施術費について
2019.07.30更新
飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「施術費」についての解説です。
交通事故の治療関係費に関連していわれる「施術費」とは、主に整骨院にかかる費用のことをいい、病院の費用である「治療費」とは区別されています。施術費は医療行為に伴う費用とは区別されますから、交通事故における治療関係費として裁判所に認められるか否かは、従来から特に争いになります。
施術費が治療関係費として裁判所に認められる基準は、症状固定までに実際になされた施術であり、必要かつ相当な施術であるかという点です。これらについて、被害者側が詳細かつ具体的に主張・立証していく必要があります。ちなみに、医師による積極的な指示がある場合には、全額が認められやすい傾向にあります。
現実には加害者側としても、交通事故の被害者が実際に整骨院に通院し、費用が発生しているからには、その一部は認めるとの反論を行うことがあります。その反論にあたり、どの程度の金額が妥当であるかを算定する手段としては、2つ考えられます。1つは労災保険料金や健康保険料金の1.5~2倍程度を上限とする考え(「保険基準説」)。もう1つは、請求額のおおよそ何割かを認めるという考えです(「割合説」)。前者の「保険基準説」は計算が煩雑で、加害者側に大きな負担になります。そこで実務上多く採用されているのが後者の「割合説」です。この基準は、請求額の〇〇パーセントを認めるという割合の認定となり、加害者側の反論は非常に楽になり、裁判所にとっても柔軟な認定を可能にする点にメリットがあります。
以上の詳細については、「整骨院における施術費について」民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)下巻(講演録編)2018年が非常に参考になります。
2015年には、複数の医院や整骨院が関与し、施術費を不正請求によって騙し取ったとして、数十人の逮捕者が出る事件が発生しました。この事件を端緒にしてか、被害者が施術費を請求した際に、加害者側が不正請求であるとして、全額について因果関係を争うというケースも増えています。
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