2021.03.02更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「家事従事者の休業損害」についての解説です。

【休業損害の算定】
 休業損害の算定方法は、一般的に、基礎収入×休業日数で算定されます。
 主婦等の家事従事者は、収入を得ていませんが、判例上、家事労働に属する多くの労働は、社会において金銭的に評価され得るものであり、家事従事者が家事に従事することができなかったことによる損害を認めることができるとされています(最高裁判所昭和49年7月19日判決)。
 そして、基礎収入としては、判例上、女性労働者の平均賃金に相当する財産上の収益をあげるものと推定するのが相当であるとされています(同判決)。

【独り暮らしの場合】
 家事労働に従事することが財産上の利益を挙げていると評価されているのは、それが他人のために行う労働であるからとされているため、例えば、独り暮らしのように、自分自身の身の回りのことを行うことは、社会的に金銭的に評価される労働とはされていません。
ですから、独り暮らしで無職の女性が受傷した場合には、家事労働の休業損害は認められていません。

【基礎収入】
(1)専業主婦
 女性労働者の平均賃金は、賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均賃金が用いられています。
 そして、原則として、基礎収入は、全年齢平均賃金で算定されていますが、家事労働は、その生活環境によって様々ですので、年齢、家族構成、身体状況及び家事労働の内容等に照らして、生涯を通じて全年齢平均賃金に相当する家事労働を行い得る蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、年齢別平均賃金を参照して適宜減額されることもあります。
 具体的には、家事従事者が、高齢であり、その労働は通常の主婦の労働量よりも少ないことが明らかである場合には、全年齢女子平均賃金の7割を基礎収入とするといったものです。

(2)有職の主婦の場合
 有職の主婦等の方は、労働によって収入を得ていますが、この場合の基礎収入は、実収入額が全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額によりますが、下回っているときは(1)に従って算定されることになります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.02.26更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「事業所得者の休業損害」についての解説です。

【事業所得者の休業損害の算定について】
 休業損害とは、事故によって怪我をした際、その怪我によって休業したために得られなかった減収分(差額)を損害とするものです。
この点、事業所得者は、個人事業主、自営業者、自由業者(弁護士、芸能人、プロスポーツ選手等)など、多くの事業形態がありますが、事業所得者の休業損害は、現実の収入減があった場合に認められることになります。

 そして、事業所得者の休業損害の算定は、基本的に、事故前の申告所得額を基礎収入として、その日額に休業した期間の日数を乗じて、休業損害を算定する計算方法が用いられます。
 また、事業所得者が休業中も将来の事業継続のためにやむを得ない必要があるものとして、家賃や従業員の給与等の固定費を支出している場合には、この固定費も損害として認められています。

【基礎収入の認定】
 裁判では、事業所得者の基礎収入は、原則として、確定申告書控え、その添付書類(白色申告者の収支内訳書の控え、青色申告者の場合の所得税青色申告決済書の控え)等によって証明された事故の前年度の所得(所得の変動が大きい場合には、事故前の数年度の所得の平均額)によって認定されることが多いです。

【事業所得者における諸問題】
1 裁判で申告外所得を主張することは許されるのか
 事業所得者の方の中には、確定申告以外の所得を有している方や、確定申告が行われたものの、税務対応のため、収入の除外又は経費の水増しによる過少申告をしてしまい確定申告額と異なる所得を有している方もいるかと思われます。
そのような方の場合、裁判で、所得額として申告外所得を主張することが許されるのか問題となります。
 この点、申告外所得の主張は、その所得自体が違法に得られたものではなく、公序良俗や信義則に反するものではないため、満額認められるかは問題がありますが、裁判で、申告外所得を主張すること自体は許されるものと考えられています。

2 裁判で申告外所得が認められるためには
 一般的に、裁判における事実の証明は、証明しようとしている事実の存在が合理的な疑いを入れない程度まで証拠による証明を必要としています。
 この点、申告外所得を主張することは、確定申告時の主張と矛盾する主張になるため、裁判所は、申告外所得の主張を認めるかについては、より厳格に判断する傾向にあります。
 そのため、申告外所得が認められるためには、収入(総売上高)及び原価や営業経費・店舗設備費等の諸経費の存在について、信用性の高い証拠による合理的な疑いを入れない程度の証明の必要があります。

 そして、証拠としては、収入及び経費について、通常の業務の過程で作成される会計帳簿、伝票類、日計帳、レジの控え等が考えられます。
 また、当該証拠の信用性は、裁判上、高度なものを求められていますので、信用性の判断は厳格に判断されます。具体的には、証拠として提出された文書の体裁・記載内容、作成経緯等から判断され、場合によっては、前の確定申告の内容や一般の統計資料(総務省統計局編の個人企業経済調査年報の産業別分類表等)の数値を参考とすることもあります。

