2015.05.27更新

54歳男子会社役員の原告が、左踵骨骨折から躁うつ病に罹患したとの事案について、証拠上、は原告に精神疾患の既往があった様子は見受けられないこと、身体疾患の経過中に抑うつ状態を来たすことはあり得ること、原告の本件事故による受傷の入院治療は相当長期に及んだこと、原告が本件事故で受傷することがなくとも躁うつ病を発症したであろうことを窺わせる事情は見受けられないこと、大学病院の医師も本件事故を契機として発症したと診断していることを理由に、原告の躁うつ病と事故との相当因果関係を肯定しました(大阪地方裁判所平成25年6月28日判決・自動車保険ジャーナル1911号91頁)。

<弁護士のコメント>

踵の骨を骨折したことが躁うつ病につながるかどうかは難しい判断になります。本件でも「一般に、左踵骨骨折等の外傷を負ったからといって、抑うつ状態や躁うつ状態になるのが通常ではない」としつつ、上記事情を考慮して、本件交通事故と傷害結果との相当因果関係を肯定しました。もっとも、素因減額を行うことでバランスをとっているものと考えられます。本件のように、交通事故によって精神疾患が発生したという主張はよくあるのですが、相当因果関係の存否の判断は非常に困難です。ただ、実際上、精神疾患の場合、治療の頻度が少ないことが一般ですから、加害者側保険会社が柔軟に対応することで解決している事案もあるのではないかと考えられます。仮に、精神疾患と交通事故の因果関係の有無について、毎回保険会社が厳密に判断することになれば、結局のところ、因果関係不明という判断にしかならざるを得ないのではないでしょうか。

<争点>

・事故と躁うつ病との因果関係

・素因減額

・会社役員の消極損害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.25更新

身体障害者手帳5級交付の72歳男子が前頭葉脳挫傷等受傷後の後遺障害認定につき、9級既存障害の素因減額が争点になった事案の判断の枠組みについて「本件の損害項目を見てみると、その内容は治療費と雑費の他は慰謝料(入通院に関するもの、後遺障害にかんするもの)のみであり、休業損害や逸失利益といった消極損害が争われているわけではない。また、金銭的にも後遺障害慰謝料がその大半を占めている一方、治療費、雑費、入通院慰謝料の各項目は相対的に小さい比重しか占めておらず、また治療期間についても、原告の主張によっても、入院3日、通院実日数17日と短く、上記のような事故態様や、脳挫傷・硬膜下血腫等の診断を受けた事案の治療として、殊更に遷延化しているとか、治療費や入通院慰謝料が膨張しているというような状況にあるわけでもなく、これらの損害項目について素因のために殊更に拡大が生じているとか、あるいは事故態様との間で著しい不均衡が生じているということはできないところであり、素因の関与はもっぱら後遺障害慰謝料について生じているものと考えられる。そして、実際問題として、治療費や入通院慰謝料について、事故による急性症状の部分、後遺障害につながる起立障害の部分、難聴の部分に明確に切り分けることも困難であることを考慮すべきである。このように考え、本件では素因減額をしなければ晃平に反すると考えられるのはもっぱら後遺障害慰謝料であるとととらえることとし」たと判断しました(大阪地方裁判所平成25年7月16日判決・自動車保険ジャーナル1911号13頁)。

<弁護士のコメント>

素因減額をする場合に、どの損害項目から減額するかが問題になりますが、本件では、損害額及び治療状況からして後遺障害慰謝料に限定して素因減額をしている点が重要です。

<争点>

・素因減額

・労働能力喪失率

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.22更新

22年前から断続的に右肩痛等で受診歴を有する62歳女子准看護師の原告が被告バス乗車時にドア開閉により受傷したとの主張につき「本件事故の前後で、頸と右肩の症状は大きく異なる。また、本件事故後のMRI撮影で、右肩について、腱の部分断裂が、滲出液増と共に認められた。したがって、原告の右肩腱板損傷が、外力の要因なく、加齢による変性によって発症したとは考え難い。そして、本件事故の頃、本件事故の外、このような症状の相異を発生させる外力の存在を認める証拠はない。よって、原告の受傷は、本件事故と相当因果関係を認める。」とし、被告の主張に対しては「外力の程度と人体への影響の関係は、複雑な要素(接触面積・衝突部位の可塑性・防御意識・頑健さ等)によって影響されるから、単純に外力の程度が小さいから人体への影響も小さいとは評価できない。」などとしました。原告の後遺障害については、自賠責の認定どおり12級6号とした上で「労働能力を、10年間、14%喪失した」と認定しました。一方、本件事故前の治療・施術が断続的であったこと、本件事故前後の症状の相異が大きいこと、他方、本件事故前の症状の軽さをいう原告の供述は信用できないばかりか意図的であって、むしろ症状が重かったことを推認させる」として、損害額全体から30%の素因減額を行いました(京都地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル64頁)。

<弁護士のコメント>

素因減額の場合、割合とともに、損害額のどの費目を減額するかが問題になりますが、本件では損害額全体から30%の素因減額をしています。

<争点>

・労働能力喪失率

・労働能力喪失期間

・素因減額

投稿者: 小島法律事務所

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