2021.09.22更新

今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「青色申告と休業損害」についての解説です。

 

【事業者の休業損害の算定】
 今回は、個人事業主(事業所得者)の休業損害の算定でよく用いられる、事故前の所得をもとに休業損害の算定する方法に関して、青色申告の場合を、ご説明します。
休業損害は、事故による怪我のために働けず、実際に下がってしまった収入を填補することを目的にしていることから、休業損害が認められるのは、現実の収入減があった場合だけです。
 以下では、現実の収入減が明らかである、個人事業主(事業所得者)が完全休業していたことを前提としています。

 事業所得者の休業損害は、事業者の基礎収入に休業日数を乗算して算出します。
 また、基礎収入は、事故前年度の所得金額に固定経費を加算して、その合計額に本人自身の稼働による利益の割合(寄与率)を乗じます(固定費の加算については、ブログ「事業所得者の休業損害」をご確認ください。)。
 そして、事故前年の所得金額は、「損益計算書」の「所得金額㊺」に、「青色申告特別控除額㊹」、「専従者給与㊳」を加算した合計額になります。

 

【青色申告特別控除額とは】
 この青色申告特別控除額は、所得金額から最高65万円又は10万円を控除するという課税上の特典です。
 この点、青色申告特別控除額は、経費として控除されるものではないため、所得額に青色申告特別控除額を加算します。

 

【専従者給与とは】
 「専従者給与」とは、事業主と生計を同一にする家族へ支払った給与のことをいいます。そして、「損益計算書」には基本的には経費として計上することができません(所得税法56条)。
 ただし、青色申告の場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署長へ提出し、給与の額が適正額であれば、経費として計上することができます。また、白色申告の場合は、一定額を経費に計上することができます(所得税法57条)。

 

【本人の寄与率について】
 事業主は家族及び従業員の協力を得て経済活動を行っているため、事業所得は、事業主本人が稼働して特に生み出した利益(本人寄与による利益)に、家族及び従業員が働いて生み出した利益が加えられたものです。
 そのため、事業所得から家族及び従業員が働いて生み出した利益を除いた残りの利益が、本人寄与による利益となります。
 そして、建前上、青色申告の場合、損益計算書に専従者給与として計上できる金額は、専従者への給与として適正な金額であることから、本人の利益は、以下の計算式で算出できます。

本人寄与による利益
=(「所得額㊺」+「青色申告特別控除額㊹」+「専従者給与㊳」)-「専従者給与㊳」
=「所得額㊺」+「青色申告特別控除額㊹」

 この点、損益計算書に計上されている専従者給与は、建前上、適正な給与額とされていますが、以下の例のように専従者給与として計上されている金額が適正な金額でない場合があります。以下では、所得金額+青色申告特別控除額の額が300万円、専従者給与として100万円が計上されていることを前提とします。

①専従者給与として、100万円が計上されているが、労働状況から200万円が適正な金額の場合という場合。

②配偶者は実際に働いていないが、節税のために専従者給与を計上している場合

 このような場合、本人寄与による利益を算出するため、損益計算書に計上された「所得額㊺」に「青色申告特別控除額㊹」と「専従者給与㊳」を加算した総額から適正金額の専従者給与額を差し引くか、本人の寄与率を乗算するかの修正を行う必要性があります。
 なお、本人の寄与率は、本人の寄与分の利益を事故前の所得金額で割ることで推認することができます。

 具体的には、①の場合、本人の利益は、300万円+100万円-200万円=200万円となり、本人寄与率は、50パーセントと推量されます。
 そして、②の場合、本人の利益は、300万円+100万円-0円=400万円となり、本人寄与率は、100パーセントと推量されます。


【まとめ】
 このように、事業所得者の基礎収入を確定申告書で算定することは、複雑である上、専従者の労働実態といった個別具体的な判断を必要とすることがあるので、確定申告書等の資料をよくよく確認する必要があります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.08.31更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「残クレと評価損」についての解説です。