『参照書籍「交通事故による損害賠償の諸問題Ⅳ 損害賠償に関する講演録」143~148頁』

投稿者: 小島法律事務所

2021.02.19更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「給与所得者の休業損害 その3 年次有給休暇の使用と休業損害」についての解説です。

給与所得者の休業損害その1』を見て頂くと、より分かりやすくなります。

【休業損害の算定方法】
 休業損害を算定する方法としては、(1)休業により現実に生じた減収額を算定する方法と(2)事故前の収入日額等の基礎収入に休業期間を乗じて算定する方法があります。

 (2)の計算方法の場合は、実務上、下記の3つの考え方のいずれかが用いられます。
①休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、これに休日を含む休業期間を乗じる方法
②休日を含まない実労働日1日当たりの平均額を基礎収入とし、これに実際に休業した日数を乗じる方法
③休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、実際に休業した日数を乗じる方法

 これらの考え方は、どれかかが常に適しているという関係にあるのではなく、給与所得者の休業状況、収入日額の立証の難易度、正確な収入日額の算定の難易度等に応じて使い分けて用いられます。

【年次有給休暇について】
 年次有給休暇は、労働基準法39条に規定されています。
 そして、労働者が年次有給休暇を使用した場合、使用者は、就業規則等で定めるところにより、平均賃金、通常賃金、これらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金又は健康保険法上の標準報酬日額を支払うべきこととされています(39条9項)。
 また、実務上、年次有給休暇は、財産的価値を有するものされています。

【年次有給休暇の使用は損害か】
 裁判実務において、年次有給休暇使用分を休業による損害として認められることについては争われないことが多く、判決においても、休業日に年次有給休暇を使用して収入の減少を免れた場合、年次有給休暇使用分は休業による損害として評価されています。
 そして、年次有給休暇使用分を休業による損害とする根拠については、①年次有給休暇を使用しても、休業損害が発生しているとして、年次有給休暇を使用せずに休業した場合と同様に考える考え方と、②年次有給休暇を使用する権利または利益を喪失したとして、その喪失または使用せざるを得なかったことを損害として認める考え方があります。
 なお、判決においては、①と②のいずれかの考え方を採用したかが明示されていないことがほとんどです。

【年次有給休暇を使用した場合の算定方法】
 年次有給休暇を使用した場合の額は、就業規則等により定められていますので、その規定に従って、1日あたりの金額を計算できると思われます。
 ですから、年次有給休暇を使用して休業した日の休業による損害は、有給休暇を使用せずに休業した日の休業損害の計算方法と同様の方法で算定されることがほとんどです。

【通院等のために休日等を利用した場合との違い】
 通院等で労働契約上の休日を利用した場合も、年次有給休暇を使用した場合と同様に、休業損害として算定されるのか問題となります。
 この点、労働契約上の休日は、年次有給休暇とは異なり、労働契約に基づく給与の支払いに直接関係するものではありません。また、通院等のために要した時間は、慰謝料算定の考慮要素とされています。
ですから、労働契約上の休日は、年次有給休暇と同じ程度に、具体的な財産的価値を有しているとは考え難く、休業損害として算定されないと思われます。

【参照書籍:『損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2018(平成30)』40~43頁】

投稿者: 小島法律事務所

2021.02.12更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「給与所得者の休業損害 その2 日雇労働者とアルバイトの場合」についての解説です。

 前回に続き、給与所得者の休業損害について解説いたします。
 前回の『給与所得者の休業損害その1』を見て頂くと、より分かりやすくなります。

【給与所得者の休業損害の計算方法】
 休業損害の計算方法としては、事故前の収入日額等の基礎収入に休業期間を乗じて算定する方法があります。
 この計算方法の場合は、実務上、下記の3つの考え方のいずれかが用いられます。
①休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、これに休日を含む休業期間を乗じる方法
②休日を含まない実労働日1日当たりの平均額を基礎収入とし、これに実際に休業した日数を乗じる方法
③休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、実際に休業した日数を乗じる方法

【給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院を行っている場合】
 日雇労働者やアルバイトの方々は、労働契約上、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されているはずなので、適切な証拠があれば、事故前に実際に労働した単位時間(実労働日1日)当たりの基礎収入を算定することが可能と思われます。

