2021.04.30更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「黄点滅信号の規制」についての解説です。

 

【黄点滅信号の規制】
 交差点において、一方は黄点滅を、交差道路には赤点滅の表示のある信号を見かけることがあると思います。

 道路交通においては、赤点滅は「一 歩行者は、他の交通に注意して進行することができること。二 車両等は、停止位置において一時停止しなければならないこと。」と、黄点滅は「歩行者及び車両等は、他の交通に注意して進行することができること」との意味があります。(道路交通法施行令2条1項)

 そして、黄点滅について、刑事の裁判例ではありますが、裁判例では「黄色点滅信号の意味するところは、点滅のない黄色の点灯の信号と異なり、自動車運転者は必ず徐行、停止しなければならないというものではなく、四囲の交通の状況に気を配り、人車と接触のおそれがないときは、そのままの速度で直進することを妨げないが具体的状況の推移に照応し適宜の措置にでるため、他の交通に十分意を配り、交差点内で他の車両等との接触、衝突等事故発生のおそれがある場合には、交差点内において徐行するなどして極力これを回避するよう十分注意しなければならないとするにある。」と判示しているものもあります(東京高等裁判所昭和43年4月9日判決)。

 したがいまして、交差点内に、黄点滅信号が存在している場合、交差点の状況によっては、黄点滅信号側の運転者に対しても、徐行義務等が課される可能性があります。

 

【裁判例】
 ここで、点滅信号のある交差点において、交差点の状況に応じて、黄点滅信号側の運転者に、減速・徐行義務を課した裁判例をご紹介いたします。

『広島地方裁判所平成2年9月26日判決自保ジャーナル・判例レポート第92号-No,8』

 当該裁判例の事例は、広島市内の点滅信号のある交差点内において、制限速度の倍以上の速度で走行していた黄点滅信号側の乗用車が、そのままの速度で交差点に進入し、赤点滅信号の交差点を横断していた自転車に、衝突した事例です。

 当該裁判において、裁判所は、本件交差点の状況を「本件道路から本件交差点の見通しは、左方の本件交差道路方面の見通しが悪く、同様に、交差道路からも、本件道路の右方の見通しが悪かった。」と、本件交差点の左方の見通しが悪いことを認定しました。なお、本件道路は、乗用車が進行していた道路で、交差道路は、自転車が進行していた道路になります。

 そして、本件交差点の状況を踏まえて、裁判所は、「対面信号が黄色点滅であったとしても、本件交差点の左方の見通しが悪かったのであるから、減速・徐行する義務があったのにこれを怠り」と判示し、本件交差点に進入するにあたって、黄点滅側を走行していた乗用車の運転者に、減速・徐行義務が課されていたことを認めました。

投稿者: 小島法律事務所

2021.04.16更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「後遺障害逸失利益」についての解説です

【後遺障害逸失利益とは】

 交通事故で後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害により労働能力が一定程度制限されることがあります。
 労働能力が制限されると、後遺障害がない健康体で働き続けた場合と比べて将来受け取ることができた収入が減少してしまいます。
 この様に、後遺障害によって減少した利益を後遺障害逸失利益といいます。

【後遺障害逸失利益の算定方法】

1 後遺障害逸失利益の算定方法

 後遺障害逸失利益は、

 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数


 で算定されます。

2 基礎収入

 逸失利益選定の基礎となる収入は、原則として事故前の現実の収入を基礎とします。
 ですが、将来、現実収入額以上の収入を得られる立証があれば、その金額が基礎収入となります。
 なお、現実の収入が低く、賃金センサスの平均を下回っている場合には、将来、平均賃金を得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入として算定することもあります。

3 労働能力喪失率

 労働能力の低下の程度については、労働省労働基準局長通牒の別表労働能力喪失率表が参考にされます。そして、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に評価して評価されます。

4 労働能力期間に対応したライプニッツ係数

(1)ライプニッツ係数について

 後遺障害逸失利益は、将来、その年で得る予定の金銭を、一括前払いで受け取るものです。そして、金銭は、1年後と10年後では、その価値が異なります。そして、後遺障害逸失利益を請求する場合には、将来の利息も同時に受け取ることになります。そのため、この利息を控除する必要があるので、この控除のことを中間利息控除といいます。

 そして、労働能力喪失期間の中間利息を控除したものを数値化したものが、ライプニッツ係数となります。

(2)労働能力喪失期間について

 労働能力喪失期間の始期は、症状固定日になります。未就労者の場合には、原則として、始期は、18歳となります。なお、大学卒業を前提とする場合には、始期は、大学卒業時とされています。
 一方で、労働能力喪失期間の終期は、原則として67歳とされています。

 また、症状固定時の年齢が67歳をこえている人の場合には、原則として簡易生命表の平均余命の2分の1が労働喪失期間となります。

 症状固定時から67歳までの年数が、簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる人の場合には、原則として平均余命の2分の1が労働能力喪失期間となります。

 なお、労働能力喪失期間の終期は、職業、地位、健康状態、能力等により原則と異なった判断がなされる場合もあります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.04.02更新

 HONDAが、令和3年3月5日に、自動運転レベル3搭載の自動車「LEGEND」を発売(現在はリース専用車両のみ)したことで、自動車業界が賑わっています。
今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自動運転と道路交通法の改正」についての解説です。

【自動運転のレベルについて】
 自動運転のレベルの定義については、日本では、アメリカの「自動車技術会」(SAE)が定義したレベル0から5までの6段階のカテゴリが用いられています。
そして、自動運転レベルは、ドライバーと車両の運転比率や走行可能エリアの限定などによって、以下のとおり、レベル0からレベル5までの6段階に分類されています。

〇レベル0【運転自動化なし】
 ドライバーが全ての運転操作を実行。
〇レベル1【運転支援】
 システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に行う
〇レベル2【部分運転自動化】
 システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う。
〇レベル3【条件付運転自動化】
 決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。ただし、運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない。
〇レベル4【高度運転自動化】 
 決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。
〇レベル5【完全運転自動化】
 条件なく、全ての運転操作を自動化。

【自動運転に対する法整備】
 これまでの日本の道路交通法では、自動運転レベル3を超える車両に対する規定が存在していませんでした。
 令和元年に改正された「改正道路交通法」は、自動運転レベル3車両の実用化に対応したもので、主な改正点は以下の3点になります。

1 自動運行装置の定義等に関する規定の整備
 道路交通法2条17号の規定により、「運転」に「自動運行装置」を使用した走行、いわゆる自動運転が含まれることになりました。
 これにより、一定の条件下で、「レベル3」の自動運転が道路上で可能となります。

2 自動運行装置を使用する運転者の義務に関する規定の整備
 道路交通法71条の4の2第1項の規定により、自動運行装置に係る使用条件が満たされない場合には、自動運行装置での運転が禁止され、運転者が運転を引き継がなければならないことが明記されました。

 また、同条第2項の規定により、自動運行装置に係る使用条件が満たされる自動運行装置での運転下では、道路交通法71条第5号の5の適用がないことが明記されました。
 これにより、自動運転が許される条件下での自動運転中は、携帯電話などを使用が禁止されないことになります。

3 作動状態記録装置による記録等に関する規定の整備
 道路交通法63条の2の2第1項の規定により、作動状態記録装置が不備な状態での運転が禁止されることが明記されました。

 また、同条第2項の規定により、自動運行装置を備えている自動車の使用者に対して、当該装置に記録された記録の保存義務が存在することも明記されました。

 この規定は、自動運行装置を備えた自動車が、交通事故等にあったとき、その交通事故等の原因究明などに対応したものと考えられます。

投稿者: 小島法律事務所

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