2022.03.18更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による交通事故の過失割合についての解説です。


 今回は、車同士の事故のうち、交差点における赤信号車と赤信号車の出合い頭事故を取り上げます。この事故態様の基本過失割合は、双方赤信号であることから、50:50となります。
 信号機をよく見ていると、交差点(いわゆる十字路)の信号が全て赤という時間が3秒ほどあります(この「赤赤」の時間については3秒以外の信号サイクルは見たことがありません。)。

<別冊判例タイムズ38号>
 交差点における直進車同士の出合い頭事故
 信号機により交通整理の行われている交差点における事故
   赤信号車同士の事故【100】
1 基本過失割合
  50:50
2 修正要素
(1)赤信号車
 ア 相手車の明らかな先入:+10
 イ 著しい過失:+5
ウ 重過失:+10
(2)赤信号車
 ア 相手車の明らかな先入:-10
 ア 著しい過失:-5
 イ 重過失:-10

<赤い本>
 【31】別冊判例タイムズ38号と同様の記載があります。

投稿者: 小島法律事務所

2022.03.04更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「車両保険の免責金額」の解説です。

 車両保険とは、自動車の衝突、接触、墜落、転覆、物の飛来、物の落下、火災、爆発、盗難、台風、洪水、高潮その他偶然な事故によって、自動車に生じた損害に対して支払われる保険のことをいいます。(車両保険については、こちらをご覧ください。)
そして、車両保険を契約する際、「免責金額」を設定することがあります。
 この「免責金額」とは、保険契約において設定する、契約者または被保険者の自己負担額をいいます。例えば、車両保険の補償対象の交通事故を起こし、車両の修理費として50万円かかり、免責金額として5万円を設定していた場合、5万円は契約者が自己負担し、残り45万円について保険金が支払われます。
 なお、損害額が、免責の設定金額を下回る場合には、保険金は支払われません。

 この点、免責金額を設定していたとしても、相手側から賠償金の支払いが行われた場合、賠償金はまず免責金額から充当されるため、自己負担なく修理できる場合があります。
 過失割合が、当方20%、相手方が80%の交通事故で、自車の修理費が50万円、免責金額が10万円の場合で説明します。

 この場合、相手側から40万円(50万円×80%)の賠償金が支払われます。そして、賠償金のうち10万円は免責金額に充当され、自身の車両保険から自身の過失割合に応じた金額10万円(50万円×20%)が支払われます。
そのため、最終的に受け取る金額は、賠償金40万円、車両保険金10万円の合計50万円となり、自己負担なく修理することができます。

投稿者: 小島法律事務所

2022.02.25更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「交通事故の過失割合」についての解説です。
 交通事故の過失割合については、通常、「別冊判例タイムズ38号」という書籍を使って判断しますが「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(いわゆる「赤い本」)にも、過失割合についての記載があります。
 この2冊は、交通事故事件を扱う弁護士なら誰でも持っているとは思いますが、過失割合についての記載が若干違う場合もあったり、どちらか一方にしか掲載のない事故態様もあります。
 今回は、車同士の事故のうち、交差点における青信号車と信号残り車の出合い頭事故を取り上げます。この事故態様については、別冊判例タイムズ38号には記載がなく、赤い本には記載があります。
青信号車の方が被害者側になっていますが、これは、青信号車にとって交差点を一瞥しただけで信号残り車を発見しにくい態様を想定しています。

<別冊判例タイムズ38号>
記載なし。

<赤い本>
【32】
1 基本過失割合
  青信号車30:信号残り車70
2 修正要素
(1)青信号車
 ア 著しい過失:+10
 イ 重過失:+20
(2)信号残り車
 ア 黄信号進入:+10
 イ 著しい過失:+5
 ウ 重過失:+10

投稿者: 小島法律事務所

2022.02.18更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「交通事故の土地管轄」の解説です。
 管轄は、土地管轄、事物管轄、職分管轄の3種類あります。今回は、土地管轄について説明します。
 土地管轄とは、全国各地にある裁判所のうち、地域に着目して当該事件を取り扱うことができる権限を有しているかの基準のことをいいます。
 土地管轄は、事件の性質に応じて、民事訴訟法に定められています。なお、土地管轄は、1つだけではないことがあります。
 土地管轄が複数ある場合には、訴訟を提起する者が、土地管轄を有する裁判所を選んで、訴訟を提起することができます。
 以下では、飯塚市在住のAさんが、直方市内で、信号停車中、田川市在住のBさんが運転する車に後ろから追突されて、怪我を負い、AさんがBさんに対して200万円の損害賠償請求を行っている場合を例に土地管轄を説明します。