 そして、アルバイトで給与を得ている方の多くは、労働契約上、各週・月のどの日に勤務するかが概ね決まっていると思われます。その様な方々が事故に遭わなかった場合、事故に遭われた方は、どの日に労働していたかを認定することができると思われます。そのため、②の計算方法で休業損害を算定することができます。

 ですから、このような場合に被害者側が②の計算方法で算定した休業損害を請求しているにも関わらず、③の計算方法を採用することは、休業損害を過少に認定することになりますので、適切とはいえないと考えられます。

 他方で、日雇労働者の方々は、通常、短期の契約を予定していることが多いと思われます。そして、その様な方々は、事故の発生の時点で、将来どの日に労働するかが決まっていないことが多いと思われます。また、アルバイトの方々の中にも、労働契約上、各週・月のどの日のどの時間に勤務するかかが決まっていない方もいると思われます。

 この様な形態の給与所得者の方々については、証拠上、事故に遭わなかった場合、どの日に労働をしていたかを認定することが困難であるため、②の計算方法で休業損害を算定することが難しいとされています。

 しかし、この場合でも、事故に遭わなかった場合と比較して、通院等によって、その分の労働の機会を失い、現実の収入が減ったとみることができますので、休日を含んだ一定期間の給与の平均日額を基礎収入とし、これに通院日等を乗じる方法(③の計算方法)で休業損害を算定することができると考えられます。

【参照書籍:『損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2018(平成30)』39、40頁】

投稿者: 小島法律事務所

2021.02.05更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「給与所得者の休業損害 その1」についての解説です。

 休業損害とは、事故によって怪我をした際、その怪我によって休業したために支給を受けられなかった減収分(差額)を損害とするものです。

 休業損害を算定する方法としては、(1)休業により現実に生じた減収額を算定する方法と(2)事故前の収入日額等の基礎収入に休業期間を乗じて算定する方法があります。
 (2)の計算方法の場合は、実務上、下記の3つの考え方のいずれかが用いられます。
①休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、これに休日を含む休業期間を乗じる方法
②休日を含まない実労働日1日当たりの平均額を基礎収入とし、これに実際に休業した日数を乗じる方法
③休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、実際に休業した日数を乗じる方法

 これらの考え方は、どれかかが常に適しているという関係にあるのではなく、給与所得者の休業状況、収入日額の立証の難易度、正確な収入日額の算定の難易度等に応じて使い分けて用いられます。

 ここからは、休業損害でよくあるケースで説明します
【ケース1】給与所得者が継続して完全休業する場合
 休業損害を正確に算定するため、②の方法によるべきとの考え方もありますが、完全休業の期間がある程度長期の場合は、①でも②でも、結論に大きな差は出ないので、いずれの方法でもよいとされています。


【ケース2】給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院していた場合
 給与所得者は、休業損害証明書等の適切な証拠がある場合には、事故前の給与の金額に基づいて実労働日1日当たりの平均給与額を算定することができる上、労働契約によって、就労すべき日が定められているため、通院をした日のうち、交通事故がなければ就労していた日はいつなのかが認定できます。ですから、被害者側が②の計算方法で算定した休業損害を請求しており、証拠上、事故前の具体的な稼働日数、支払を受けた給与の金額を認定できる場合には、②の計算方法によるのが相当です。

 一方で、休業損害証明書が提出されないなどの事情等で、証拠上、実労働日1日当たりの平均給与額を認定することができない場合には、③の計算方法によって休業損害を算定せざるを得ないことも考えられます。この場合、事故前年の源泉徴収票記載の給与額を365日で割った金額を基礎収入とし、これに実際の休業日数を乗じる方法等が用いられます。

 なお、休業損害証明書が発行されない場合でも、就業規則や事故前年度の源泉徴収票等を用いて、②の計算方法で算定することも考えられます。

【参照書籍「損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)2018(平成30年)」37頁】

投稿者: 小島法律事務所

2021.01.22更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「車両の全損と車両価格の算定」についての解説です。

 交通事故の被害で自分の車両が損傷した場合、加害者に対して、車両の損害について損害賠償請求を行うことになります。今回は、車両が全損となった場合について解説します。

 まず、車両の全損として請求できる場合は、以下の3つのいずれかにあたる場合です。
①被害車両が物理的に修理不能と認められる状態(物理的全損)
②被害車両が経済的に修理不能と認められる状態(経済的全損)
③被害車両の所有者においてその買替えをすることが社会通念上相当と認められるとき

