2021.03.26更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「症状固定」についての解説です。

【症状固定とは】
「症状固定」という言葉は、法律に規定されている言葉ではありません。
 文字通りの意味であれば、症状が固定されたとなります。
 この点、労働者災害補償保険における「障害等級認定基準」(昭和50年9月30日付労働省労働基準局長通達)では、「「なおったとき」とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療法(中略)をもってしても、その効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したときをいう。」とされています。
 つまり、労働者災害補償保険においては、症状固定とは、医学上一般的に認められた治療方法をもってしても、治療効果が期待できない状態である場合に、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態ということになります。
 この症状固定における定義は有用と考えられているため、実務上、交通事故における損害賠償請求において、「症状固定」との言葉が使われた場合の意味も同じものになります。

【症状固定が用いられる場面】
 症状固定と判断された場合、症状固定後の治療は、効果がなく、症状を改善させるものではないため、原則として、症状固定後の治療費は、交通事故と相当因果関係のある損害としては認められません。
 また、交通事故により仕事を休むことになり、収入が減少した場合には、休業損害として損害賠償請求することになりますが、休業損害は、事故の日から症状固定日までの期間で休業した日数をもとに、その額を算定します。
 さらに、入通院したことによる慰謝料については、傷害慰謝料として、損害賠償請求することになりますが、この傷害慰謝料は、事故の日から症状固定日までの期間をもとに、その額を算定します。
 ですので、症状固定は、損害賠償請求を行う際の請求額に深く関わるものであり、請求額の算定の場面でよく用いられます。

【症状固定の日の判断について】
 症状固定は、先の通り、治療効果がこれ以上あるかが判断の1つとなっていますので、医師の判断が必要なのは、言うまでもありません。そのため、実務上、症状固定の時期については、診断・治療を行った医師が作成した後遺障害診断書記載の症状固定日を、損害賠償額算定における症状固定日とすることがあります。
 ですが、事故態様、受傷内容、治療経過等によっては、後遺障害診断書に記載された時期を症状固定日とすることに合理性が認められない場合もあります。
 その場合には、後遺障害診断書に記載された時期以外の時期を症状固定日とすることもあります。

参照文献:『損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)2013 7頁』

投稿者: 小島法律事務所

2021.03.19更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「整骨院等での施術費用の損害賠償請求」についての解説です。

【整骨院等での施術の問題点】
 交通事故に遭った場合、被害者は、加害者に対して、治療関係費を含めて、損害賠償請求を行います。
 交通事故に遭われた方の中には、病院での治療の他に、整骨院等で施術を受けられる方もいるかと思われます。
 飯塚市でも、近年、交通事故に対応していることを看板等に記載した整骨院等が増えている気がします。
 しかし、実務上、整骨院等での施術の費用が、治療関係費として、交通事故と相当因果関係のある損害と認められるか問題となることがあります。

 

【相当因果関係が認められる要件】
 この点、整骨院等における施術は医師による治療とは異なる点が多くある上、施術内容も個々人で様々であるため、実務上、整骨院等における施術の費用は、症状の内容・程度に照らして、症状固定までに行われた必要かつ相当な治療行為の費用かとの観点から、その認否が判断されています。
 実務上は、以下の7つ要件で考えられています。

1 施術が症状固定までに行われたものであること

 ①施術が症状固定までに行われたものであること

 ②施術録に記載された施術が現に行われたこと

 

2 必要性について

 ③施術の必要性

 施術を行うことが許される受傷内容であること、従来の医療手段では治療目的を果たすことが期待できず、医療に代えてこれらの施術を行うことが適当であること等から、当該施術を行うことが当該受傷内容に必要か判断されます。

 ④施術の有効性

 施術を行ったことで、具体的な症状緩和の効果が生じているか判断されます。

 

3 相当性について

 ⑤施術内容の合理性

 施術が、受傷内容と症状にあったものか判断されます。そのため、施術期間の後半になって、施術の回数が増えるといった、過剰・濃厚に行われている場合には、この要件が否定されることになります。

 ⑥施術期間の相当性

 受傷の内容、治療経過、疼痛の内容、施術の内容及びその効果の程度などから、施術を継続する期間が相当であるか判断されます。

 ⑦施術費の相当性

 施術の報酬金額が社会一般の水準と比較して妥当なものか判断されます。

 

