2020.12.24更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自転車によるあおり運転」についての解説です。

 埼玉県において10月、道路交通法であおり運転の処罰規定が新設されて初めて、自転車によるあおり運転を行ったとして通称「ひょっこり男」と呼ばれる男性が逮捕されました。11月には同罪で起訴もされています。

 この事件は、自転車を運転していた男性が、道路を蛇行運転したうえで、対向車線を走る車の前に飛び出し、対向の車を急停車させるなどしたものです。

 道路交通法では、中央線のある道路の反対車線にはみ出すのは通行区分違反(17条4項)です。同項の対象は「車両」ですが、自転車は軽車両(2条11号イ)という「車両」(2条8号)ですから、もちろん違反の対象となります。

 そして、他の車両等の通行を妨害する目的で、車両が通行区分違反を行うなどのあおり行為を行った場合、いわゆる「あおり運転」として処罰の対象となりえます(117条の2の2第11号イ)。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 報道された映像を見る限りでは、今回逮捕された男性は、故意に反対車線の車両の前に出ているように見受けられますから、「他の車両等の通行を妨害する目的」があったことが伺われます。

 今回のように、あおり運転として禁止されている行為の多くは、自動車のみならず、自転車を運転する人もその対象になります。また、あおり運転といえば後方から相手に急接近するような形態を思い浮かべますが、対向車線などからのあおり行為も、あおり運転に該当することがあります。

自転車を運転する方も、これらの点に留意して、気を付けて運転するべきだといえます。

 ちなみに、仮に自転車のあおり運転が原因となって自動車との衝突事故が発生し、自転車に乗っていた人が怪我をしたような場合には、自動車側の過失が否定され、自転車側からの賠償請求はできないという事態に陥る可能性もありえます。過去には、あおり運転を行った者からの損害賠償請求が否定された裁判例もあります(詳しくはこちら)。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.17更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自転車保険の義務化」についての解説です。

2020年10月から、福岡県で条例(正式名称は福岡県自転車の安全で適正な利用の促進及び活用の推進に関する条例です。以下では、単に「福岡県自転車条例」といいます。)により自転車保険の加入が義務化されました(福岡県自転車条例17条1項)。自転車保険の加入義務化は、2015年に兵庫県が取り入れたのを皮切りに、大阪府、滋賀県、東京都、神奈川県など20以上の都府県と政令市でなされています。

 この点、自転車条例で加入が義務付けられている自転車保険は、「自転車保険」という名称の保険に限らず、個人賠償保険や自動車保険の特約など、広く自転車事故による事故の被害者の損害を賠償しうる保険・共済であればよいとされています(福岡県自転車条例2条13号)。

 また、自転車保険に加入すべき義務者は①自転車を使用する者(未成年の場合は親権者)(福岡県自転車条例17条1項、2項)②事業に際し労働者に自転車を使用させる事業者(同3項)③自転車貸付業者(同4項)となっています。

 ただし、上述した義務に違反したからといって、何らかの罰則が設けられているわけではありません。

 とはいえ、自転車での事故は、時として1億円にも上る賠償責任が生じることもありますから、自転車保険に加入されていない方は、加入をされた方がよいと思います。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.17更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自賠責の20万円ルール」についての解説です。

 自賠責の保険金が被害者の過失によって減額される場合(重過失減額)は、通常とは異なる特殊な減額の計算がされます(詳しくは前回の記事をご参照ください)。

 そして、自賠責の保険金が、重過失減額の対象となる場合に、もう一つ特殊な点があります。いわゆる「20万円ルール」と呼ばれるものです。

 被害者が怪我をして人身損害が生じた場合、被害者の過失割合が7割以上10割未満の場合には、自賠責から受け取れる保険金の金額は、2割減になるのが通常です。ただし、①損害額が20万円を下回っている場合には、減額されずまた②減額によって20万円を下回る場合には、20万円が支給額になるというルールがあります。これが、通称20万円ルールと呼ばれるものです。

 自賠責において、この20万円ルールと重過失減額の制度があることによって、被害者請求と裁判とで、金額に差が生じることがあります。例えば、被害者の怪我での人身損害が15万円、過失割合が7割の事故の場合、自賠責に請求した場合には、回収できる金額は15万円全額になる可能性が高いのに対し、裁判で請求した場合には、15万円から過失の7割分差し引かれるので、4万5千円が認められるに過ぎない、という結果が生じることがあります。

 つまり、場合によっては、裁判ではなく、自賠責への請求のほうが得になる場合もありうるということです。

 ただし、弁護士であっても、交通事故分野に明るくない方は上記の自賠責のルールを知らないこともありえます。そのような場合には、結果的に被害者の方が損をすることになりますから、交通事故の分野は、経験と実績のある弁護士へのご相談をお勧めします。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.17更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「人身傷害保険」についての解説です。

 自動車事故の際に使用される任意保険のサービス内容は、大きく分けると、①自分や同乗者の(自分側の)損害を補償するものと②相手方への損害を代わって賠償するものとに分けられます。

