65歳男子の死亡逸失利益の算定を実収入で行った事案
2015.05.22更新
65歳男子の死亡逸失利益について「亡太郎の逸失利益の基礎収入のうち、給与収入分については、前記年247万5870円であると認めるのが相当である。この点、原告らは、亡太郎において、経理業務の知識や経験を生かして、より収入の高い仕事に転職する意思を有し、その機会も十分に見込まれたと主張し、原告花子や、これに沿う陳述をする。しかし、本件において、亡太郎が、転職のため、具体的に求職活動をしていたと認めるに足りる証拠は提出されておらず、亡太郎の転職の蓋然性を認めることは困難である。また、前記認定事実のとおり、亡太郎が前記雇用契約について平成21年8月20日以降の1年間について勤務継続の意思表示をしていたにすぎなかったとしても、そもそも、亡太郎の前記雇用契約は、単年度契約であったから、前記勤務継続の意思表示をもって、平成22年8月19日以降については、亡太郎が転職する蓋然性があったと認めることも困難である。そして、C会社における高齢者の雇用実績や、亡太郎の当時の年金収入の存在も踏まえると、結局、亡太郎において、死亡当時、年247万5870円以上に平均賃金程度の給与収入を得る蓋然性があったと認めることは困難である」とし、年金収入分については、「亡太郎の年金収入分の逸失利益のうち、亡太郎が給与収入を得られる蓋然性があった9年間(対応するライプニッツ係数は7.1078)については、生活費控除率を亡太郎の給与収入分と異にする理由はなく、50%とするのが相当であるが、亡太郎が年金収入のみを得ることとなる残りの約9年間(対応するライプニッツ係数は11.6896から7.1078を減じた4.5818とするのが相当である。)については、原告らに対する生活援助の必要性も減少しているものと推認するのが相当であるから、生活費控除率を60%とするのが相当である」としました(東京地方裁判所平成25年9月18日判決・自動車保険ジャーナル116頁)。
<弁護士のコメント>
生活費控除率の判断において、家族への生活援助の必要性が減少するとの推認をしています。
<争点>
・歩行者の過失
・生活費控除率
・遺族の固有の慰謝料
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