交通事故の被害者が示談成立後に新たな後遺障害(高次脳機能障害)が判明したとして、示談の無効を求めた事案において、裁判所は、本件事故による高次脳機能障害の発症を否認し、原告の請求を棄却しました(名古屋地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1911号・155頁)。
<弁護士のコメント>
原告は、事故直後には高次脳機能障害が発症していなかったのではなく、発症していたが気が付かなかったのだと主張しています。たしかに、高次脳機能障害は気づかれにくく、それゆえに家族からの聞き取りが重要になるという特徴があります。もっとも、①脳挫傷の存在が明確ではない、②脳萎縮の有無も明確ではない、③症状の推移が高次脳機能障害の場合と異なることを理由に、仮に高次脳機能障害を発症していたとしても、本件事故以外の原因に考える余地が大きいとしました。つまり、脳外傷による高次脳機能障害の要件を充足していなかったといえます。
<争点>
・示談書の効力
・高次脳機能障害