2021.01.22更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「車両の全損と車両価格の算定」についての解説です。

 交通事故の被害で自分の車両が損傷した場合、加害者に対して、車両の損害について損害賠償請求を行うことになります。今回は、車両が全損となった場合について解説します。

 まず、車両の全損として請求できる場合は、以下の3つのいずれかにあたる場合です。
①被害車両が物理的に修理不能と認められる状態(物理的全損)
②被害車両が経済的に修理不能と認められる状態(経済的全損)
③被害車両の所有者においてその買替えをすることが社会通念上相当と認められるとき

 ①物理的全損とは、整備修理技術者がみて修理ができないと判断する場合です。具体的には、手の施しようがないほど、激しく損傷している状態や、損傷が修理技術の水準を超えていて技術的に修理できない場合が、これにあたります。
 ②経済的全損とは、技術的に修理が十分可能であるが、その修理見積額が事故直前の車両時価(消費税相当額を含む)に車両買替諸費用・残存車検費用・廃車解体費用を加算した額を著しく上回る場合です
 ③社会通念上相当と認められるときとは、社会一般で受け容れられている常識または見解のことで、フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷が生じたことが客観的に認められる場合です。そのため、事故にあった車両は縁起が悪いや色むらが出るといった理由等での買替えは、社会通念で否定されることがあります。

 車両を全損として請求する場合、車両時価額の算出が特に問題となります。
 この車両時価額は、判例では、「当該自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によって定めるべき」(最高裁昭和49年4月15日判決 民集28巻3号385頁 交民集7巻2号275頁)としています。そして、裁判所は、価格算出の際の参考としては、第1次的にはオートガイド自動車価格月報(通称レッドブック)の掲載価格を、第2次的には中古車両の市場価格を参考にする傾向にあります。
 また、自動車の初年度登録から長期間が経過し、車両の中古車市場における価格を算定すべき適切な資料がない場合等の特段の事情がある場合には、課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によって定めることになります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.01.07更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「駐車場での事故における過失相殺」についての解説です。

【過失相殺とは】

 過失相殺の定めである民法722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」としています。これは、被害者側にも過失があったときは、損害賠償額算定にあたって、その過失を斟酌するというものです。

 その斟酌にあたっては、加害者の過失と被害者の過失との対比により過失の割合を評価します。

 

【交通事故における過失割合】

 道路交通法が適用される場合の過失の考慮要素としては、①「優先関係」②「遵守事項」③「優者の危険負担」④「要保護者修正」⑤「運転慣行」が挙げられます。   

 ①優先関係とは、道路交通法上の優先関係です。

 ②遵守事項とは、道路交通法上の規定事項です。

 ③優者の危険負担とは、交通事故の際の各当事者の行為の態様や程度が同じ様な過失の場合は、優者が危険を負担すべき、という考え方です。具体的には、人か車なら車に、単車と車なら車にと、より加害の危険性の大きい方が、責任を負担するというものです。

 ④「要保護者修正」とは、幼児・児童・高齢者・障がい者等、社会生活上、通常人よりも自己の安全を守る能力の低い人たちの過失の取り扱いについては、有利に扱うとするものです(道路交通法14条、71条2号、2号の2、2号の3)。

 これらの要素のもと、過失割合を数値化した基準を示したものが、『損害賠償額算定基準』(いわゆる赤い本)等になります。道路交通法が適用される交通事故については、これを基準として適用し、過失割合が出されることが多いです。

 

【駐車場内の事故における過失割合】

 道路交通法が適用されるのは、「道路」での通行だけです(道路交通法1条)。道路交通法上、「道路」とは、道路法2条1項に規定する道路、道路運送法2条8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所である(道路交通法2条1項1号)とされています。「一般交通の用に供するその他の場所」とは、判例上「不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所」であるとされています。「不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所」は、実務上、①道路としての体裁があり、②不特定の人や車の通行が自由に通行すること認められて、かつ、③反復・継続的な交通が客観的にわかる場所であるかで判断します。そのため、駐車場は、道路交通法上の「道路」とであるものとそうではないものが存在することになります。

