2021.09.22更新

今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「青色申告と休業損害」についての解説です。

 

【事業者の休業損害の算定】
 今回は、個人事業主(事業所得者)の休業損害の算定でよく用いられる、事故前の所得をもとに休業損害の算定する方法に関して、青色申告の場合を、ご説明します。
休業損害は、事故による怪我のために働けず、実際に下がってしまった収入を填補することを目的にしていることから、休業損害が認められるのは、現実の収入減があった場合だけです。
 以下では、現実の収入減が明らかである、個人事業主(事業所得者)が完全休業していたことを前提としています。

 事業所得者の休業損害は、事業者の基礎収入に休業日数を乗算して算出します。
 また、基礎収入は、事故前年度の所得金額に固定経費を加算して、その合計額に本人自身の稼働による利益の割合(寄与率)を乗じます(固定費の加算については、ブログ「事業所得者の休業損害」をご確認ください。)。
 そして、事故前年の所得金額は、「損益計算書」の「所得金額㊺」に、「青色申告特別控除額㊹」、「専従者給与㊳」を加算した合計額になります。

 

【青色申告特別控除額とは】
 この青色申告特別控除額は、所得金額から最高65万円又は10万円を控除するという課税上の特典です。
 この点、青色申告特別控除額は、経費として控除されるものではないため、所得額に青色申告特別控除額を加算します。

 

【専従者給与とは】
 「専従者給与」とは、事業主と生計を同一にする家族へ支払った給与のことをいいます。そして、「損益計算書」には基本的には経費として計上することができません(所得税法56条)。
 ただし、青色申告の場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署長へ提出し、給与の額が適正額であれば、経費として計上することができます。また、白色申告の場合は、一定額を経費に計上することができます(所得税法57条)。

 

【本人の寄与率について】
 事業主は家族及び従業員の協力を得て経済活動を行っているため、事業所得は、事業主本人が稼働して特に生み出した利益(本人寄与による利益)に、家族及び従業員が働いて生み出した利益が加えられたものです。
 そのため、事業所得から家族及び従業員が働いて生み出した利益を除いた残りの利益が、本人寄与による利益となります。
 そして、建前上、青色申告の場合、損益計算書に専従者給与として計上できる金額は、専従者への給与として適正な金額であることから、本人の利益は、以下の計算式で算出できます。

本人寄与による利益
=(「所得額㊺」+「青色申告特別控除額㊹」+「専従者給与㊳」)-「専従者給与㊳」
=「所得額㊺」+「青色申告特別控除額㊹」

 この点、損益計算書に計上されている専従者給与は、建前上、適正な給与額とされていますが、以下の例のように専従者給与として計上されている金額が適正な金額でない場合があります。以下では、所得金額+青色申告特別控除額の額が300万円、専従者給与として100万円が計上されていることを前提とします。

①専従者給与として、100万円が計上されているが、労働状況から200万円が適正な金額の場合という場合。

②配偶者は実際に働いていないが、節税のために専従者給与を計上している場合

 このような場合、本人寄与による利益を算出するため、損益計算書に計上された「所得額㊺」に「青色申告特別控除額㊹」と「専従者給与㊳」を加算した総額から適正金額の専従者給与額を差し引くか、本人の寄与率を乗算するかの修正を行う必要性があります。
 なお、本人の寄与率は、本人の寄与分の利益を事故前の所得金額で割ることで推認することができます。

 具体的には、①の場合、本人の利益は、300万円+100万円-200万円=200万円となり、本人寄与率は、50パーセントと推量されます。
 そして、②の場合、本人の利益は、300万円+100万円-0円=400万円となり、本人寄与率は、100パーセントと推量されます。


【まとめ】
 このように、事業所得者の基礎収入を確定申告書で算定することは、複雑である上、専従者の労働実態といった個別具体的な判断を必要とすることがあるので、確定申告書等の資料をよくよく確認する必要があります。

投稿者: 小島法律事務所

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