【残クレについて】
 最近では、残価設定型のクレジット契約(いわゆる残クレ)を締結して、車両の購入を行う方が増えてきていると思われます。
この残価設定型のクレジット契約とは、車両の購入時に、あらかじめ3年から5年後の残価(下取り価格)を設定し、それを差し引いた額を分割払いするというものです。なお、残価とは、将来車を買い換えるときに残っている評価額(下取り価格)のことです

 そして、ローンの返済期間終了後は、①車両を返却して新しい車を購入する(乗り換える)②残価を払って車両を買い上げる(所有する)③車両を返却する(手放す)のいずれかを選択することになります。

 一方で、3年から5年後の車の状態が残価設定時の条件にあてはまっていないと、差額分の支払い(清算金)が発生します。

 そのため、残価設定型のクレジット契約で購入した車両で、事故に遭い、車両の評価額が下落した場合に、残価から下落した価値(評価損)を損害賠償請求できるか問題となります。(評価損については、前回ブログ「評価損」を参照。)

 

【下落した価値の請求について】

1 使用者が請求できるか

 事故車両の評価損は、交換価値の下落であり、これを把握しているのは所有者であることから、使用者は、原則として、評価損の損害賠償を求めることはできないとされています。

 残価設定型のクレジット契約で車両を購入した場合でも、現実に車両を運転している人は、ローンを完済し、残価を支払うまでは、所有者でなく使用者であるため、原則として、使用者は下落した価値(評価損)を請求できないと考えられています。

 一方で、使用者の請求を認めた裁判例が存在します。
 大阪地方裁判所平成27年11月19日判決では、以下の理由で使用者による評価損に関する損害賠償請求を認めています。

 『留保権者が自動車の売主ではなく,立替払いを行った信販会社であるような場合には,当初から評価損に係る損害賠償請求権を自らに帰属させ,行使することについてはさほど関心を持っておらず,その点については使用者の権利行使に事実上委ねる意向を有していると一般的にはいえる。また,取引上の評価損が認められる場合,実務上は修理費の一定額として認定される傾向にあるため,高額とはならないことが多い。したがって,こうした事情を考慮すれば,原告と株式会社Bとの間では,立替金完済前であっても,取引上の評価損に係る損害賠償請求権につき,使用者である原告に帰属させ,原告において行使するとの黙示の合意がなされていると認めるのが相当である。』

 このように、裁判例では、契約の性質と評価損の実情から、所有者と使用者との間で、使用者に評価損に係る損害賠償請求権についての権利を、使用者に帰属させ、使用者が行使するとの黙示の合意の存在を前提に、使用者による評価損に関する損害賠償請求を認めています。

 

2 評価損の損害額

 使用者による評価損に関する損害賠償請求が認められる場合、次に評価損の損害額はいくらなのか問題となります。損害額については、残価から実際に下落した額が損害額だとも考えられそうです。

 この点、評価損の損害額については、裁判例上、修理費の数十パーセントとする傾向にあると思われます(福岡地方裁判所行橋支部令和3年1月19日判決(LLI/DB 判例秘書登載)など)。(なお、評価損の算定方法については、前回の記事「評価損」を参照してください。)

 これに対して、特殊な例ではありますが、返却の際に生じた追加の支払額(清算金)に相当する額を認めた裁判例も存在します。

 横浜地方裁判所平成23年11月30日判決(交通事故民事裁判例集44巻6号1499頁)は、被害者が、事故前に、契約で車両の返却を選択し、その後事故に遭い、車両の価値下落分の追加支払い余儀なくされていた事案です。

 この裁判例では、以下の理由で、清算金に相当する額を損害額として認めました。

 『評価損は,事故による修理後の車両の評価額と事故前の車両の評価額を比べたときの下落額によるのではなく,修理費用に一定額を乗じて算定されることが多いが,そのようにして算定されるのは,被害者が修理後もその車両を使用し続けることが想定されているため,上記下落額が事故の時点では現実化していないからであると解される。これに対し,事故の時点で価格の下落が現実化しているのであれば,その賠償を認めるのが,事故がなかった状態を回復するという損害賠償の本旨にかなうものであり,被害者に不当な利得を得させることにもならないから,その賠償を認めるべきであると解される。』
『前記第2,1(3)の事実によると,本件において,原告は,本件事故前に,車両返却を選択しており,証拠(甲5,6,9,10)によると,本件事故がなければ,原告車の返却時に追加の支払は発生しなかったところ,本件事故による原告車の価格低下によって追加の支払が発生したと認められるから,その追加の支払額(事故による修理後の車両の評価額と事故前の車両の評価額を比べたときの下落額)相当の損害が本件事故時に現実化しているということができる。したがって,原告は,被告に対して,その追加の支払額に相当する額の賠償を求めることができるというべきである。』