 ①物理的全損とは、整備修理技術者がみて修理ができないと判断する場合です。具体的には、手の施しようがないほど、激しく損傷している状態や、損傷が修理技術の水準を超えていて技術的に修理できない場合が、これにあたります。
 ②経済的全損とは、技術的に修理が十分可能であるが、その修理見積額が事故直前の車両時価(消費税相当額を含む)に車両買替諸費用・残存車検費用・廃車解体費用を加算した額を著しく上回る場合です
 ③社会通念上相当と認められるときとは、社会一般で受け容れられている常識または見解のことで、フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷が生じたことが客観的に認められる場合です。そのため、事故にあった車両は縁起が悪いや色むらが出るといった理由等での買替えは、社会通念で否定されることがあります。

 車両を全損として請求する場合、車両時価額の算出が特に問題となります。
 この車両時価額は、判例では、「当該自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によって定めるべき」(最高裁昭和49年4月15日判決 民集28巻3号385頁 交民集7巻2号275頁)としています。そして、裁判所は、価格算出の際の参考としては、第1次的にはオートガイド自動車価格月報(通称レッドブック)の掲載価格を、第2次的には中古車両の市場価格を参考にする傾向にあります。
 また、自動車の初年度登録から長期間が経過し、車両の中古車市場における価格を算定すべき適切な資料がない場合等の特段の事情がある場合には、課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によって定めることになります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.01.07更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「駐車場での事故における過失相殺」についての解説です。

【過失相殺とは】

 過失相殺の定めである民法722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」としています。これは、被害者側にも過失があったときは、損害賠償額算定にあたって、その過失を斟酌するというものです。

 その斟酌にあたっては、加害者の過失と被害者の過失との対比により過失の割合を評価します。

 

【交通事故における過失割合】

 道路交通法が適用される場合の過失の考慮要素としては、①「優先関係」②「遵守事項」③「優者の危険負担」④「要保護者修正」⑤「運転慣行」が挙げられます。   

 ①優先関係とは、道路交通法上の優先関係です。

 ②遵守事項とは、道路交通法上の規定事項です。

 ③優者の危険負担とは、交通事故の際の各当事者の行為の態様や程度が同じ様な過失の場合は、優者が危険を負担すべき、という考え方です。具体的には、人か車なら車に、単車と車なら車にと、より加害の危険性の大きい方が、責任を負担するというものです。

 ④「要保護者修正」とは、幼児・児童・高齢者・障がい者等、社会生活上、通常人よりも自己の安全を守る能力の低い人たちの過失の取り扱いについては、有利に扱うとするものです(道路交通法14条、71条2号、2号の2、2号の3)。

 これらの要素のもと、過失割合を数値化した基準を示したものが、『損害賠償額算定基準』(いわゆる赤い本)等になります。道路交通法が適用される交通事故については、これを基準として適用し、過失割合が出されることが多いです。

 

【駐車場内の事故における過失割合】

 道路交通法が適用されるのは、「道路」での通行だけです(道路交通法1条)。道路交通法上、「道路」とは、道路法2条1項に規定する道路、道路運送法2条8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所である(道路交通法2条1項1号)とされています。「一般交通の用に供するその他の場所」とは、判例上「不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所」であるとされています。「不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所」は、実務上、①道路としての体裁があり、②不特定の人や車の通行が自由に通行すること認められて、かつ、③反復・継続的な交通が客観的にわかる場所であるかで判断します。そのため、駐車場は、道路交通法上の「道路」とであるものとそうではないものが存在することになります。

 しかし、「道路」でない駐車場内において、運転者は、車を運転している以上、道路交通法に定められている運転・通行方法等や駐車場内での通行方法に従うだろうと期待し、それを前提に行動するのが通常です。そのため、道路交通法上の「道路」にあたらない駐車場内においても、運転者は、駐車場の客観的状況等から道路交通法上の義務と同様の義務を負うことが多いとされています。ですから、駐車場内の事故でも、交通事故の様に、過失割合を判断します。

 駐車場における事故の過失割合を決定するにあたっては、注意義務違反の有無、不注意の程度、駐車場内で決められた通行方法の指示・遵守事項の違反の有無、優者の危険負担や要保護者修正等も考慮されます。これらをもとに、過失割合を数値化します。

 駐車場は、多種多様なため、画一的に基準を決めるのが、難しいところがあります。そのため、具体的な数値については、裁判例や関連書籍等をもとに、類似例がないか調査し、判断することになります。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.24更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自転車によるあおり運転」についての解説です。

 埼玉県において10月、道路交通法であおり運転の処罰規定が新設されて初めて、自転車によるあおり運転を行ったとして通称「ひょっこり男」と呼ばれる男性が逮捕されました。11月には同罪で起訴もされています。

