2015.05.23更新

左下肢機能障害及び左下肢の短縮等から自賠責併合6級後遺障害認定をうけた症状固定時36歳男子会社員の後遺障害逸失利益について「原告の左足関節の機能障害及び左股関節の機能障害は、長時間の立位・歩行等を含む下肢動作全般に支障を生じるものである。また、原告の後遺障害診断書に原告の左下肢が右下肢に比べて3.5センチメートル短い旨記載されていることに照らすと、画像により客観的に確認できる左下肢の短縮が3センチメートルに満たないものであるとはいえ、その短縮の程度が軽いものであるということはできず、原告の左下肢の短縮障害も原告の歩行等の下肢動作に相当程度の影響をもたらすものと考えられる。原告が本件事故当時従事していた業務は、鉄鋼の加工現場における複数の機械の操作等を中心とするほか、原材料や製品を運搬する場合もあるなど、立位や歩行を伴うことが多い業務であったことにも鑑みると、同業務の遂行において、原告の左下肢の機能障害及び短縮障害による影響が大きいことは明らかであり、現に原告は平成22年5月の就労復帰後は上記業務から生産管理業務に担当業務が変更されたことが認められる。また、原告の供述によれば、生産管理業務を担当していても鉄鋼の加工現場の業務を応援する場合があることが認められるほか、原告の後遺障害が歩行等の基本的な下肢動作に支障を生じるものである以上、歩行等を伴う通常の業務に従事する限り、業務の円滑な遂行に影響を生じることは免れない」としました。もっとも、労働能力喪失率については「原告の後遺障害は、後遺障害等級7級に相当する左下肢(左足関節。左股関節)の機能障害、後遺障害等級12級に該当する左下肢の醜状障害、後遺障害等級13級に該当する後遺障害左下肢の短縮障害により、後遺障害併合6級に該当するものであるが、原告の左下肢の醜状障害が原告の従事する業務の円滑な遂行に有意的な影響を与えるものとは言い難く、労働省労働基準局長通達別表に定める労働能力喪失率による場合、後遺障害等級7級の労働能力喪失率56%と後遺障害等級13級の労働能力喪失率9%の合計は65%であり、後遺障害等級6級の労働能力喪失率67%を下回る」として、65%と認定しました(名古屋地方裁判所平成25年8月5日判決・自動車保険ジャーナル1910号131頁)。

<弁護士のコメント>

足の短縮という後遺障害について、逸失利益が存在するかが問題になりました。なお、左下肢の醜状障害については、後遺障害逸失利益は否定されています。

<争点>

・後遺障害逸失利益の有無(下肢の短縮障害)

・後遺障害逸失利益の有無(下肢の醜状障害)

・労働能力喪失率

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.11更新

12級7号右股関節機能障害と13級8号右下肢短縮の併合11級を認定しつつ(行政通達によれば労働能力喪失率20%)、後遺障害逸失利益の額を認定するにあたって、後遺障害等級及び労災保険に関する行政通達が定める労働能力喪失率は、「考慮すべき一資料」とはしたものの、拘束力を認めず、、被害者と加害者の間における示談の交渉経過も同様としました。そして、原告の業務が肉体労働を中心とするものはなく、右股関節の可動域制限や右下肢短縮が、原告の業務の円滑な遂行を顕著に阻害するものとは言い難いとして、労働能力喪失率を16%と認定しました(名古屋地裁平成25年7月18日判決・自動車保険ジャーナル63頁)。

<弁護士のコメント>

後遺障害の内容及び被害者の業務の実態から後遺障害逸失利益の労働能力喪失率の有無・程度を判断した裁判例です。足が短くなったことがどのような労働能力喪失をもたらすかを判断しています。訴訟においては、被害者から自賠責の労働能力喪失率が主張されることが多いですが、それは1つの目安に過ぎないことを確認しています。

<争点>

・後遺障害逸失利益

・自賠責の労働能力喪失率

・保険会社と被害者の示談交渉経過

投稿者: 小島法律事務所

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