2019.08.22更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「ながら運転」の厳罰化についての解説です。 

 近年、スマホが普及したのも原因の一つかと思いますが、自動車による「ながら運転」による事故が増加しています。

 「ながら運転」とは、道路交通法によれば、「自動車又は原動機付自転車・・を運転する場合に・・当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置・・を通話・・のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置・・に表示された画像を注視」することであると規定されています(71条5号の5)。「持ち込まれた画像表示用装置」にはスマートフォンが含まれます。

 以上を簡単に説明すると、「ながら運転」とは、スマートフォンやカーナビを操作したり、見たりしながら運転することです。よって、スマートフォンをハンズフリーにしての通話は、厳密には「ながら運転」には該当しないといえます(ただし、条例によって規制されている都道府県もあります)。

 警察庁のデータによると、「ながら運転」が原因の事故は、平成20年からは平成30年にかけて2倍以上に増加しています。例えば、平成26年には、トラックを運転中にスマホ向けのゲームをしていた男性が小学生をはねて死亡させるという事故が発生しています。

 この「ながら運転」自体は、平成11年の道路交通法改正で規制が開始されました。しかし現在、上に述べたような事故の増加を受けて、2019年5月、「ながら運転」の罰則を強化する改正案が衆議院を通過しました。

 すなわち、現行法では「ながら運転」そのものは5万円以下の罰金(道路交通法71条5号の5、120条11号)ですが、これが6か月以下の懲役または10万円以下の罰金に引き上げられます。さらに、「ながら運転」によって事故を発生させるなど「公共の危険」を発生させるに至った場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(119条9号)だったものが、1年以下の懲役または30万円の罰金に引き上げられます。

 つまり、今後は単なる「ながら運転」でも懲役刑を科される可能性があるということです。またこれに加えて、違反点数と反則金の上限も引き上げられます。  

 ちなみに、この「ながら運転」は、自転車でも条例によって禁止されているところもあります。福岡県では、違反者には5万円以下の罰金に科せられます(福岡県道路交通法施行細則第14条3号、道路交通法120条1項9号)。

投稿者: 小島法律事務所

2019.08.09更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「車両の時価額」についての解説です。

 中古車両が交通事故によって全損となった場合には、事故前の車両取引価格(車両時価額+買替諸費用)が損害額となるのですが、そのうちの車両時価額を算定するのは困難となる場合があります。

 この点については実務上、昭和49年の最高裁判決(最判昭和49年4月15日民集28巻3号385頁)をベースに考えるのが主流です。この判例によれば、自動車の取引価格は「原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によつて定めるべきであり、右価格を課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によつて定めることは、加害者及び被害者がこれによることに異議がない等の特段の事情のないかぎり、許されないものというべきである」と判示されています。つまり、車両時価額は、全損となった車両と同種同等の車両の市場価格によって決定されるのが原則となっています。市場価格そのものは、レッドブック等の中古車情報誌のほか、専門業者の見積もり、インターネットサイトの中古車販売情報の写し等をもとに、最終的には裁判所が認定します。

 上記の車両時価額の算定方法は、判決でも「原則」といわれているとおり、例外があります。例えば、この判決でも指摘されているとおり、被害者と加害者双方の同意がある場合が挙げられます。そのほかに、他の裁判例によると、自動車の初年度登録から長期間が経過し車両の中古車市場での価格を算定する資料がない場合(東京地判平成13年4月19日交民集34巻2号535頁)もあります。そのほかにも、発売から間もない新車、特殊な車両や改造車など、中古車の市場価格が形成されていない場合も考えられます。

 このような例外的な場合には、税法上の概念である減価償却の考え方によって損害額が算定される場合があります。この点、減価償却には「定率法」と「定額法」の2つの方法があり、裁判ではいずれが採用されるかがさらなる問題になりえます。この点について、定率法を採用したと思われる裁判例は散見される(京都地判平成18年4月28日自保ジャ1651号21頁など)一方で、定額法を用いた裁判例は見当たりませんでした。

投稿者: 小島法律事務所

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