投稿者: 小島法律事務所

2021.08.18更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「評価損」についての解説です。

【評価損とは】
 評価損とは、損害車両に対して十分な修理がなされた場合であっても、修理後の車両価格が、事故前の価格を下回り、減価することです。

 裁判例では、減価される主な事情としては以下の事情を挙げています(東京地裁昭和61年4月25日判決・判時1193号116頁・判タ605号96頁)。

①修理技術上の限界から、顕在的に、自動車の性能、外観等が、事故前より低下すること
②事故による衝撃のため、車体、各種部品等に負担がかかり、修理後間もなくは不具合がなくとも経年的に不具合の発生することが起こりやすくなること
③修理の後も隠れた損傷があるかもしれないとの懸念が残ること
④事故にあったということで縁起が悪いということで嫌われる傾向にあること

 また、評価損は技術上の評価損と取引上の評価損に分けられます。
 技術上の評価損とは、車両の修理をしても完全な原状回復ができず、機能や外観に何らかの欠損が存在していることにより生じた評価損のことをいいます。
 技術上の評価損については、これが損害賠償の対象となり得ることについて、ほぼ争いはないものといわれています。

 取引上の評価損とは、車両の修理をして原状回復され、欠陥が残存していないときでも、中古車市場において価格が低下した場合の評価損を指すものとされています。
 取引上の評価損については、これが損害賠償の対象となり得るかについて、争いがあります。

 

【評価損の算定方法】
 評価損については、初度登録からの期間、走行距離、修理の程度、車種等を考慮して認定します。
 評価損の算定方法としては、大きく分けて以下の4つが考えられます。
①修理費基準
 修理費基準とは、裁判所が認容した修理費の数十パーセントを評価損とする方法です。
②時価基準
 時価基準とは、裁判所が認容した被害車両の事故当時の時価の数十パーセントを評価損とする方法です。
 なお、妥当な時価算出が難しいことから、採用する裁判例は少ないですが、被害車両が初度登録後数か月しか経過していない様な極端に新しい車両の場合に、時価基準が用いられることがあります。
③差額基準
 差額基準とは、事故直前の車両売却価格と修理後の車両売却価格の差額を評価損とする方法です。
④財団法人日本自動車査定協会等の査定等を考慮して評価損を算定する方法。

 このように、算定方法としては4つの方法がありますが、裁判例の多くは①修理費基準を用いており、評価損の額は修理費を基準にして3割程度を上限として認めているものが多いです。

投稿者: 小島法律事務所

2021.08.13更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「後遺障害④ ~加重~」についての解説です。

 

【加重とは】
 「加重」とは、交通事故により新たに後遺障害が加わったことによって、障害等級表上、新たに生じた障害が事故前の既存の障害より重くなったことをいいます。
 この点、注意していただきたいのは、既存の障害が、自然的経過や交通事故と関係ない原因、例えば疾病や交通事故以外の災害等で重くなっても、ここでいう加重にはあたりません。
 また、同一部位に新たな障害が加わっても障害等級表上重くならなければ、加重とはなりません。

 

【加重の場合の取り扱い】

1 規定
 自動車損害賠償保障法施行令2条2項では、加重における損害の取り扱いについて、「既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによつて同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。」と定めています。

2 「既に後遺障害のある」とは
 「既に後遺障害のある」とは、既存の後遺障害が存在することをいい、既にあった後遺障害の原因が交通事故か否か、後天性のものか否かは問われません。