 この事件は、自転車を運転していた男性が、道路を蛇行運転したうえで、対向車線を走る車の前に飛び出し、対向の車を急停車させるなどしたものです。

 道路交通法では、中央線のある道路の反対車線にはみ出すのは通行区分違反(17条4項)です。同項の対象は「車両」ですが、自転車は軽車両(2条11号イ)という「車両」(2条8号)ですから、もちろん違反の対象となります。

 そして、他の車両等の通行を妨害する目的で、車両が通行区分違反を行うなどのあおり行為を行った場合、いわゆる「あおり運転」として処罰の対象となりえます(117条の2の2第11号イ)。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 報道された映像を見る限りでは、今回逮捕された男性は、故意に反対車線の車両の前に出ているように見受けられますから、「他の車両等の通行を妨害する目的」があったことが伺われます。

 今回のように、あおり運転として禁止されている行為の多くは、自動車のみならず、自転車を運転する人もその対象になります。また、あおり運転といえば後方から相手に急接近するような形態を思い浮かべますが、対向車線などからのあおり行為も、あおり運転に該当することがあります。

自転車を運転する方も、これらの点に留意して、気を付けて運転するべきだといえます。

 ちなみに、仮に自転車のあおり運転が原因となって自動車との衝突事故が発生し、自転車に乗っていた人が怪我をしたような場合には、自動車側の過失が否定され、自転車側からの賠償請求はできないという事態に陥る可能性もありえます。過去には、あおり運転を行った者からの損害賠償請求が否定された裁判例もあります(詳しくはこちら)。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.17更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自転車保険の義務化」についての解説です。

2020年10月から、福岡県で条例(正式名称は福岡県自転車の安全で適正な利用の促進及び活用の推進に関する条例です。以下では、単に「福岡県自転車条例」といいます。)により自転車保険の加入が義務化されました(福岡県自転車条例17条1項)。自転車保険の加入義務化は、2015年に兵庫県が取り入れたのを皮切りに、大阪府、滋賀県、東京都、神奈川県など20以上の都府県と政令市でなされています。

 この点、自転車条例で加入が義務付けられている自転車保険は、「自転車保険」という名称の保険に限らず、個人賠償保険や自動車保険の特約など、広く自転車事故による事故の被害者の損害を賠償しうる保険・共済であればよいとされています(福岡県自転車条例2条13号)。

 また、自転車保険に加入すべき義務者は①自転車を使用する者(未成年の場合は親権者)(福岡県自転車条例17条1項、2項)②事業に際し労働者に自転車を使用させる事業者(同3項)③自転車貸付業者(同4項)となっています。

 ただし、上述した義務に違反したからといって、何らかの罰則が設けられているわけではありません。

 とはいえ、自転車での事故は、時として1億円にも上る賠償責任が生じることもありますから、自転車保険に加入されていない方は、加入をされた方がよいと思います。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.17更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自賠責の20万円ルール」についての解説です。

 自賠責の保険金が被害者の過失によって減額される場合(重過失減額)は、通常とは異なる特殊な減額の計算がされます(詳しくは前回の記事をご参照ください)。

 そして、自賠責の保険金が、重過失減額の対象となる場合に、もう一つ特殊な点があります。いわゆる「20万円ルール」と呼ばれるものです。

 被害者が怪我をして人身損害が生じた場合、被害者の過失割合が7割以上10割未満の場合には、自賠責から受け取れる保険金の金額は、2割減になるのが通常です。ただし、①損害額が20万円を下回っている場合には、減額されずまた②減額によって20万円を下回る場合には、20万円が支給額になるというルールがあります。これが、通称20万円ルールと呼ばれるものです。

 自賠責において、この20万円ルールと重過失減額の制度があることによって、被害者請求と裁判とで、金額に差が生じることがあります。例えば、被害者の怪我での人身損害が15万円、過失割合が7割の事故の場合、自賠責に請求した場合には、回収できる金額は15万円全額になる可能性が高いのに対し、裁判で請求した場合には、15万円から過失の7割分差し引かれるので、4万5千円が認められるに過ぎない、という結果が生じることがあります。

 つまり、場合によっては、裁判ではなく、自賠責への請求のほうが得になる場合もありうるということです。

 ただし、弁護士であっても、交通事故分野に明るくない方は上記の自賠責のルールを知らないこともありえます。そのような場合には、結果的に被害者の方が損をすることになりますから、交通事故の分野は、経験と実績のある弁護士へのご相談をお勧めします。

投稿者: 小島法律事務所

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