交通事故による損害と消滅時効
2020.11.05更新
飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「交通事故による損害と消滅時効」の解説です
皆さんもご存じのとおり、交通事故に関する損害賠償請求権(不法行為に基づく損害賠償請求権)は、一定期間行使しないと時効により消滅してしまいます(これを「消滅時効」といいます)。
この消滅時効にかかるまでの期間は、改正前の民法では損害及び加害者を知ってから3年でした(旧民法724条)。しかし、改正民法では、原則は旧民法と同様に3年のままですが、生命または身体を害する不法行為については、5年に延長されました(改正民法724条の2)。
つまり、交通事故の場合において、死亡や怪我に伴う人身損害の部分については、消滅時効にかかるまでの期間が、従前の3年から、5年に延長されたということです。
多重事故や、後遺障害が発生するほどの被害が大きな事故である場合では、治療や交渉等が長引き、消滅時効にかかるまでの3年以内での訴訟提起に至らない場合もあります。その場合には、相手方と協議のうえで時効の延長を認めてもらったり、交渉を打ち切って訴訟を提起しなければなりませんでした。今回の改正では、これに猶予期間ができました。
ただし、この時効の規定は、前述のとおり人身損害の部分にのみ適用ですから、物損の部分には適用されません。交通事故において人損と物損の双方が生じている場合には、両者で時効にかかるまでの期間が異なりますので、注意が必要です。
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