【医師の指示の有無について】
 実務上、医師が患者に対して整骨院での施術を受けるように指示している場合は、医師が患者の治療方法の1つとして柔道整復師の施術を積極的に選択したことを意味するので、特段の事情がない限り、上記必要性にあたる③④があることを強くうかがわせる事情となると考えられています。なお、あくまで、医師の指示は、必要性に関する事情ですので、医師の指示があったとしても、相当性に対応する⑤⑥⑦が認められなければ、施術費の全額は交通事故による損害として認められません。
 一方で、医師の指示がなかったとしても、医師の指示は、必要性をうかがわせる事情に過ぎませんので、当該施術費に①から⑦の要件が認められれば、施術費が交通事故による損害として認められます。

参照:『交通事故による損害賠償の諸問題Ⅲ』
   『損害賠償認定額算定基準 下巻(講演録編)2018』

投稿者: 小島法律事務所

2021.03.12更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「オートライトの義務化」についての解説です。

【オートライトの義務化】

 道路運送車両の保安基準が改正され、新型車は2020年4月から、継続生産車は2021年10月から普通乗用車のオートライトの装備が義務化されます。
オートライトとは、周囲の明るさに応じて、ライトの点灯/消灯を自動的に行ってくれる機能のことです。

 

【改正点】

 今回の改正で定められたオートライトに関する主な新保安基準としては、以下の3つが挙げられます。

①周囲の照度が1,000ルクス未満になると、2秒以内に点灯する
 なお、1,000ルクスの照度とは、JAFの説明によると、信号や他車のブレーキランプなどの点灯が周囲から目立ち始める時の明るさとされています。イメージとしては、夕暮れの暗くなり始めるころの時間帯になります。

②周囲の照度7,000ルクス以上になると、5秒から300秒以内に消灯する
 点灯から消灯までの応答時間は自動車メーカーに委ねられています。

③走行中、手動でオートライト機能を解除することができない(ただし、駐停車状態にある場合は消灯可能)

 

【オートライトの義務化の背景】

1 従来のオートライト機能には、メーカーや車種によってライトの点灯タイミングに差があり、明確な基準がありませんでした。そのため、同じ時間帯なのに、ライトが点いている車と無灯火の車が混在している状態でした。

2 また、ヘッドライトを付ける時間帯については、道路交通法は、「夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)」と定めています(道路交通法52条1項)。この「日没から日の出までの時間」については、日付や場所によって様々で、その時間を把握することが困難なこともあり、ドライバー個人の感覚でヘッドライトを点けていた状態が多かったと思われます。そのため、法的には夜間にあたる時間帯でも、無灯火で走行している車両も少なくありませんでした。

3 さらに、都市部や市街地では、道路の照明や店舗の照明が多くあるため、ドライバーが回りの明るさに気付かずに無灯火で走行してしまう場合もあります。

これらを背景としたヘッドライトの無灯火を原因とする事故を防止するために、今回のオートライトの義務化が行われることになりました。

投稿者: 小島法律事務所

2021.03.02更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「家事従事者の休業損害」についての解説です。

【休業損害の算定】
 休業損害の算定方法は、一般的に、基礎収入×休業日数で算定されます。
 主婦等の家事従事者は、収入を得ていませんが、判例上、家事労働に属する多くの労働は、社会において金銭的に評価され得るものであり、家事従事者が家事に従事することができなかったことによる損害を認めることができるとされています(最高裁判所昭和49年7月19日判決)。
 そして、基礎収入としては、判例上、女性労働者の平均賃金に相当する財産上の収益をあげるものと推定するのが相当であるとされています(同判決)。

【独り暮らしの場合】
 家事労働に従事することが財産上の利益を挙げていると評価されているのは、それが他人のために行う労働であるからとされているため、例えば、独り暮らしのように、自分自身の身の回りのことを行うことは、社会的に金銭的に評価される労働とはされていません。
ですから、独り暮らしで無職の女性が受傷した場合には、家事労働の休業損害は認められていません。

【基礎収入】
(1)専業主婦
 女性労働者の平均賃金は、賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均賃金が用いられています。
 そして、原則として、基礎収入は、全年齢平均賃金で算定されていますが、家事労働は、その生活環境によって様々ですので、年齢、家族構成、身体状況及び家事労働の内容等に照らして、生涯を通じて全年齢平均賃金に相当する家事労働を行い得る蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、年齢別平均賃金を参照して適宜減額されることもあります。
 具体的には、家事従事者が、高齢であり、その労働は通常の主婦の労働量よりも少ないことが明らかである場合には、全年齢女子平均賃金の7割を基礎収入とするといったものです。

(2)有職の主婦の場合
 有職の主婦等の方は、労働によって収入を得ていますが、この場合の基礎収入は、実収入額が全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額によりますが、下回っているときは(1)に従って算定されることになります。

投稿者: 小島法律事務所

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