2019.10.11更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「交差点における右直事故と不要合図禁止」についての解説です。

 自動車同士の交通事故が発生した場合においては、片方が停止中であった場合を除いては、双方ともに過失があると認定されるケースがほとんどです。そして、双方の過失割合がどうなるかは、さまざまな要素を考慮して決定されます。今回はその中でも「不要合図禁止」に焦点を絞って解説していきます。

 道路交通法では、「車両の運転者は、・・(合図が必要な行為が完了したら)・・当該合図をやめなければならないものとし、また、これらの規定に規定する合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない」と定められています(53条4項)。例えば、方向指示器(ウインカー)を消し忘れたまま走行すること(合図ミス)がこれの違反にあたります。違反者には5万円以下の罰金が科せられることがあります(120条1項8号)。

 では、この違反がある場合に、民事事件での過失割合の算定にどのような影響を与えるのでしょうか。 

 この点、民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)などでは、合図なしや合図遅れは、過失として考慮されています。ただし、ウインカーを点灯したまま走行を続けること(合図ミス)については、言及されていません。 

 他方で、この点に関して判断した裁判例としては、横浜地裁平成5年2月22日判決(事件番号:平成4年(ワ)465号・平成4年(ワ)1338号)があります。

 この事件は、同幅員で信号のない交差点において、交差点内に先に進入し右折待機をしていた車両が、走行してきた対向車がウインカーで左折合図を出していたため、先に右折を開始したところ、合図に反して直進したために衝突したという事案です。

 その中で裁判所は、原告車(直進車)がウインカーを点滅させながら走行していたことから「被告(右折車)は原告車が左折するものと信頼して発進したが、案に相違して原告車が交差点を直進したため衝突したものである」として、事故の過失割合は右折車:直進車=30:70であると判断しました。

 この点、同幅員の右直事故は、右折車:直進車=70:30の過失割合が基本であると考えられていますから(赤い本上巻(基準編)2019年版・313頁 図〔46-1〕)、その責任が逆転している点で特殊な判決です。

 ただし本件は①右折車が直進車より先に交差点に進入して既に右折待機の状態だったという事情があり②事件自体も30年近く前のもので③この裁判例の他には合図ミスをここまで大きな過失であると捉えた事案が見当たらず④通常は対向車両同士では左折優先であること等からすると、この判決は、合図ミスの事案に関するリーディングケースとはいえない、特殊な事案であると考えられます。

投稿者: 小島法律事務所

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