3 「同一部位」とは
 「同一部位」とは、同一の系列の範囲内のものをいいます(系列について)。
 ただし、系列が異なっても、欠損障害と機能の全部喪失は、部位ごとで見ると、最上位の等級であることから、これらの障害が後から加わった場合には、同一部位の加重として取り扱われます。
 例えば、右上肢の変形障害(系列番号19)があったところに、後から右上肢をひじ関節以上で欠損(系列番号18)が生じたときは、系列は異なるが同一部位であり、加重として取り扱われます。

4 加重の具体例
 先ほどの右上肢の変形障害(系列番号19)があったところに、後から右上肢をひじ関節以上で欠損(系列番号18)が生じた場合を例に説明します。
 後遺障害等級表上、右上肢の変形障害は、長管骨に変形を残すもの(12級8号)に該当し、右上肢をひじ関節以上で欠損は、1上肢をひじ関節以上で失ったもの(4級4号)に該当するので、自賠責の保険金額では、保険金額1889万円(4級4号)から、保険金額224万円(12級8号)を控除した1665万円の範囲で支払われることになります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.07.28更新

 飯塚市の小島法律事務所より、当事務所のお盆休みのお知らせです。

 誠に勝手ながら、2021年(令和3年)8月13日(金)~8月15日(日)の間、当事務所はお盆休みとさせていただきます。

 ご迷惑をおかけいたしますが何卒よろしくお願いいたします。

小島法律事務所

弁護士 小島邦夫

投稿者: 小島法律事務所

2021.07.21更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「後遺障害③ ~併合の基本ルールの例外~」についての解説です。

 後遺障害の認定内容については、自賠責保険会社が計算した提示を受けとることになりますので、本人や弁護士が後遺障害における併合の計算を行うことはほとんどありませんが、併合については、以下のルールの修正が存在します。

 

【障害の序列を乱す場合】

 前回の説明のとおり、系列の異なる複数の後遺障害が存在する場合、併合により後遺障害等級が繰り上げられることになります。
しかし、併合して等級が繰り上げられた結果、障害の序列を乱すことになる場合があります。この場合、併合の基本ルールのとおりに、後遺障害等級は繰り上げられません。
 例えば、右上肢を肘関節以上で失った障害と左上肢を手関節以上で失った場合があります。
 この場合、右上肢の障害は後遺障害等級4級4号に該当し、左上肢の障害は後遺障害等級5級4号に該当しますので、併合の基本ルールに単純に従うと併合1級となります。
 この点、後遺障害等級1級における両上肢に関わる障害は、後遺障害等級1級3号の「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」になりますが、例における左上肢の障害は手関節以上で失ったものであり、障害等級1級3号の状態に達しません。
 そのため、この場合の等級は併合2級とします。
 この様に、併合の基本ルールに従うことで障害の序列を乱す場合には、併合のルールが修正されることになります。

 

【組合せ等級】

 系列を異にする後遺障害が複数存在する場合、併合の基本ルールに従えば、障害等級が繰り上がりそうですが、後遺障害等級上、特定の後遺障害の組合せについては、等級が定められています。
 そのため、後遺障害等級表に組合せが定められている場合には、定められた後遺障害等級に該当することになります。
 例えば、右下肢を膝関節以上で失い(4級5号)、左下肢もひざ関節以上で失った(4級5号)場合では、併合1級ではなく、両下肢をひざ関節以上で失ったものとして、後遺障害等級1級5号に該当します。

 

【1つの障害に複数の評価が存在する場合】

 複数の後遺障害が存在する場合でも、1つの障害が観察方法によって、2つ以上の後遺障害等級に該当すると考えられる場合があります。
 この場合は、上位等級に該当することになります。
 例えば、右大腿骨に変形を残した(12級8号)結果、右大腿骨を1㎝短縮した(13級8号)場合では、併合11級とはならず、上位等級である後遺障害等級12級8号に該当することになります。

 

【1つの障害の他の障害が通常は派生する関係にあるとき】

 複数の後遺障害が存在する場合でも、1つの後遺障害が他の後遺障害の通常派生する障害にあたる関係にあるときは、併合はせず、上位等級に該当することになります。
 例えば、1上肢に偽関節を残す(8級8号)とともに、そこに頑固な神経症状を残した(12級13号)場合には、併合7級とはならず、上位等級である後遺障害等級8級8号に該当することになります。

