2015.06.04更新

神奈川県在住の原告が通院していた栃木県の整骨院の通院交通費について、同時に他の接骨院でも施術を受けていたことや、遠方の通院先を選択したことに特別な事情が認められないとして、相当因果関係を否定されました(横浜地方裁判所平成25年10月17日判決・自動車保険ジャーナル1911号167頁)。

<弁護士のコメント>

本件では、治療費について被告が争わず、通院交通費について争っています。本件のように、遠方への通院交通費が認められる場合としては、当該傷病の権威の医師の治療を受けるなどの特別な事情が必要になると考えられます。また、通院交通費についてはタクシー代の是非についても争われ、タクシーを利用する必要性を認めるに足らないとされました。

<争点>

・通院交通費

・治療費(施術費)

・過失相殺(損害拡大防止義務)

・車両損害(全損)

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.03更新

交通事故の被害者が示談成立後に新たな後遺障害(高次脳機能障害)が判明したとして、示談の無効を求めた事案において、裁判所は、本件事故による高次脳機能障害の発症を否認し、原告の請求を棄却しました(名古屋地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1911号・155頁)。

<弁護士のコメント>

原告は、事故直後には高次脳機能障害が発症していなかったのではなく、発症していたが気が付かなかったのだと主張しています。たしかに、高次脳機能障害は気づかれにくく、それゆえに家族からの聞き取りが重要になるという特徴があります。もっとも、①脳挫傷の存在が明確ではない、②脳萎縮の有無も明確ではない、③症状の推移が高次脳機能障害の場合と異なることを理由に、仮に高次脳機能障害を発症していたとしても、本件事故以外の原因に考える余地が大きいとしました。つまり、脳外傷による高次脳機能障害の要件を充足していなかったといえます。

<争点>

・示談書の効力

・高次脳機能障害

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.03更新

自転車を押しながら歩道を歩行中の男性が対向してきた自転車に衝突された事案について、被告自転車が前方の見通しが悪い急な下り坂において目線を下に向けながら速度の調節もせずに時速20キロメートル程度で進行していたことを重視して、歩行者の損害について過失相殺を認めませんでした。また、後遺障害逸失利益(首、顔等のしびれ)については、痛みを裏付ける他覚的所見がないことを理由に12級13号の主張を認めず、14級9号と認定しました。また、労働能力喪失期間を5年に限定しています(大阪地方裁判所平成25年8月30日判決・自動車保険ジャーナル1911号140頁)。

<弁護士のコメント>

本件は自転車と歩行者の正面衝突の事案における過失割合が問題になりました。歩道における対向自転車と歩行者の衝突事故においては、過半数の事案において歩行者の過失が認定されていないとされています(「自転車事故過失相殺の分析」(ぎょうせい))。しかも、本件事故現場の歩道は自転車通行可とはなっていませんでした。ですから、歩行者の過失が否定されたのは相当と考えられます。また、後遺障害については、本件では自転車が相手の交通事故なので自賠責の認定がなく、症状について裁判所の判断で後遺障害の有無が認定されることになりました。14級の場合に5年程度に労働能力喪失期間が制限されるのは、症状が「しびれ」であることからするとやむを得ないと考えられます。

<争点>

・過失相殺(自転車VS歩行者)

・後遺障害

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.02更新

横断歩道上の自転車同士の追い抜き事故について、①先行自転車の運転者Xが80歳であったこと、②後行自転車が強引に抜き去ったことなどから過失割合を50:50としました。また、Xの休業損害については、賃金センサス女子70歳以上の7割未満の日額5700円を基礎にして入院期間について休業損害を認めています(大阪地方裁判所平成25年6月18日判決・自動車保険ジャーナル140頁)。

<弁護士のコメント>

・過失割合:別冊判例タイムズ38号には自転車同士のものが掲載されていません。もっとも、本件は先行車がかなり特殊な走行をしていることから、汎用性がある裁判例とは考えられず、過失割合については事例判断としての意味しか持たないと考えられます。

・高齢女子の家事従事者の休業損害:高齢女子の場合、休業損害の算定にあたっては、本件のように賃金センサスを一部修正するのが一般的です。もっとも、どのような家事労働を行っているかは、年齢によって一義的に決することができるものではありませんから、結局、実態に即した判断となります。

・人身傷害先行払いの場合の過失相殺:人身傷害保険とは、自分が契約している保険会社に対して人身損害に関する補償を求めるものです。人身傷害保険が賠償に先行して支払われた場合(人傷先行払い)のときに過失相殺をどのように判断するかについては、かつては諸説ありましたが、現在は裁判基準差額説が通説です。本件でもいわゆる裁判基準差額説を採用したものと考えられます。

<争点>

・過失割合

・休業損害(高齢女子)

・裁判基準差額説

投稿者: 小島法律事務所

2015.06.01更新

商店街道路におい原告歩行者の左肩と対向被告普通貨物車のサイドミラーが衝突した事故について、事故と傷害結果との相当因果関係を認めるとともに、整骨院の施術費については一部減額して認めました(大阪地方裁判所平成25年9月19日判決・自動車保険ジャーナル1911号129頁)。

<弁護士のコメント>

この裁判例では、①被害者が歩行者であること、②加害車両が貨物自動車であること、③衝撃は軽微とはいえないこと、④医師の診断等を根拠に、相当因果関係が認められています。一般的に、車両のサイドミラーが接触したことで後遺障害が残存するほどの傷害が発生するかというと疑問ですが、本件は上記事情から相当因果関係が肯定されたものです。

また、整骨院の施術費については、医師の指示がない場合であっても、その内容からして一部の相当性を認めています。

さらに、休業損害については、症状固定時に労働能力喪失率が14%であることを根拠に「相当程度の労働能力の回復」を認めていますが、これは珍しい理由づけだと思います。

<争点>

・相当因果関係

・整骨院の施術費

・休業損害

投稿者: 小島法律事務所

前へ

entryの検索

月別ブログ記事一覧

判例のご紹介 交通事故に遭ってからのご相談の流れ
弁護士に相談するメリット 交通事故の相談に対する6つの安心
弁護士費用について 事務所紹介 オフィシャルサイト