2020.02.21更新

  小島法律事務所より、弁護士による「道路交通法改正(自転車)」について、道路交通法改正点の解説です(前回の記事はこちら

 自転車の事故を防止するために平成27年から始まり話題になった制度を紹介します。

 平成27年6月、道路交通法の改正法が施行されました。その中で、自転車に関して新たに「自転車運転者講習」の受講命令制度が設けられました(道路交通法108条の3の4)。

 これは、自転車を運転する者が、信号無視や通行区分違反など14種類が定められている「危険行為」(道路交通法施行令41条の3)で警察に摘発され、3年以内に再び摘発された場合に、その違反者に対し、各都道府県の公安委員会が、自転車の安全に関する講習を受講するよう命令できる制度です。ちなみに、対象は14歳以上です。

 これまで自転車は、自動車のように反則金の制度がなく、違反すなわち刑事罰という構造になっていたため、よほどのことがない限り違反が見逃されてきたという経緯があります。ですので、この自転車運転車講習制度によって、自転車の違反に対する制裁が容易になりました。 

 都道府県公安委員会からこの講習の受講命令が発せられた人は、一定額の受講料を修めて、3時間程度の安全講習を受けなければなりません。受講場所は各都道府県公安委員会の指定の場所です(通常は、自動車免許センターで行われるようです)。 

 この安全講習の受講命令に従わない場合、5万円以下の罰金という刑罰に科されることがあります(120条1項17号)。 

 内閣府の発表によると、危険行為として摘発されたものは、ブレーキが無い自転車を運転する等の整備不良か、信号無視が大半を占めています。

 さらに、内閣府の発表によれば、施行後1年で講習がされたのは24件です。また、危険行為として摘発されたのは48件です。3年以内に2回の危険行為で講習が義務付けられるという仕組みですから、講習が命じられた24人以外は、誰も危険行為での摘発がされていないように読み取れます。 

 ちなみに、直近でのデータが見当たらないため、自転車運転者講習の現在の運用は不明です。

投稿者: 小島法律事務所

2020.02.07更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自転車の交通ルール」についての解説です。

 日ごろ、自転車と歩行者との事故が話題になることがあります。中には、歩行者側が死亡または重傷を負うようなケースもあり、その事故の原因の多くには、自転車側の交通ルール違反があると考えられます。 

 そこで以下では、自転車の令和2年現在の交通ルールについて解説します。

 まず、自転車は軽車両(道路交通法(以下、法令名は省略します)2条11号)という車両(2条8号)の一種ですから、歩道と車道が分離されている区画を走行する際には、原則的に車道を走らなければなりません(17条1項本文)。 

 その際には、進行方向から見て左の車線を、左端に寄って進行する必要があり(18条1項)、車用の信号に従う必要があります(7条)。 

 つまり、イメージは原付に近いものとなります(ただし、自転車は車用の信号に従って右折することはできないなど(道交法施行令2条)、原付とは異なる点もあります)。

 一方で例外的に、自転車が歩道を走行できる場合があります。それは①標識などにより許されている場合②運転者が幼児・児童または老人である場合、そして、③安全のためにやむを得ない場合です(63条の4第1項各号)。この③の場合ですが、運転者が危ないと思う程度では足りず、歩道を通行することがやむを得ないと客観的に認められる必要があり、なおかつ、一時的な通行のみ可能と解されています(道路交通執務研究会編「執務資料-道路交通法解説(17訂版)」東京法令出版) 。 

 そしてこれら①~③の場合に歩道を走行する場合でも、自転車は歩道内で進行方向に対し車道寄りを徐行しなければならず(63条の4第2項前段)、歩行者の通行を妨げる場合には、一時停止しなければなりません(同項後段)。 

 このように、自転車の通行は原則車道、例外歩道となっており、歩道を走行できる場合は大きく制限されています。

 では、たとえば車通りが少ない道路で、歩行者が歩道の真ん中を歩いていた時、背中部分に自転車が後ろから衝突してきたという事例の場合にどのような違反となるかを検討してみます。

 まず、事例では交通量は少なく、自転車が歩道をあえて通行しなければならない客観的な危険性はありませんから、自転車が歩道を走行していたことは通行区分違反です(17条1項)。 

 さらに、事例では自転車は歩行者の背中に衝突していますから、歩行者保護にかけていたことは明らかです。よって、歩道内での一時停止義務違反(63条の4第2項後段)はもちろん、安全運転義務違反にも該当します(70条)。 

 つまり、これだけ見ても、少なくとも3つの違反を行っていることになるのです。

 このように、自転車は歩行者の通行区画に立ち入ることもある一方、歩行者との事故も発生しやすく、中には前述のとおり死亡・傷害を伴う重大な事故も生じえます。また従前に比べて、自転車の運転マナーが問題視され、社会的にも注目されていますから、自転車を運転する際には、交通ルールを守り、安全な運転を心がけましょう。

投稿者: 小島法律事務所

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