2022.07.29更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による『アルコールチェックの義務化』の解説です。

 令和3年11月10日に、「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布されたことにより、令和4年4月1日から、安全運転管理者が、業務として運転しようとする者及び運転を終了した者に対し、飲酒の有無を確認することを、以下のとおり、義務付けられました。

【安全運転管理者について】
 安全運転管理者とは、一定台数以上の自動車を使用する事業所において、使用者の代務者として、自動車の安全な運転に必要な業務を行う者のことです。
 そして、以下の場合、使用者には、使用している本拠ごとに、「安全運転管理者」及び安全運転管理者の業務の補助を行う「副安全運転管理者」を選任することが、義務付けられています(道路交通法第74条の3第1項、第4項)。

道路交通法第74条の3
「自動車の使用者(道路運送法の規定による自動車運送事業者(貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)の規定による貨物軽自動車運送事業を経営する者を除く。以下同じ。)及び貨物利用運送事業法の規定による第二種貨物利用運送事業を経営する者を除く。以下この条において同じ。)は、内閣府令で定める台数以上の自動車の使用の本拠ごとに、年齢、自動車の運転の管理の経験その他について内閣府令で定める要件を備える者のうちから、次項の業務を行う者として、安全運転管理者を選任しなければならない。
2・3(略)
4 自動車の使用者は、安全運転管理者の業務を補助させるため、内閣府令で定める台数以上の自動車を使用する本拠ごとに、年齢、自動車の運転の経験その他について内閣府令で定める要件を備える者のうちから、内閣府令で定めるところにより、副安全運転管理者を選任しなければならない。」

 なお、内閣府令で定める台数は、以下のとおりです。

安全運転管理者(道路交通法施行規則第9条の8)
「法第七十四条の三第一項の内閣府令で定める台数は、乗車定員が十一人以上の自動車にあつては一台、その他の自動車にあつては五台とする。
2 法第七十四条の三第四項の内閣府令で定める台数は、二十台とする。
3 前二項及び第九条の十一の台数を計算する場合においては、大型自動二輪車一台又は普通自動二輪車一台は、それぞれ〇・五台として計算するものとする。」

副安全運転管理者(道路交通法施行規則第9条の11)
「法第七十四条の三第四項の規定による選任は、次の表の上欄に掲げる自動車の台数に応じ、同表の下欄に掲げる人数以上の副安全運転管理者を選任して行うものとする。
自動車の台数 人数
二十台以上四十台未満 一人
四十台以上 一人に四十台以上二十台までを超えるごとに一人を加算して得た人数

 なお、安全運転管理者や副安全運転管理者を選任しなかった場合、使用者は、「5万円以下の罰金」の罰則となります(道路交通法120条11の3号)。

【確認義務】
 運転者への飲酒の有無の確認について、安全運転管理者に課された義務の内容は、以下の通りです。

道路交通法施行規則
(安全運転管理者の業務)
第九条の十 法第七十四条の三第二項の内閣府令で定める業務は、次に掲げるとおりとする。
一~五(略)
六 運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認すること。
七 前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を一年間保存すること。
八・九(略)

 このように、令和4年4月1日以降は、運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認し、その内容を記録し、保存しなければなりません。
 なお、「目視等で確認」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することをいいます。

投稿者: 小島法律事務所

2022.07.22更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「交通事故の過失割合」についての解説です。
今回は、車同士の事故のうち、信号機により交通整理の行われていない交差点における出合い頭事故(一方道路車両用信号赤色表示と押しボタン式歩行者用信号青色表示(交差道路の車両用信号なし)の交差点の場合)を取り上げます。
一方道路の信号が常時青信号で、横断歩行者が歩行者専用の押しボタン式信号機を操作した場合にのみ、一方道路の信号が赤信号になり、それに伴い、交差道路に沿って一方道路を横断する歩行者用専用の信号が青信号になるような交差点の場合も、交差道路から交差点に進入する車両に対する関係では、「信号機により交通整理の行われていない交差点」になります。

