2015.05.20更新

左鎖骨骨折後の自賠責12級5号を残す27歳女子保育所勤務の後遺障害逸失利益の算定について、①基礎収入を本件前年である平成21年の原告の年収は約200万円であるものの、本件事故当時の実収入からすると、平成22年の年収は、約250万円になる蓋然性があったとし、さらに、原告が本件事故当時27歳であったことにも鑑みて、原告の基礎収入は、250万円としました。なお、原告は、実収入額と年齢別平均賃金(賃金センサス)との差を克服するだけの事情が十分備わっていると主張しましたが、裁判所は、平成21年の収入実績にも鑑み、これを認めるに足りないとしました。また、②労働能力喪失率及び喪失期間については、原告の後遺障害の内容及び程度、特に自賠責保険における等級認定を受けた後遺障害が左鎖骨の変形障害に留まり、派生的に生じるものである左肩の痛みについては、経年により緩和する可能性が高いと考えられること、左肩の関節可動域制限は軽度のもので、症状経過にも鑑み、労働能力に影響を与えるものとは考えがたいこと、そのほか、原告の年齢、就労状況などを総合考慮して、原告の労働能力喪失率は10%、労働能力喪失期間は10年間としました(神戸地方裁判所平成25年9月5日判決・自動車保険ジャーナル1910号・50頁)。

<弁護士のコメント>

被害者の実収入が低い場合、賃金センサスによって基礎収入を認定してほしいという主張がよく出ます。本件でも原告はそのような主張をしていますが、立証が困難であり、本件でも認められませんでした。次に、労働能力喪失率及び労働能力喪失期間に関しては、裁判所は、原告の就労状況や後遺障害の内容によって、一定の制限をしています。このような制限はむち打ちの場合は通常よくみられるところですが、本件のように、明らかな外傷性の後遺障害においても制限が認められた点が重要となります。結局のところ、後遺障害等級にとらわれず、その実態や被害者の置かれている状況に即して、具体的に決する必要があるということでしょう。

<争点>

・後遺障害逸失利益(基礎収入)

・労働能力喪失率

・労働能力喪失期間

・慰謝料(犬の死亡)

投稿者: 小島法律事務所

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