2015.05.27更新

原告の高次脳機能障害の主張(自賠責認定なし)について、交通事故から約5年が経過した後の診断であること、外傷性脳損傷を裏付けるような画像所見が全くないこと、本件事故直後には意識障害もなかったことから、本件事故後約5年が経過して実施された神経学的諸検査の結果を検討するまでもなく、高次脳機能障害を認めた医師の診断は十分な医学的根拠があるものとはいえず、到底信用できるものではないとして、高次脳機能障害の発生を否定しました(東京地方裁判所平成25年9月10日判決・自動車保険ジャーナル1911号104頁)。

<弁護士のコメント>

本件は事故から長期間経過後に発症したとされる高次脳機能障害の事案であり、高次脳機能障害が争われる典型例です。外傷性の脳損傷による高次脳機能障害の場合、意識障害の有無、画像所見の有無が裁判所では大きな比重をもっています。本件でも同様の視点によって判断がされています。本件でも明らかなように、事故から長期間が経過した場合には高次脳機能障害の認定は厳しいものとなります。本件では、医師の判断についても裁判所が「信用性なし」としています。つまり、医師の意見書があっても、それだけでは高次脳機能障害が認定されるものではないということになります。

<争点>

・高次脳機能障害

・因果関係

・素因減額

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.23更新

自賠責2級1号高次脳機能障害を残す69歳男子原告の症状固定後の将来介護費について「原告の懸命な努力により、症状固定後、身体的機能は相当な回復をみせ、自動車や自転車の運転が可能で、1人でゴルフ練習場に行けるなど、一定の社会的行動ができるに至っている。しかしながら、特定のゴルフ練習場に行くことができるようになったことをもって、高次脳機能障害による記憶障害や感情コントロール低下、対人技能拙劣、固執性等の症状が完全に喪失したとはいえず、原告や花子の供述等に照らすと、なお、日常生活における声かけなど、随時看視や見守りを要する状況にあると考えられる。そこで、原告の症状に照らし日額2000円の将来介護費を認める」と認定しました。

また、後遺障害逸失利益については、原告が代表取締役として1200万円の年収を得ていたとの原告の主張を認めなかった一方で「本件事故の頃にも就労意欲を有し、年齢や体調等をみても就労の蓋然性はあったといえる。そこで、基礎収入は、平成23年賃金センサス男・学歴計・年齢別(70歳~)平均賃金379万200円を採用する」とし、7年間100%の労働能力喪失を認めました。

<弁護士のコメント>

自賠責2級1号の高次脳機能障害を残す69歳男性とはいっても、本件では身体的機能について相当な回復を見せていることを考慮して、日額2000円の将来介護費が認定されました。なお、赤い本では近親者付添人による将来介護費を日額8000円としていることからすると、本件の認定額は低額といえます。

<争点>

・将来介護費

・後遺障害逸失利益

・損益相殺の方法(最高裁判所平成16年12月20日判決>

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.18更新

自賠責異議申立てで、7級4号高次脳機能障害が認定された61歳男子(異議申立て前は12級13号)につき、脳外傷による高次脳機能障害においては、通常、急性期の状態が最も悪く、時間の経過とともに軽減傾向を示すものであることを前提に、頭部の打撲があっても、その後通常の生活に戻り、外傷から数ケ月以上を経て、高次脳機能障害を思わせる症状が発現し、次第に増悪したケースは、外傷とは無関係に内因性の疾病が発病した可能性が高く、画像検査を行い、脳室拡大の伸展などの器質的病変が認められない場合には、非器質的精神障害である可能性を示唆しています。

そして、本件では、原告には、本件事故から3年半以上が経過した平成23年3月まで、脳外傷による高次脳機能障害の判断のために実施された神経心理学検査の結果が見られず、平成23年3月にされたウェクスラー成人知能検査では全検査IQが58であるなど知能低下が見られ、いまだ回復傾向が認められないこと、原告は運転手の職を続けることができず精神的な落ち込みが目立つこと、意見書においても、非器質的な精神障害が示唆されていること等に鑑み、原告の精神障害(記憶低下、言葉が直ぐに出ていない等)は、本件事故及びその後の社会心理的因子の影響による非器質的精神障害であるとしました。そして、後遺障害に関する損害の判断としては、その日常生活に支障が生じるものであるとしても、せいぜい後遺障害等級12級に相当するものでとどまるとしました(東京地方裁判所平成25年9月13日判決・自動車保険ジャーナル1910号29頁)。