<別冊判例タイムズ38号>
交差点における直進車同士の出合い頭事故
交通整理の行われていない交差点における事故
   一方道路車両用信号赤色表示と押しボタン式歩行者用信号青色表示(交差道路の車両用信号なし)の交差点の場合【106】
1 基本過失割合
  歩行者用青30:車両用赤70
2 修正要素
(1)歩行者用青に何らかの過失あり又は車両用赤の明らかな先入:+10
(2)歩行者用青の著しい過失:+10
(3)歩行者用青の重過失:+20
(4)歩行者用青の減速:-10
(5)歩行者用青の一時停止後進入:-15
(6)車両用赤の著しい過失:-10
(7)車両用赤の重過失:-20

<赤い本>
 【38】図に記載があり、①基本過失割合、②修正要素ともに別冊判例タイムズ38号とは異なっています。
1 基本過失割合
歩行者用青20:車両用赤80
2 修正要素
(1)車両用赤の明らかな先入:+10
(2)歩行者用青の著しい過失:+10
(3)歩行者用青の重過失:+20
(4)歩行者用青の徐行又は一時停止後進入:-10
(5)車両用赤の著しい過失:-10
(6)車両用赤の重過失:-15

投稿者: 小島法律事務所

2022.07.15更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「傷病手当金と交通事故」の解説です。

 交通事故による怪我が原因で仕事を休んだ場合、被害者は、加害者に対し、減収分を休業損害として、損害賠償請求を行うことになります。

 しかし、加害者が休業損害の補償を任意に行わない場合、訴訟等を行う必要がありますが、補償が行われるまでの期間中の被害者やその家族の生活を保障する必要があります。

 この点、生活の保障として、「傷病手当金」の制度を利用することが考えられます。
 なお、傷病手当金は、協会けんぽの健康保険に加入している人、健康保険組合の健康保険に加入している人、公務員に支給されるものであるため、国民健康保険に同様な制度がないことには注意が必要です。

 

【傷病手当金とは】
 傷病手当金とは、病気やけがによる休業した場合、休業中の健康保険に加入している被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。

 傷病手当金の支給を受けるためには、以下の4つの条件を満たしている必要があります。

①業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
 健康保険を使用した場合に限らず、自費で診療を受けた場合でも、就労できないことについての証明があるときは支給対象となります。また、自宅療養の期間についても支給対象となります。
 ただし、労災保険の給付対象である業務上・通勤災害は支給対象外です。

②療養のため労務に服することができないこと(健康保険法99条1項)
 療養のため労務に服することができないかの判断は、主治医の意見等を基に、被保険者の労務の内容(職種や具体的な労務内容など)を考慮して判断されます。

③連続する3日間を含み4日以上労務に服することができなかったこと(健康保険法99条1項)
 傷病手当金は、療養のために3日間連続して休業し、4日以上休業した場合に、その3日間の待期期間を除いた、4日目以降の休業が支給対象となります。
 そのため、休業が1日や2日間しかない場合、2日間休業した後、1日出勤し、また2日間休業した場合は、傷病手当金支給の対象外となります。

④休業した期間について給与の支払いがないこと(健康保険法108条1項)
 休業中であっても、有給休暇の使用など会社から給与が支払われている場合、傷病手当金は支給されません。
 ただし、給与の支払いがあっても、その給与額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます(健康保険法108条1項但書)。

 

【傷病手当金の支給期間】(健康保険法99条4項)
 傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日が令和2年7月1日以降である場合には、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月です。
 ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合には、支給を開始した日から最長1年6ヵ月です。

【傷病手当金の支給金額】(健康保険法99条2項)
 1日あたりの傷病手当金の支給金額は、「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額」÷ 30日×2/3で算定します。
 そして、標準報酬月額は、傷病手当金支給開始日の以前12か月間の給与、賞与、手当などの総額÷12か月で算出します。

 

【休業損害と傷病手当金の関係】
 休業損害と傷病手当金は、休業に対する補償であることから、すでに休業損害を全額補償している場合には、休業損害の補償に加えて、傷病手当金の支給を受けることはできません。
 他方で、傷病手当金の支給を受けた後に、加害者から休業損害の補償を受ける場合には、傷病手当金と休業損害の差額分の補償を受けることになります。

投稿者: 小島法律事務所

2022.07.08更新

飯塚市の小島法律事務所より、2022年(令和4年)のお盆休みのお知らせです。

 誠に勝手ながら、当事務所は、令和4年8月11日(木)~8月15日(月)までをお盆休みとさせていただきます。

 ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。

小島法律事務所

弁護士 小島邦夫

投稿者: 小島法律事務所

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