2019.12.27更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「デモ行進と道路交通法」についての解説です。 

 今年、香港でいわゆる逃亡犯条例に対する反対に端を発したデモ行進が行われているのは、皆さんもご存じだと思います。また日本国内でも、デモ行進が行われたとの報道がされることもあります。 

 では、デモ行進は、いつでもだれでもやっていいものなのでしょうか。これについては、デモ行進の多くが道路を一時的に利用・占有するものであることから、道路交通法との関係が特に問題となります。以下では、福岡県の場合を例に考えてみます。

 まず、道路交通法76条で、道路上では絶対的に禁止される事項が列挙されています。しかし、これにはデモ行進は含まれていません。

 次に、同法77条1項において、同項各号の行為を行う者は、警察署長の許可を得なければならないと定められており(道路使用許可といいます)、同項4号には「・・・道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定め」た場合が挙げられています。

 そしてこの「必要と認めて定め」た例として、福岡県では、「道路において、祭礼行事、競技会、仮装行列、パレード、集団行進その他これに類する行事又は行為をする」場合に、許可を要するとされています(福岡県道路交通法施行細則22条1号)。

 デモ行進はこの「集団行進」に該当しますから、つまるところ、福岡県内において道路上でデモ行進を行うには、警察署長の許可が必要とされるのです。

 そして、許可を求めたデモ行進が①申請内容が現に交通の妨害のおそれがない②許可に付された条件に従った場合に交通の妨害のおそれがない③交通妨害のおそれがあるが公益上・慣習上やむを得ない場合のいずれかに該当する場合には、許可がなされることになっています(77条2項各号)。ちなみに、これらの規定からすると、文言上は「許可」とあるものの、講学上は許可制ではなく届出制となっていると考えられます。 

 この手続きに反して、届けを出さずにデモ行進を行った場合には、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます(道路交通法119条1項第12号の4)。 

 ちなみに、道路使用許可と似たような言葉に道路「占用」許可というものがあります。これは、道路の一部分(上空や地下も含む)を継続的に使用すること(例えば、電柱や標識を埋めたりすること)をいいます(道路法32条以下)。デモ活動に関しては道路を占有することは通常はないので、道路占有許可は必要ありません。

投稿者: 小島法律事務所

2019.12.20更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「公用車と自動車保険」についての解説です。

 今年の10月16日、愛知県豊川市役所の公用車が車検切れのまま約1か月使用されていたとの報道がされました。車検切れの状態で約250kmを走行したそうです。

 この点、市役所の公用車や、警察のパトカー、自衛隊の車両などには、自動車に関する任意保険がつけられているのでしょうか。また、そもそも自賠責保険はついているのでしょうか。

 まず、自賠責保険は「自動車」を運行するすべての人・団体が加入することが義務付けられています(自賠法3条本文)。これに違反すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰則が科せられます(同法86条の3第1号)。そして、「自動車」とは、簡単にいうと、陸上を走行するエンジン付きの車両のことをさします(自賠法2条1項、道路運送車両法2条2項)。

 これらの規定から、市役所で使用される公用車も警察で使用されるパトカーも「自動車」なので、自賠責保険に加入が義務付けられています。ただし、自衛隊の使用する戦車や装甲車などの特殊な車両に関しては、法律上「自動車」と扱われませんから(自衛隊法114条1項、自衛隊法施行令157条)、自賠責への加入を免除されています。もちろん、自衛隊の保有する車両でも、一般の車両はこの限りではありません。

 次に、任意保険に加入しているかどうかですが、どうやら各自治体によって異なっているようです。

 例えば福岡県の公用車(警察車両含む)は一般入札により、令和元年10月現在、あいおいニッセイ同和損保と任意保険を契約しています。

 他方で、公用車の保険料は年間で数百万円から数千万円にまで登るケースもあるようですから、任意保険に加入していない自治体もあるかもしれません。 

 ちなみに、自衛隊の特殊車両は自賠責保険に加入していないのと同様、任意保険にも加入していない(必要がない・できない)ようです。

投稿者: 小島法律事務所

2019.12.06更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「パトカーの追跡行為と事故の発生の責任」についての解説です。 

 今年の10月13日未明、飯塚市で、スピード違反を理由にパトカーから追跡を受け逃走していた乗用車が、他の走行していた自動車に衝突し、その車に乗っていた女性がけがをするという事件が発生しました。事故の原因は調査中とのことです。

 この点、事故原因は調査中ではありますが、逃走車両を運転していた人に民法上、自賠法上の損害賠償責任があることはあきらかだと思います。しかし、警察から逃走を図るような乗用車の場合、保険を使えない場合や、そもそも盗難車であったなどの事情で、裁判等で損害賠償請求が認められるとしても、実際に回収できないケースも考えられます。

 では、そのような場合に、逃走車を追跡していたパトカーに対して、何らかの責任追及ができる可能性はあるのでしょうか。 

 この点については、最高裁昭和61年2月27日判決(民集40巻1号124頁)が参考になります。この事件は、冒頭の飯塚市の事件と同様、パトカーから追跡を受けた被疑車両が、他の車両に衝突したため、衝突された被害者が、パトカーの追跡が違法であったとして県を相手に損害賠償を提起したという事件です。

 その事件において最高裁は、パトカーの追跡が違法であるというためには、「右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要するものと解すべきである」と判示しました。

 要するに、パトカーの追跡が、不必要・不相当であるような事情がある場合には、当該追跡が違法となり、損害賠償責任を負うことがありうるということです。

 よって、最高裁判決に照らすと、冒頭の飯塚市の事件のようなケースでは、パトカーの追跡が不必要・不相当といった事情がなければ、県警察の責任主体である県に対する責任追及は、難しいと言えるでしょう。

 ちなみに、県を相手にした訴訟を起こす場合には、国家賠償請求を提起する必要があります。

 

投稿者: 小島法律事務所

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