 このうちの前者の1つに、「人身傷害保険」という保険商品があります。この保険は、保険契約者やその同居の家族などの一定範囲の人が交通事故によって怪我や死亡した場合に、自身の契約している自分側の保険会社が、その損害を補償するというサービスです。

  この保険が登場したのは比較的最近で、平成10年ころです。それまでの自動車保険は、相手に損害を補償するという点にのみ特化していましたが、このころから自分の損害を自分の契約している保険会社が補償するという新たな形の保険商品が誕生しています。

 その人身傷害保険については、具体的な内容は各保険会社の約款によって差はあるものの、ほとんどに共通して①使用しても等級が下がらない②相手の無保険や自身の過失といった事情に左右されにくい③簡易迅速に補償を受けられるという各メリットがあります。

 ②については、自身の契約する保険を使用するというものですから、相手が無保険や所在不明の場合でも、自身にも事故発生について過失がある場合でも、約款に定められた支払基準に基づいた保険金が受け取れるのが原則になっています。

 ③については、通常、相手方の保険会社が支払いを行う場合には、示談が成立するか、もしくは裁判所で判決が確定するまで、支払いがされないのが原則です(相手の保険会社による「一括対応」や「内払い」といった先払いの制度もありますが、お互いの主張が対立しているような事案では期待できません)。 

 これに対して、人身傷害保険を請求する場合、請求先は自分が契約している保険会社ですから、支払いは迅速に行われます。 

 以上のように、人身傷害保険は、被害者加害者双方の過失認識に差がある場合などに、非常に使い勝手の良い保険商品であるといえます。ただし、比較的新しく、複雑な点もあるので、すべての弁護士が十分に知識・経験を有しているとは、言い難いと思います。 

 当事務所の弁護士は、このような保険の知識に精通しておりますので、お気軽にご相談ください。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.03更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「あおり運転者に対する損害賠償請求」についての解説です。

 昨今、あおり運転に対する処罰規定が創設されるなど、あおり運転に対する関心が高まっています。

 あおり行為によって引き起こされた交通事故(たとえば、被害車両の後方から加害車両が車間距離を保持せず、急接近を繰り返したうえで、加害車両が被害車両の追突するような事故)が発生した場合、もちろん被害者は加害者に対して損害賠償を請求することができます。

 交通事故における加害者から被害者への賠償は、加害者が任意保険に加入している場合、その保険会社によって代わりになされるのが通常です。しかし、上述のようなあおり行為が原因となって事故が発生した場合には、加害者側の保険会社は、「故意免責」を理由として、被害者への保険対応を拒否する可能性があるのではないか、という疑問が生じます(現実にはあまりないとは思いますが)。

 まず、故意免責とは、保険金支払い事由にあたる事故が、被保険者(加害者)の故意によって生じた場合に、保険会社が保険金の支払いを拒否できるというものです(保険法17条1項、各種保険約款参照)。

 上述のような急接近を繰り返すようなあおり行為は、故意になされるものと考えられますから、そのあおり行為が原因で事故が発生した場合には、加害者側の保険会社は、この故意免責の主張をして、保険対応を拒否するという可能性が一応は考えられるのです。

 そして、以上の故意免責について生じる論点に関し、判断された最高裁の判例(最高裁平成5年3月30日判決(民集47巻4号3262頁))があるので要旨をご紹介します。

 この事件は、加害者が車両を発進させる際に、あるトラブルの相手方であった被害者が、当該車両の扉を開けようとしたり、フロントガラスをたたくなどしたために、加害者が車両を発進させたところ、これにより被害者が転倒し、数日後に死亡したという事件です。そして、被害者の遺族が加害者側に損害賠償請求を行ったところ、加害者側の保険会社は故意免責を主張して賠償を拒否したというものです。

 この事件において裁判所は、①未必の故意であっても故意免責の場合の「故意」に含まれることを前提にしつつ②任意保険契約当事者の意思解釈からすると、故意を原因とする事故においても、予期しなかったような損害が発生した場合には、免責の範囲外である、との判断を行いました。

 つまり、上記判例をあおり行為にも引き直して考えると、あおり行為を原因とする事故が発生した場合には、あおり行為の故意と、あおり行為による事故発生及び被害の範囲を加害者が予期していたかという2つの観点から、保険会社の故意免責の主張が成立するかが検討されることになるといえます。

 したがって、あおり行為が原因となった事故が発生した場合でも、それをもって直ちに故意免責が適用されるわけではないということになります。

 当職の実感としては、実際に加害者側の保険会社が故意免責を主張するケース自体、稀だと思います。被害者と加害者が通謀して事故を起こすような(いわゆる、つくり事故の)ケース等の場合には故意免責が主張されますが、その場合には、ほとんどの加害者側の保険会社は、綿密な調査を行っていると思います。

 ちなみに、故意免責に該当し、加害者側の保険会社が保険対応を行わない場合には、自賠責に対する被害者請求のほか、加害者本人から賠償を受けたり、自身が加入する任意保険(人身傷害保険等)から一定の補償を受ける等の手段が考えられます。

投稿者: 小島法律事務所

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