2020.10.08更新

  飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「あおり運転行為者による損害賠償請求」についての解説です。

 昨今、皆さんご存じのとおり、あおり運転が社会問題になっており、あおり運転に対する罰則の法制化もされ、広く議論がされています。

 今回は、あおり運転によって発生した交通事故について、民事訴訟で争いとなった興味深いケースをご紹介します。

 それは、名古屋地裁平成28年1月22日判決(交民49巻1号72頁)です。結論だけ先に紹介すると、あおり運転を行った者による損害賠償請求は、認められないという判断が下されました。

 この事件は、片側3車線道路を普通貨物自動車Y(以下、「Y」とします)が走行していたところ、後続を走行していた普通貨物自動車X(以下、「X」とします)がYの後ろに付き、左右に蛇行したり、前照灯をハイビームに上げ下げするなどしてあおり運転を行ったので、Yが別の車線へと退避すると、Xも車線変更してYを追い抜き、そのままYの前方へと割り込み、急ブレーキをかけ、これによりYがXに追突したというものです。あおり行為を行っていたXは、この事故による損害をYに請求して裁判になりました。

 この点、車と車の追突事故においては、追突した車両側の過失が大きいとされるのが一般的です。その一般論からすると、今回のケースではYがXに追突する形となっていますから、Yに不利な判断がされることも予想されます。

 しかしながら裁判所は、Yの過失も否定しがたいものの、本件の事故の発生は、XがYの前に割り込んだり急ブレーキをかけたりして、故意に誘発されたものであり、その事故結果もXが予測しえた範囲内であるから、「本件事故について、故意に道路交通法違反の運転等をした原告(X)が、被告(Y)の道路交通法違反の過失責任を問うことは、信義則上、許されない」として、Xの損害賠償請求を否定しました。 

 この判決については、あおり運転が事故発生の主要な原因である以上、その責任を負うべきはあおり運転を行った運転者であることからすれば、妥当なものであるといえます。

 また、本件の裁判所の認定によれば、追突したY側にも一定の過失があるとされているので、そのままではXの請求が一部は認められてしまう可能性があるところ、裁判所が信義則(民法1条3項)という法の一般原則を認めることで妥当な解決を図った点は特殊だといえます。

投稿者: 小島法律事務所

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