2022.07.15更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「傷病手当金と交通事故」の解説です。

 交通事故による怪我が原因で仕事を休んだ場合、被害者は、加害者に対し、減収分を休業損害として、損害賠償請求を行うことになります。

 しかし、加害者が休業損害の補償を任意に行わない場合、訴訟等を行う必要がありますが、補償が行われるまでの期間中の被害者やその家族の生活を保障する必要があります。

 この点、生活の保障として、「傷病手当金」の制度を利用することが考えられます。
 なお、傷病手当金は、協会けんぽの健康保険に加入している人、健康保険組合の健康保険に加入している人、公務員に支給されるものであるため、国民健康保険に同様な制度がないことには注意が必要です。

 

【傷病手当金とは】
 傷病手当金とは、病気やけがによる休業した場合、休業中の健康保険に加入している被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。

 傷病手当金の支給を受けるためには、以下の4つの条件を満たしている必要があります。

①業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
 健康保険を使用した場合に限らず、自費で診療を受けた場合でも、就労できないことについての証明があるときは支給対象となります。また、自宅療養の期間についても支給対象となります。
 ただし、労災保険の給付対象である業務上・通勤災害は支給対象外です。

②療養のため労務に服することができないこと(健康保険法99条1項)
 療養のため労務に服することができないかの判断は、主治医の意見等を基に、被保険者の労務の内容(職種や具体的な労務内容など)を考慮して判断されます。

③連続する3日間を含み4日以上労務に服することができなかったこと(健康保険法99条1項)
 傷病手当金は、療養のために3日間連続して休業し、4日以上休業した場合に、その3日間の待期期間を除いた、4日目以降の休業が支給対象となります。
 そのため、休業が1日や2日間しかない場合、2日間休業した後、1日出勤し、また2日間休業した場合は、傷病手当金支給の対象外となります。

④休業した期間について給与の支払いがないこと(健康保険法108条1項)
 休業中であっても、有給休暇の使用など会社から給与が支払われている場合、傷病手当金は支給されません。
 ただし、給与の支払いがあっても、その給与額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます(健康保険法108条1項但書)。

 

【傷病手当金の支給期間】(健康保険法99条4項)
 傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日が令和2年7月1日以降である場合には、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月です。
 ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合には、支給を開始した日から最長1年6ヵ月です。

【傷病手当金の支給金額】(健康保険法99条2項)
 1日あたりの傷病手当金の支給金額は、「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額」÷ 30日×2/3で算定します。
 そして、標準報酬月額は、傷病手当金支給開始日の以前12か月間の給与、賞与、手当などの総額÷12か月で算出します。

 

【休業損害と傷病手当金の関係】
 休業損害と傷病手当金は、休業に対する補償であることから、すでに休業損害を全額補償している場合には、休業損害の補償に加えて、傷病手当金の支給を受けることはできません。
 他方で、傷病手当金の支給を受けた後に、加害者から休業損害の補償を受ける場合には、傷病手当金と休業損害の差額分の補償を受けることになります。

投稿者: 小島法律事務所

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