2015.05.14更新

交差点を赤信号で横断した歩行者Xと交差道路から黄信号で交差点に進入した車両Yの過失割合について、Xは歩行者用信号が赤色だったにもかかわらず、交差道路を進行してくる車がないものと軽信して道路を横断した過失があり、他方、Yには、対面信号の信号変化を注視せず、これが黄色を示したにもかかわらず、安全に停止できない速度で本件車両を進行させて本件交差点内に進入し、かつ、前方を注視せず進行して歩行者であるXの発見が遅れたために、本件車両を同人に衝突させた過失があるとしました。そして、本件事故はXYの過失があいまって発生したものとして、双方の過失割合を50:50としました。

また、被告は、原告が脾臓摘出等後遺障害等級13級11号)による労働能力喪失率については人体に影響がないと主張しましたが、裁判所は、脾臓の摘出により、感染予防希機能が低下する可能性があることなどを考慮すると、その労働能力喪失率は、腹部機器の機能に障害を残すもの(後遺障害等級13級11号)と同等の9%と認められるとしました(千葉地方裁判所平成25年8月27日判決・自動車保険ジャーナル1909号・103頁)。

<弁護士のコメント>

脾臓がなくても人間は生きていけることから、交通事故外傷によってダメージを受けた場合に、本件のように、脾臓が摘出されることがあります。裁判所は、脾臓が摘出されたことによる労働能力の喪失を否定する被告の主張を退け、一定の割合による後遺障害逸失利益を認定しました。自賠責によって後遺障害が認定されたとしても、本件のように、後遺障害の内容によっては労働能力喪失率が問題になります。

<争点>

・過失相殺

・後遺障害逸失利益(労働能力喪失率)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.13更新

10歳児が時速30キロメートル制限のスクールゾーンの車道に進出した事案について、歩行者は、進路右方に注意を払っておらず、むしろ被告車両と衝突するまでほとんど時間はなかったことから、被害少年の不注意の程度は「甚だしい」としながら、訴訟に先立つ自賠責保険の審査においては、被害少年に対して、7割以上の過失を対象とする重過失減額が適用されていないとして、6割の過失相殺をしました。

また、将来治療費について、本件事故により脱落した2本の永久歯については、原告が成人し上顎の成長が止まって安定した頃に、インプラント治療を行うのが相当であるとして、将来治療費を認定しました(横浜地方裁判所平成25年8月8日判決・自動車保険ジャーナル95頁)。

<弁護士のコメント>

過失割合の判断の際に訴訟に先行して審査された自賠責の重過失減額の有無を参考にしています。本件のように、インプラント治療の将来的な必要性がある場合、将来治療費の請求の可否が問題になりますが、本件では、被害者が10歳であることを考慮し、将来的にインプラント治療が必要であるとして、将来治療費が認められています。

<争点>

・過失割合(重過失減額)

・将来治療費(インプラント)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.13更新

対面信号が青矢印であったために右折したタクシーと対向車線から赤信号無視で直進してきたバイクが衝突した交通事故における過失割合が問題になりました。なお、本件に先立って判断された自賠責では、バイクの運転者について傷害分20%、後遺障害分30%の重過失減額がされていました(8割以上9割未満の過失)。裁判所は、原告車が本件交差点入口手前の停止線を通過した時点では、対面する信号信号は既に赤に変わっており、又は黄色から赤に変わる間際であったと認定しました。そして、原告車が停止線を通過した後に本件交差点に進入する時点では、既に赤色信号に変わっていたとしました。 他方、本件交差点の規模・客観的や交通量に照らすと、タクシーの運転者は、交差点を右折するに当たり、対面する信号機の信号表示が黄から赤・青右折矢印に変わった直後であったから、対向車線を黄色信号から赤色信号に変わった直後に進入してくる車両の存在に注意しつつ徐行して進行すべき義務があるのに、これを怠ったものと判断しました。そして、結論として、バイクの運転者の過失割合を80%としました。

また、休業損害については、本件事故による欠勤を理由に解雇されたとの原告の主張を否認しつつも、「本件事故発生日から退職日までの101日に加え、再就職のために必要な期間として退職後90日分を休業損害算定の基礎に加えるのが相当」としました(東京地裁平成25年8月7日・自動車保険ジャーナル1909号・87頁)。

<弁護士のコメント>

右折の青矢印に従って右折した場合、対向車は赤信号で交差点に進入したことになります。したがって、原則としては、青信号矢印にしたがって、右折したタクシー運転手には過失はないことになりそうです。もっとも、裁判所は、本件事案の特殊性を評価して、タクシー運転手に2割の過失を認定しました。裁判氏は、自賠責の重過失減額を参考にして訴訟における過失割合を認定しています。

<争点>

・過失割合(重過失減額)

・休業損害

投稿者: 小島法律事務所

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