2021.06.26更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「後遺障害①」についての解説です。

【後遺障害とは】
 症状固定時に残存している症状(例えば体の痛みや痺れ、精神的機能の不調等)のことを、「後遺症」といいます。
 この後遺症の中でも、自賠責保険が定める基準により、障害として評価される後遺症のことを、「後遺障害」といいます。
 自賠責保険が定める基準は、(1)体の部位を10種類に分け、(2)各部位の障害を生理学的観点からさらに分類します。その結果、自賠責保険では、35のグループに分けています。ちなみに、このグループのことを「系列」といいます。
 整理すると以下のようになります。なお、器質的障害と機能的障害については、表が分かれている場合は、いずれかの障害が存在することで足ります。

障害部位一覧

(『労災補償障害認定必携』より)

 そして、自賠責保険が定める基準は、後遺症が発現している部位や機能障害の程度に応じて、1級から14級に分けています。
 なお、各等級に見合った労働能力喪失率と慰謝料額も基準化されています。

 

投稿者: 小島法律事務所

2021.06.11更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「物損に関連する慰謝料」についての解説です。

 交通事故による怪我で、人的損害が発生した場合、被害者は加害者に対して傷害慰謝料を請求することになります。
 では、交通事故で、物的損害のみの場合、被害者は加害者に対して慰謝料を請求することができるでしょうか。

 

【物的損害に関する慰謝料】
 物損に関連する慰謝料については、赤い本では、「原則として、認められない。」と記載されています。
 この点、交通事故の事案ではありませんが、財産上の損害に関する慰謝料について、最高裁判所の判決では、『一般には財産上の損害だけであり、そのほかになお慰藉を要する精神上の損害もあわせて生じたといい得るためには、被害者(上告人)が侵害された利益に対し、財産価値以外に考慮に値する主観的精神的価値をも認めていたような特別の事情が存在しなければならない』と判示しています(最高裁判所昭和42年4月27日・裁集民87号305頁)
 ですから、原則としては、物損に関連する慰謝料は認めらませんが、「財産価値以外に考慮に値する主観的精神的価値をも認めていたような特別の事情」が存在する場合には、慰謝料が認められると思われます。

 

【物損に関して、慰謝料が認められた例】
 ここで、物損に関する慰謝料が認められた事例を紹介します。
 事案は、霊園における墓石等に対する衝突事故により墓石が倒壊し、骨壺が露出する等した事案です(大阪地方裁判所平成12年10月12日判決・自保ジ1406・4)。

 この事案において、裁判所は、「一般に、墓地、墓石等は、先祖や故人が眠る場所として、通常その所有者にとって、強い敬愛追慕の念を抱く対象となるものということができるから、侵害された物及び場所のそのような特殊性に鑑みれば、これを侵害されたことにより被った精神的苦痛に対する慰謝料も損害賠償の対象になるものと解するのが相当である。」と判示し、慰謝料として10万円を認めています。

投稿者: 小島法律事務所

2021.06.04更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「傷害慰謝料」についての解説です。

 交通事故によって、怪我を負い、その怪我の治療のために入院や通院を余儀なくされてしまった場合、その怪我や入通院による精神的苦痛は、傷害慰謝料という形で、加害者に対して、損害賠償請求を行います。

 この傷害慰謝料の算定については、実務では、赤い本に記載されてある入通院慰謝料表(通称別表)を基準に、治療期間に応じて金額を算出します。
 この別表は、慰謝料の目安表であり、別表Ⅰと別表Ⅱの2種類あります。そして、怪我の程度によって、表を使い分けます。
 なお、別表Ⅱよりも別表Ⅰで算定した方が、傷害慰謝料の金額は高くなります。

 ですので、傷害慰謝料の算定では、別表Ⅰと別表Ⅱのどちらを使うか、治療期間はどの様に算定するのかが問題となることが特に多いです。

 

【表の使い分け】
 赤い本によると、『傷害慰謝料については、原則として入通院期間を基礎として別表Ⅰを使用する。』『むち打ち症で他覚所見がない場合等は入院期間を基礎として別表Ⅱを使用する。』と、原則として別表Ⅰを使用し、例外として別表Ⅱを使用するとしています。
 そして、『「等」とは軽い打撲・軽い挫創(傷)の場合を意味する。』としています。

 ですので、大事故でない場合によく生じるむち打ちや軽い打撲の場合には、別表Ⅱを使用することになります。

 

【治療期間について】
 先ほどの説明の通り、別表Ⅰと別表Ⅱのいずれも、慰謝料の算定の基礎となる治療期間については、「入通院期間」としています。
 なお、入通院期間とは、治療を開始した日から治癒した日または症状固定日(症状固定については、過去ブログを参照してください。)になります。

 ですが、症状、治療内容、通院頻度は、個別事情であり、場合によっては治療が長引くこともあります。そのため、治療状況によっては、入通院期間すべてが、慰謝料の算定の基礎となるのか問題となります。

 この点、赤い本によれば、別表Ⅰについては、『通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえて実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある』としています。また、別表Ⅱについては、『通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。』としています。

 ここで気を付けていただきたいことは、実通院日数の3倍または3.5倍の期間を対象とするのは、あくまで例外であって、原則は入通院期間であることです。

 そして、「長期」とされる期間の目安については、青い本が『通院が長期化し、1年以上にわたりかつ通院頻度が極めて低く1か月に2~3回程度の割合にも達しない場合…前記基準表をそのまま機械的に適用できない。』と記載していることからすれば、1年が目安になると思われます。

 ですので、傷害慰謝料の算定おいては、多くの場合、実通院日数の3倍または3.5倍ではなく、入通院期間を用いて、金額を算定することになると思われます。

 

投稿者: 小島法律事務所

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