2015.05.15更新

7級請求の高次脳機能障害について、頭部外傷、意識障害、画像所見をいずれも認めず、また、高次脳機能障害をうかがわせるような症状が発現したのは、事故発生から1年以上経過してからであること等を理由に、本件事故により脳の器質的損傷が生じ、これを原因とする高次脳機能障害が発症したとは認めがたいとしました。

後遺障害として局部の神経症状(頭痛、頚部痛)が残存し、これが少なくとも14級10号に該当することについては争いがなかったところ、後遺障害逸失利益については、症状固定から弁論終結時まで6年あまりが経過しているものの依然として局部の神経症状が認められることから、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間を10年としました。さらに、被害者が大学院を卒業(23歳)していること及び上記労働能力喪失期間に照らし、基礎収入を平成19年賃金センサス男子学歴計・全年齢平均賃金554万7200円としました(東京地方裁判所平成25年9月6日判決・自動車保険ジャーナル1910号1頁)。

<弁護士のコメント>

高次脳機能障害の有無が問題になり、本件の被害者の場合、症状の経過、画像所見がない、意識障害がないといった点が判断のポイントになっています。症状の発現が遅かったり、徐々に増悪していくようなケースでは、高次脳機能障害の有無について激しく争われることになります。また、神経心理学的検査については「認知障害を評価するにはある程度適したものといえるが、行動障害及び人格変化を評価するものではない」という評価をしています。神経心理学的検査の結果だけをもって、高次脳機能障害の発生を主張するのは困難ということになりそうです。また、事故直後の意識障害や画像所見がない場合、高次脳機能障害が脳外傷によって発生したものであるか否かが問題になります。つまり、交通事故に限らず高次脳機能障害の患者はいるところ、高次脳機能障害の発生が認められたからといって、交通事故による外傷性のものであるかどうかは、また別次元の問題になるということです。

<争点>

・高次脳機能障害

・軽症頭部外傷(MTBI)

・労働能力喪失期間(14級10号)

投稿者: 小島法律事務所

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