2021.02.05更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「給与所得者の休業損害 その1」についての解説です。

 休業損害とは、事故によって怪我をした際、その怪我によって休業したために支給を受けられなかった減収分(差額)を損害とするものです。

 休業損害を算定する方法としては、(1)休業により現実に生じた減収額を算定する方法と(2)事故前の収入日額等の基礎収入に休業期間を乗じて算定する方法があります。
 (2)の計算方法の場合は、実務上、下記の3つの考え方のいずれかが用いられます。
①休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、これに休日を含む休業期間を乗じる方法
②休日を含まない実労働日1日当たりの平均額を基礎収入とし、これに実際に休業した日数を乗じる方法
③休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、実際に休業した日数を乗じる方法

 これらの考え方は、どれかかが常に適しているという関係にあるのではなく、給与所得者の休業状況、収入日額の立証の難易度、正確な収入日額の算定の難易度等に応じて使い分けて用いられます。

 ここからは、休業損害でよくあるケースで説明します
【ケース1】給与所得者が継続して完全休業する場合
 休業損害を正確に算定するため、②の方法によるべきとの考え方もありますが、完全休業の期間がある程度長期の場合は、①でも②でも、結論に大きな差は出ないので、いずれの方法でもよいとされています。


【ケース2】給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院していた場合
 給与所得者は、休業損害証明書等の適切な証拠がある場合には、事故前の給与の金額に基づいて実労働日1日当たりの平均給与額を算定することができる上、労働契約によって、就労すべき日が定められているため、通院をした日のうち、交通事故がなければ就労していた日はいつなのかが認定できます。ですから、被害者側が②の計算方法で算定した休業損害を請求しており、証拠上、事故前の具体的な稼働日数、支払を受けた給与の金額を認定できる場合には、②の計算方法によるのが相当です。

 一方で、休業損害証明書が提出されないなどの事情等で、証拠上、実労働日1日当たりの平均給与額を認定することができない場合には、③の計算方法によって休業損害を算定せざるを得ないことも考えられます。この場合、事故前年の源泉徴収票記載の給与額を365日で割った金額を基礎収入とし、これに実際の休業日数を乗じる方法等が用いられます。

 なお、休業損害証明書が発行されない場合でも、就業規則や事故前年度の源泉徴収票等を用いて、②の計算方法で算定することも考えられます。

【参照書籍「損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)2018(平成30年)」37頁】

投稿者: 小島法律事務所

entryの検索

カテゴリ

判例のご紹介 交通事故に遭ってからのご相談の流れ
弁護士に相談するメリット 交通事故の相談に対する6つの安心
弁護士費用について 事務所紹介 オフィシャルサイト