<弁護士のコメント>

発症が遅かったり次第に増悪したりした場合には高次脳機能障害の有無が激しく争われます。本件では、意識傷害、神経心理学的検査、画像所見のいずれの要件からしても、高次脳機能障害が認定されるに足るものはないということになります。もっとも、高次脳機能障害の発生が否定されたとしても、交通事故後に脳損傷に類似する何らかの障害が残存する場合もあり、そのような場合に後遺障害をどのように評価するかが問題となります。本件では、高次脳機能障害を否定しつつ、非器質的精神障害(12級相当)が認定されています。このように、高次脳機能障害を否定しつつ、非器質的精神障害を認定するという判断枠組みは、裁判では珍しくはありません。ただ、本件の場合、異議申立てによって認定された高次脳機能障害を裁判所が否定した点に特徴があります。異議申立てで高次脳機能障害が認定された根拠となった意見書や診断書について、その証拠価値を裁判所が再度検討した上で、後遺障害の有無を判断しています。また、MTBI(軽度外傷性脳損傷)の主張については「医師の診断等に基づくものではなく、採用の限りではない」としています。今回の原告は、医師の意見書や診断書ではなく、自身の主張によってMTBIの認定を求めたものと思われますが、医学的判断なくして裁判所が認定するのは困難であると考えられます。

<争点>

・高次脳機能障害

・MTBI(軽度外傷性脳損傷)

・非器質性精神障害

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.15更新

7級請求の高次脳機能障害について、頭部外傷、意識障害、画像所見をいずれも認めず、また、高次脳機能障害をうかがわせるような症状が発現したのは、事故発生から1年以上経過してからであること等を理由に、本件事故により脳の器質的損傷が生じ、これを原因とする高次脳機能障害が発症したとは認めがたいとしました。

後遺障害として局部の神経症状(頭痛、頚部痛)が残存し、これが少なくとも14級10号に該当することについては争いがなかったところ、後遺障害逸失利益については、症状固定から弁論終結時まで6年あまりが経過しているものの依然として局部の神経症状が認められることから、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間を10年としました。さらに、被害者が大学院を卒業(23歳)していること及び上記労働能力喪失期間に照らし、基礎収入を平成19年賃金センサス男子学歴計・全年齢平均賃金554万7200円としました(東京地方裁判所平成25年9月6日判決・自動車保険ジャーナル1910号1頁)。

<弁護士のコメント>

高次脳機能障害の有無が問題になり、本件の被害者の場合、症状の経過、画像所見がない、意識障害がないといった点が判断のポイントになっています。症状の発現が遅かったり、徐々に増悪していくようなケースでは、高次脳機能障害の有無について激しく争われることになります。また、神経心理学的検査については「認知障害を評価するにはある程度適したものといえるが、行動障害及び人格変化を評価するものではない」という評価をしています。神経心理学的検査の結果だけをもって、高次脳機能障害の発生を主張するのは困難ということになりそうです。また、事故直後の意識障害や画像所見がない場合、高次脳機能障害が脳外傷によって発生したものであるか否かが問題になります。つまり、交通事故に限らず高次脳機能障害の患者はいるところ、高次脳機能障害の発生が認められたからといって、交通事故による外傷性のものであるかどうかは、また別次元の問題になるということです。

<争点>

・高次脳機能障害

・軽症頭部外傷(MTBI)

・労働能力喪失期間(14級10号)

投稿者: 小島法律事務所

2015.05.09更新

自賠責5級2号高次脳機能障害(併合3級)を残す50歳男子板金工の後遺障害逸失利益について、就業規則上、従業員の定年が満65歳とされていたことから、65歳まで実収入、その後2年間は賃金センサス男子同年齢平均によって算定しました。本件では、原告は、定年後も同社に継続勤務する黙示の合意があったと主張しましたが、それを裏付ける証拠はなかったことから認められませんでした。なお、65歳までの15年間はライプニッツ係数を10.3797として算定し、その後の2年間については、17年に対応するライプニッツ係数11.2741から前記15年に対応する10.3797を控除した0.8944として算定しています(東京地方裁判所平成25年7月31日判決・自動車保険ジャーナル1909号51頁)。

<弁護士のコメント>

高次脳機能障害とは、脳の器質的損傷によって生じた、脳の様々な機能の低下をいいます。高次脳機能障害等の後遺障害が残存した場合「後遺障害逸失利益」の算定が問題になります。本件では、被害者が勤務する会社の就業規則をもとにし、定年までは事故前の収入を基礎とし、定年後は賃金センサスを基準に67歳までの後遺障害逸失利益を算定しています。後遺障害逸失利益の場合、被害者の勤務実態が問題になるので、就業規則の規定が証拠としての大きな価値を有します。

<争点>

・後遺障害逸失利益

・高次脳機能障害

投稿者: 小島法律事務所

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