2019.10.25更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「あおり運転の厳罰化と法整備」についての解説です。近頃新たに法整備などが検討されているようですので、前回の「あおり運転と厳罰化についてに補足して説明します。

 このごろ、あおり運転がさらなる社会的問題となっています。2017年6月に、神奈川県の東名高速道で、あおり運転の結果4人が死傷するという事件が発生しましたし、今年8月には、茨城県の常磐自動車道で、被害者の進路を遮って停車させたうえ、被害者に詰め寄り顔を殴るなどの暴行を行うという事件が発生しました。報道によれば加害者はいずれも、この事件のほかにも複数のあおり運転を行っていたようです。そして、これらの重大事件のほかにも、あおり運転の報道は後を絶ちません。

 現状は、あおり運転については、車間保持義務違反などの道路交通法違反や暴行罪などの刑法違反で立件されています。ただし、常盤自動車道事件の被疑者は、あおり運転に関して強要罪(刑法223条1項。3年以下の懲役となっており、暴行罪よりも重い刑罰です。)の被疑で再逮捕されており、頻発しているあおり運転に対し、警察も強い姿勢で臨むことが現れているともいえます。

 このような中、あおり運転を直接に禁止する規定がいまだに無いことから、これを禁止し、罰する規定を新設するべきだとの意見が多く挙げられています。早ければ今年10月に予定されている秋の臨時国会にも、あおり運転に関する法案が提出されるようです。 

また、あおり運転を行った加害者は、「危険性帯有者」に該当するとして、免許停止や免許取消の行政処分の対象になることがあります。(危険性帯有者の説明はこちら)また、警察庁も平成30年1月、あおり運転については「危険性帯有者」による行政処分を積極的に行うことを確認する通達を出しています。

投稿者: 小島法律事務所

2019.10.11更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「交差点における右直事故と不要合図禁止」についての解説です。

 自動車同士の交通事故が発生した場合においては、片方が停止中であった場合を除いては、双方ともに過失があると認定されるケースがほとんどです。そして、双方の過失割合がどうなるかは、さまざまな要素を考慮して決定されます。今回はその中でも「不要合図禁止」に焦点を絞って解説していきます。

 道路交通法では、「車両の運転者は、・・(合図が必要な行為が完了したら)・・当該合図をやめなければならないものとし、また、これらの規定に規定する合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない」と定められています(53条4項)。例えば、方向指示器(ウインカー)を消し忘れたまま走行すること(合図ミス)がこれの違反にあたります。違反者には5万円以下の罰金が科せられることがあります(120条1項8号)。

 では、この違反がある場合に、民事事件での過失割合の算定にどのような影響を与えるのでしょうか。 

 この点、民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)などでは、合図なしや合図遅れは、過失として考慮されています。ただし、ウインカーを点灯したまま走行を続けること(合図ミス)については、言及されていません。 

 他方で、この点に関して判断した裁判例としては、横浜地裁平成5年2月22日判決(事件番号:平成4年(ワ)465号・平成4年(ワ)1338号)があります。

 この事件は、同幅員で信号のない交差点において、交差点内に先に進入し右折待機をしていた車両が、走行してきた対向車がウインカーで左折合図を出していたため、先に右折を開始したところ、合図に反して直進したために衝突したという事案です。

 その中で裁判所は、原告車(直進車)がウインカーを点滅させながら走行していたことから「被告(右折車)は原告車が左折するものと信頼して発進したが、案に相違して原告車が交差点を直進したため衝突したものである」として、事故の過失割合は右折車:直進車=30:70であると判断しました。

 この点、同幅員の右直事故は、右折車:直進車=70:30の過失割合が基本であると考えられていますから(赤い本上巻(基準編)2019年版・313頁 図〔46-1〕)、その責任が逆転している点で特殊な判決です。

 ただし本件は①右折車が直進車より先に交差点に進入して既に右折待機の状態だったという事情があり②事件自体も30年近く前のもので③この裁判例の他には合図ミスをここまで大きな過失であると捉えた事案が見当たらず④通常は対向車両同士では左折優先であること等からすると、この判決は、合図ミスの事案に関するリーディングケースとはいえない、特殊な事案であると考えられます。

投稿者: 小島法律事務所

2019.10.04更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「特殊な改造の施された車両の時価額」についての解説です。

 以前の「車両時価額の算定方法の項目でも解説したとおり、車両の時価額を算定するかは容易ではありません。この点、特殊な改造が施された車両の時価額についても、大きな争いになることがあります。

 これについて参考になる裁判例のひとつに、大阪地裁平成8年3月22日判決(事件番号:平成7年(ワ)6861号)があります。

 この事件は被害者が300万円で購入し、さらに280万円と140万円をかけて、塗装、マフラー、エンジン等に改装が施された高級外車が、購入から約5年後、道路脇に駐車されていたところに加害車両が追突したというものです。被害者は加害者に対して、その車両の損害額として、改装を含めた時価相当額である400万円を請求しました。

 それに対して裁判所は、「各改装は専らカーマニアとしての趣味を満たす目的でなされたものと認められる」から、被害車両に「客観的価値の増加があったとは認められない」と判示し、同じ高級車両の他の市場価格なども参考にしつつ、原告の車両購入費用300万円の6割である180万円のみを車両の損害として認め、改造費用を認めませんでした。 

 裁判所としては、車両に相当の金額を用いて改造・改装が加えられているとしても、それが個人の趣味趣向に基づくものに留まるものである場合には、車両の時価額を向上させる事情としてあまり考慮しないという姿勢をとったものだといえるでしょう。

 また、この裁判例からすると、例えば車高を低くしたりとか、マフラーを改造したりすること等も個人の趣味に基づくものといえますから、事故の際には、その改造費用について裁判所は損害として認めない可能性があるといえます。

 ただし、この裁判例自体が20年以上前の事案ですし、改造車であってもその改造費用まで損害と認められることもありますから、現実にはケースバイケースです。

投稿者: 小島法律事務所

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