって、原則としては、青信号矢印にしたがって、右折したタクシー運転手には過失はないことになりそうです。もっとも、裁判所は、本件事案の特殊性を評価して、タクシー運転手に2割の過失を認定しました。裁判氏は、自賠責の重過失減額を参考にして訴訟における過失割合を認定しています。

<争点>

・過失割合(重過失減額)

・休業損害

投稿者: 小島法律事務所

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