 まず、民事訴訟法4条1項は、「訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する」と定めています。そして、同条2項は、「人の普通裁判籍は、住所により」「定まる」と定めています。
 したがって、当該交通事故の管轄としては、Bさんの住所地である田川市を管轄する福岡地方裁判所田川支部が管轄を有することになります。

 次に、交通事故に遭った場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求訴訟を行います。損害賠償請求訴訟は、「財産権上の訴え」になります。そして、民事訴訟法5条1号は、財産権上の訴えについての管轄を「義務履行地」と定めています。この義務履行地とは債務者が債権者に対して弁済を行う場所のことであり、弁済を行う場所は、債権者の住所となります(民法484条1項)。
 したがって、損害賠償請求訴訟の場合、請求者が債権者となりますので、当該交通事故の管轄としては、請求者であるAさんの住所地である飯塚市を管轄する福岡地方裁判所飯塚支部が管轄を有することになります。

 最後に、交通事故は不法行為になりますので、交通事故に関する損害賠償請求訴訟は、「不法行為に関する訴え」にあたります。そして、民事訴訟法5条9号は、不法行為に関する訴えについての管轄を「不法行為があった地」と定めています。
 したがって、当該交通事故の管轄としては、交通事故が生じた場所である直方市を管轄する福岡地方裁判所直方支部が、管轄を有することになります。

投稿者: 小島法律事務所

2022.02.10更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による交通事故の慰謝料請求についての解説です。
 「慰謝料」という言葉を耳にしたことがある方は大勢いるでしょうし、「慰謝料を請求できる」「慰謝料を請求する」なんて表現はテレビやネットのニュースでよく見聞きします。
ただ、慰謝料というと、要するに精神的に傷ついたことの代償というわけですから、どうやったら金銭に換算できるのかが問題になります。
 この点、交通事故の場合は、慰謝料と言っても、傷害慰謝料(入通院慰謝料)、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種があり、それぞれ算定基準が異なっています(また、ややこしいことに算定基準自体いくつかあったり、地域によって違ったりもします。)。
 とはいえ、慰謝料の性質上、その算定は諸事情の総合考慮による必要があるでしょうから、「どんな事案でも基準に従って算定すればいい」とか「誰が計算しても同じ結果になる」というものでもないので、単にインターネットで入手した知識では正確な算定は困難です。
 また、裁判所の認定も、慰謝料については、どうしてその額になったのか説明不足な場合が多く、ときには釈然としない場合もあります。特に、控訴する場合には、原判決がなぜそのような算定に至ったかがわからないと、そもそも反論できないので、算定根拠は明確にしてもらいたいのですが、慰謝料の性質上、それは難しいということなのでしょう。
 これが交通事故以外だともっとややこしくなるんですが、さしあたり交通事故の基準が流用できそうな場合には、交通事故の基準によって算定することもよくあります。

投稿者: 小島法律事務所

2022.02.04更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による交通事故訴訟の解説です。

 交通事故の被害者が加害者(加害者側保険会社)から受領した治療費について、本来支払われるべきでないのに支払われてしまったという特殊な事情がある場合、加害者から被害者に対する不法行為に基づく損害賠償請求あるいは不当利得返還請求が認められることがあります。

 普通の事件と異なるのは、①実際に支払ったのは加害者側保険会社であると思われること、②(不当利得として処理する場合)支払先は医療機関であるにもかかわらず、利得したのは被害者であるとされることです。

 この点についての裁判例としては、①広島地裁平成29年2月28日判決(自保1997)、②名古屋高裁平成31年4月11日判決(自保2051)があります。

投稿者: 小島法律事務所

2022.01.28更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による最近の交通事故事件の特徴についての解説です。
 かつては、過払金返還請求訴訟(不当利得返還請求)が多数提起されていましたが、過払金返還請求訴訟が減ったことにより訴訟の件数が減っているにもかかわらず、交通事故訴訟の件数については、むしろ増加しているような印象を受けます。もし増加しているとすれば、それは、弁護士費用特約が普及することにより、交渉、訴訟ともに弁護士に対して委任することが容易になっていることが原因だと思います。
 また、弁護士費用特約を用いた場合、いわゆるタイムチャージ契約が可能なせいか、事案の終了まで長期間を要する事件も増えた印象です。
とはいえ、交通事故事件は専門的な知識を必要とする分野なので、どの弁護士に任せても同じような結果になるとは到底思えません。できる限り信頼できる弁護士に相談していただきたいと思います。

