2015.06.18更新

右手拇指CRPS等併合5級後遺障害を主張する42歳男子について(CRPSについては自賠責非該当)について、自賠責要件の充足がないことから否認したもの、他覚的所見を伴う頑固な神経症状を残すものとして12級13号相当としました(大阪地方裁判所平成25年9月24日判決・自動車保険ジャーナル1913号49頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、CRPSに該当するか否かの判断基準として、自賠責(労災)基準(関節拘縮、②骨委縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3症状が、健側と比較して明らかに認められる場合に限り、後遺障害として認定される。)によるものとして、CRPSの発症を否認しています。もっとも、ギボンズスコアの9項目のうち5ないし6項目を満たし、3名以上の医師がCRPSに該当する旨の診断をしていることから、12級13号相当としました。訴訟におけるCRPSの判断が本裁判例のように自賠責基準によることとなれば、本件のように自賠責非該当となったCRPSについては訴訟上もCRPSと認定される余地はないことになります。

<争点>

・後遺障害(CRPS)

・後遺障害(右足関節障害)

・休業損害(確定申告額以上の基礎収入)

・人身傷害保険金と充当(損害額元本から)

・自賠責保険金と充当(遅延損害金から)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.17更新

自賠責14級9号に認定されたものの、CRPS発症したとして5級相当と主張した事案について、1審では、労災及び自賠責保険におけるCRPSの認定基準(①関節拘縮、②骨委縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化・皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合)に照らして、否認しました。控訴審では、自賠責基準を基本としつつ、それ以外の診断基準も踏まえて総合的に判断するとしながらも、被害者のCRPS該当性を否認しています(東京高裁平成25年10月31日判決・自動車保険ジャーナル1913号38頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、CRPSとの医師の診断があり、しかも、関節の拘縮や骨委縮があると診断書に記載されていました。しかしながら、要件を充足しているとは認められませんでした。なお、本件では被害者は左上肢の機能を全廃していることから、事故の程度は相当激しかったものと考えられます。したがって、医師の診断と合わせて考えると、被害者には、CRPSをうかがわせる何らかの症状が出ていても不思議はない考えられます。もっとも、CRPSは「疼痛」で目に見えない以上、認定基準に該当することを主張・立証することが重要になります。

本件では、810万円以上のタクシー代の請求についても否認されています。

<争点>

・CRPS

・通院交通費(タクシー代)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.08更新

バイクを運転中に自動車と衝突し、CRPSの診断を受けた原告(自賠責12級13号。ただし疼痛ではない。)について、原告は後遺障害5級相当であると主張しましたが、裁判所は、症状固定時における労働能力喪失率は12級13号事案より高いとしても、症状永続の蓋然性に疑問があり、67歳時には労働能力喪失率が14%を大きく下回り得ることを織り込んで、「全体を平準化」して67歳まで14%の労働能力喪失率を認めました(大阪地方裁判所平成25年7月11日判決・自動車保険ジャーナル1912号38頁)。

<弁護士のコメント>

本件の裁判所の判断は、2つの特徴があります。まず、原告の損害の算定を考える上で、原告がCRPSかどうかの二者択一では判断していない点です。次に、具体的な損害の判断において、後遺障害逸失利益を算定する際に、全体の平準化という視点で判断している点です。最初の点については、そもそも損害の判断は、傷病名や自賠責の判断にとらわれない法的な判断であることからすれば、むしろ当然の態度と考えられます。もっとも、2つ目の点については、非常にユニークで今後、同様の判断が示される事案が登場するか注目していきたいと思います(当職が知らないだけで以前にも同じような判断が示された事案があったかもしれませんんが。)。

<争点>

・後遺障害(CRPS)

・休業損害(個人事業主)

・意見書作成費用の相当因果関係(否定)

投稿者: 小島法律事務所

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