 しかし、「道路」でない駐車場内において、運転者は、車を運転している以上、道路交通法に定められている運転・通行方法等や駐車場内での通行方法に従うだろうと期待し、それを前提に行動するのが通常です。そのため、道路交通法上の「道路」にあたらない駐車場内においても、運転者は、駐車場の客観的状況等から道路交通法上の義務と同様の義務を負うことが多いとされています。ですから、駐車場内の事故でも、交通事故の様に、過失割合を判断します。

 駐車場における事故の過失割合を決定するにあたっては、注意義務違反の有無、不注意の程度、駐車場内で決められた通行方法の指示・遵守事項の違反の有無、優者の危険負担や要保護者修正等も考慮されます。これらをもとに、過失割合を数値化します。

 駐車場は、多種多様なため、画一的に基準を決めるのが、難しいところがあります。そのため、具体的な数値については、裁判例や関連書籍等をもとに、類似例がないか調査し、判断することになります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.01.07更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「駐車場での事故における過失相殺」についての解説です。

【過失相殺とは】

 過失相殺の定めである民法722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」としています。これは、被害者側にも過失があったときは、損害賠償額算定にあたって、その過失を斟酌するというものです。

 その斟酌にあたっては、加害者の過失と被害者の過失との対比により過失の割合を評価します。

 

【交通事故における過失割合】

 道路交通法が適用される場合の過失の考慮要素としては、①「優先関係」②「遵守事項」③「優者の危険負担」④「要保護者修正」⑤「運転慣行」が挙げられます。   

 ①優先関係とは、道路交通法上の優先関係です。

 ②遵守事項とは、道路交通法上の規定事項です。

 ③優者の危険負担とは、交通事故の際の各当事者の行為の態様や程度が同じ様な過失の場合は、優者が危険を負担すべき、という考え方です。具体的には、人か車なら車に、単車と車なら車にと、より加害の危険性の大きい方が、責任を負担するというものです。

 ④「要保護者修正」とは、幼児・児童・高齢者・障がい者等、社会生活上、通常人よりも自己の安全を守る能力の低い人たちの過失の取り扱いについては、有利に扱うとするものです(道路交通法14条、71条2号、2号の2、2号の3)。

 これらの要素のもと、過失割合を数値化した基準を示したものが、『損害賠償額算定基準』(いわゆる赤い本)等になります。道路交通法が適用される交通事故については、これを基準として適用し、過失割合が出されることが多いです。

 

【駐車場内の事故における過失割合】

 道路交通法が適用されるのは、「道路」での通行だけです(道路交通法1条)。道路交通法上、「道路」とは、道路法2条1項に規定する道路、道路運送法2条8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所である(道路交通法2条1項1号)とされています。「一般交通の用に供するその他の場所」とは、判例上「不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所」であるとされています。「不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所」は、実務上、①道路としての体裁があり、②不特定の人や車の通行が自由に通行すること認められて、かつ、③反復・継続的な交通が客観的にわかる場所であるかで判断します。そのため、駐車場は、道路交通法上の「道路」とであるものとそうではないものが存在することになります。

 しかし、「道路」でない駐車場内において、運転者は、車を運転している以上、道路交通法に定められている運転・通行方法等や駐車場内での通行方法に従うだろうと期待し、それを前提に行動するのが通常です。そのため、道路交通法上の「道路」にあたらない駐車場内においても、運転者は、駐車場の客観的状況等から道路交通法上の義務と同様の義務を負うことが多いとされています。ですから、駐車場内の事故でも、交通事故の様に、過失割合を判断します。

 駐車場における事故の過失割合を決定するにあたっては、注意義務違反の有無、不注意の程度、駐車場内で決められた通行方法の指示・遵守事項の違反の有無、優者の危険負担や要保護者修正等も考慮されます。これらをもとに、過失割合を数値化します。

 駐車場は、多種多様なため、画一的に基準を決めるのが、難しいところがあります。そのため、具体的な数値については、裁判例や関連書籍等をもとに、類似例がないか調査し、判断することになります。

投稿者: 小島法律事務所

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