投稿者: 小島法律事務所

2022.01.21更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による交通事故の過失割合についての解説です。
 交通事故の過失割合については、通常、「別冊判例タイムズ38号」という書籍を使って判断します。
 また、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(いわゆる「赤い本」)にも、過失割合についての記載があります。
 この2冊は、交通事故事件を扱う弁護士なら誰でも持っているとは思いますが、過失割合についての記載が若干違う場合もあります。
 今回は、車同士の事故のうち、交差点における青信号車と赤信号車の出合い頭事故を取り上げます。この事故態様は、100:0の典型と言えます。
 したがって、通常は問題になりえないことから、弁護士が扱うケースは少ないのですが、これが双方ともに青信号主張だと、かなり難しい事件になります。

<別冊判例タイムズ38号>
 交差点における直進車同士の出合い頭事故
 信号機により交通整理の行われている交差点における事故
   青信号車と赤信号車との事故【98】
1 基本過失割合
  0:100
2 修正要素
(1)青信号車
 ア 何らかの過失又は相手車の明らかな先入:+10
 イ 著しい過失:+10
 ウ 重過失:+10
(2)赤信号車
 ア 著しい過失:-5
 イ 重過失:-10

<赤い本>
 【29】別冊判例タイムズ38号と同様の記載。

投稿者: 小島法律事務所

2022.01.14更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自賠責保険用の診断書・診療報酬明細書」の解説です。

 交通事故の多くの場合、交通事故により受傷して治療を受ける際の治療費に関して、相手側の任意保険会社が窓口になって、自賠責保険と任意保険の保険金を一括して扱い、病院などの医療機関に直接病院に支払うサービスを行っています(このサービスのことを「一括対応」と呼びます。)

 しかし、この一括対応は、相手側の任意保険会社が任意に行っているものであることから、治療経過及び症状の推移等を踏まえて、症状固定時期に至ったとの判断のもと、相手側の任意保険会社が、一括対応を打ち切ることも多々あります。 また、相手側の任意保険会社が、事故態様を踏まえて、当該事故と受傷との間に因果関係が認められないとして、一括対応を行わないとの判断を行う場合があります。
 この点、相手側の任意保険会社が一括対応をしない場合、治療費等については、「被害者請求」という方法で対応することが考えられます。

 被害者請求とは、被害者が、自賠法16条に基づき、加害者の自賠責保険会社に保険金を請求することをいいます。
 被害者請求をする際に、一括対応してもらえなかった治療費については、通院した病院の医師に、自賠責保険用の診断書と診療報酬明細書を書いてもらい、その診断書と診療報酬明細書を提出する必要があります。なお、この診断書と診療報酬明細書は、医師の判断もありますが、多くの場合1か月ごとに作成します。
 また、自賠責保険用の診断書と診療報酬明細書は、当該事故と受傷との因果関係を証明するために使用するものであることから、怪我や病気で仕事を休む際に提出する診断書・診療報酬明細書よりも記載する分量が多くなります。
そのため、自賠責保険用の診断書と診療報酬明細書を医師に書いてもらうためには、費用が掛かります。なお、病院によって費用は異なりますが、診断書と診療報酬明細書で1万円程度はかかることが多いです。

投稿者: 小島法律事務所

2022.01.07更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による交通事故の「慰謝料の8割での示談の根拠」についての解説です。

 慰謝料の算定においては、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準のいずれかの基準が用いられます。
 また、それぞれの基準による慰謝料の額は、裁判基準>任意保険基準>自賠責基準の順で、金額が多くなります。
 そのため、弁護士が介入する前の保険会社から提示される慰謝料の額は、自賠基準か任意保険基準で算定されることが多いです。
 一方で、依頼者からの委任を受け、弁護士が相手保険会社との示談交渉に介入した場合、慰謝料については、裁判基準を用いて算定し、相手保険会社に請求して、示談交渉に臨みます。
 そして、相手保険会社との交渉おいて、保険会社から「慰謝料については裁判基準の8割程度で」と言われることが多々あります。
 依頼者からすれば、請求した金額からいきなり2割減額されるのですから、この根拠は何なのか気になるところかと思います。
 この点、この「8割」の根拠については、裁判官の講演で、「保険会社としては、裁判基準に準拠すべきであり、ただ、訴訟になった場合のコストや時間をかけないで解決することから、裁判基準から多少減額することに合理性が認められ、落ち着きとしては、裁判基準の8割程度ということになるのでしょうか」との発言によるものと考えられます(『新しい交通賠償論の胎動』東京三弁護士会交通事故処理委員会編集)。
 しかし、8割は、あくまで示談における落ち着きどころの一例であって、実際の交渉の中では、8割以上の金額で示談することもあります。

投稿者: 小島法律事務所

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