2015.05.12更新

高校を中退した21歳男子の後遺障害逸失利益の基礎収入について、裁判所は、原告が高校を中退して料理等の仕事に就いていたことや、症状固定当時23歳と比較的若年であったことから、平均賃金は症状固定時である平成23年の男子全年齢平均によるべきであるとしました。また、高校を中退したことについてはが、高校卒賃金センサスが458万8900円、中学卒賃金センサスが388万3100円となっていることを公知の事実として、そのほぼ中間にあたる年額420万円(月額35万)を基礎収入として認定しました(横浜地裁平成25年7月25日判決・自動車保険ジャーナル1909号71頁)。

<弁護士のコメント>

実収入が低い場合に、基礎収入を実収入にするか賃金センサスにするかという点で争われることがよくあります。本件では、高校中退者の後遺障害逸失利益の基礎収入について、実収入ではなく賃金センサスで、そして、中退という事実の評価として、賃金センサスの中でも中卒者と高卒者の中間を採用しています。

<争点>

・後遺障害逸失利益(基礎収入)

・保険会社に対する直接請求権

・確定遅延損害金

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.11更新

12級7号右股関節機能障害と13級8号右下肢短縮の併合11級を認定しつつ(行政通達によれば労働能力喪失率20%)、後遺障害逸失利益の額を認定するにあたって、後遺障害等級及び労災保険に関する行政通達が定める労働能力喪失率は、「考慮すべき一資料」とはしたものの、拘束力を認めず、、被害者と加害者の間における示談の交渉経過も同様としました。そして、原告の業務が肉体労働を中心とするものはなく、右股関節の可動域制限や右下肢短縮が、原告の業務の円滑な遂行を顕著に阻害するものとは言い難いとして、労働能力喪失率を16%と認定しました(名古屋地裁平成25年7月18日判決・自動車保険ジャーナル63頁)。

<弁護士のコメント>

後遺障害の内容及び被害者の業務の実態から後遺障害逸失利益の労働能力喪失率の有無・程度を判断した裁判例です。足が短くなったことがどのような労働能力喪失をもたらすかを判断しています。訴訟においては、被害者から自賠責の労働能力喪失率が主張されることが多いですが、それは1つの目安に過ぎないことを確認しています。

<争点>

・後遺障害逸失利益

・自賠責の労働能力喪失率

・保険会社と被害者の示談交渉経過

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.09更新

自賠責5級2号高次脳機能障害(併合3級)を残す50歳男子板金工の後遺障害逸失利益について、就業規則上、従業員の定年が満65歳とされていたことから、65歳まで実収入、その後2年間は賃金センサス男子同年齢平均によって算定しました。本件では、原告は、定年後も同社に継続勤務する黙示の合意があったと主張しましたが、それを裏付ける証拠はなかったことから認められませんでした。なお、65歳までの15年間はライプニッツ係数を10.3797として算定し、その後の2年間については、17年に対応するライプニッツ係数11.2741から前記15年に対応する10.3797を控除した0.8944として算定しています(東京地方裁判所平成25年7月31日判決・自動車保険ジャーナル1909号51頁)。

<弁護士のコメント>

高次脳機能障害とは、脳の器質的損傷によって生じた、脳の様々な機能の低下をいいます。高次脳機能障害等の後遺障害が残存した場合「後遺障害逸失利益」の算定が問題になります。本件では、被害者が勤務する会社の就業規則をもとにし、定年までは事故前の収入を基礎とし、定年後は賃金センサスを基準に67歳までの後遺障害逸失利益を算定しています。後遺障害逸失利益の場合、被害者の勤務実態が問題になるので、就業規則の規定が証拠としての大きな価値を有します。

<争点>

・後遺障害逸失利益

・高次脳機能障害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.08更新

前方を走行していた車両(トラック)の荷台からの落石飛び石事故で車両が損傷したとして、前車運転者に対して損害賠償請求するとともに、加入保険会社に対して車両保険金を請求した事案において、最高裁判所は、前車からの落石が想定しにくいこと、再生落石が風により飛翔する事態も考えられないこと、被害車両の損傷部位が不自然であること、前車による巻き上げ、対向車からの落石の可能性も考えられないこと、事故同日に路上に再生砕石の散乱記録がないことや他に多額の保険金が支払われ、その支払状況に疑義があることなどを理由に、不法行為及び「偶然な事故」の発生を認めず、原告の請求をいずれも棄却した高裁判決への上告受理を認めませんでした(最高裁判所平成25年10月17日決定・自動車保険ジャーナル1909号1頁)。

<弁護士のコメント>

本件は、損害賠償請求とあわせて車両保険金請求もなされています。保険金の請求は、自身が契約する保険会社に対する契約責任の追及ですから、多くの場合は特に問題とはなりません。本件では、「飛び石事故」という形態について保険会社が支払を拒絶したことから訴訟が提起されています。第1審の認容判決が高裁で逆転され、最高裁では上告が受理されませんでした。高裁判決では、いわゆる「飛び石事故」について、抽象的なイメージとしてではなく、具体的事実や証拠に即した判断がなされています。

<争点>

・不法行為の存否

・偶然な事故の発生の存否

 

 

投稿者: 小島法律事務所

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