投稿者: 小島法律事務所

2021.07.07更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「後遺障害② ~併合の基本ルール~」についての解説です。

 前回、自賠責保険が、後遺症を、(1)体の部位を10種類に分け、(2)各部位の障害を生理学的観点からさらに分類し、35グループの系列に分けていることを説明しました。

 さらに、自賠責保険は、後遺症が発現している部位や機能障害の程度に応じて基準を設けて、この35グループを要介護の場合は1級から2級(これを「自動車損害賠償保障法施行令別表Ⅰ」といいます。)、介護不要の場合は1級から14級(これを「自動車損害賠償保障法施行令別表Ⅱ」といいます。)に分けています。そして、自賠責保険は、この等級に該当するものを後遺障害として認めています。
 なお、この等級は、1級が最も障害が重く、等級が下がるに連れて障害が軽くなります。
 交通事故によって生じた後遺症については、この基準に従って、損害賠償請求を行うことが多いです。
※参照:後遺障害等級表 国土交通省


【併合の基本ルール】
 幸いにも、後遺障害が1つの場合には、等級通りに従って損害賠償請求を行うことになります。不幸にも、後遺障害が複数存在する場合には、以下のルールに従って、後遺障害についての損害賠償請求を行うことになります。
 この複数の障害を1つの障害として評価することを「併合」といいます。

 複数の後遺障害がある場合には、基本的には、最上位の等級と次順位の等級に応じて、以下のように最上位の等級が繰り上げされます。

①最上位の等級と次順位の等級が1~5級の場合
 この場合、重い等級に3級が加算されます。
②最上位の等級が1~5等級で次順位の等級が6~8等級の場合
 この場合、重い等級に2級が加算されます。
③最上位の等級が1~5等級で次順位の等級が9~13等級の場合
 この場合、重い等級に1級が加算されます。
④最上位の等級が1~5等級で次順位の等級が14等級の場合
 この場合、重い等級になります。
⑤最上位の等級が6~8等級で次順位の等級が6~8等級の場合
 この場合、重い等級に2級が加算されます。
⑥最上位の等級が6~8等級で次順位の等級が9~13等級の場合
 この場合、重い等級に1級が加算されます。
⑦最上位の等級が6~8等級で次順位の等級が14等級の場合
 この場合、重い等級になります。
⑧最上位の等級が9~13等級で次順位の等級が9~13等級の場合
 この場合、重い等級に1級が加算されます。
⑨最上位の等級が9~13等級で次順位の等級が14等級の場合
 この場合、重い等級になります。
⑩最上位の等級と次順位の等級が14等級の場合
 この場合、14級になります。

 しかしながら、障害も様々であり、左右対称部位の左右双方の障害の場合はどうなるのか、同系列に障害が生じた場合にはどうなるのか等、特殊なケースについては、別途ルールが存在します。


 次回は、併合の特殊なルールについてご説明いたします。

投稿者: 小島法律事務所

2021.06.26更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「後遺障害①」についての解説です。

【後遺障害とは】
 症状固定時に残存している症状(例えば体の痛みや痺れ、精神的機能の不調等)のことを、「後遺症」といいます。
 この後遺症の中でも、自賠責保険が定める基準により、障害として評価される後遺症のことを、「後遺障害」といいます。
 自賠責保険が定める基準は、(1)体の部位を10種類に分け、(2)各部位の障害を生理学的観点からさらに分類します。その結果、自賠責保険では、35のグループに分けています。ちなみに、このグループのことを「系列」といいます。
 整理すると以下のようになります。なお、器質的障害と機能的障害については、表が分かれている場合は、いずれかの障害が存在することで足ります。

障害部位一覧

(『労災補償障害認定必携』より)

 そして、自賠責保険が定める基準は、後遺症が発現している部位や機能障害の程度に応じて、1級から14級に分けています。
 なお、各等級に見合った労働能力喪失率と慰謝料額も基準化されています。

 

投稿者: 小島法律事務所

2021.06.11更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「物損に関連する慰謝料」についての解説です。

 交通事故による怪我で、人的損害が発生した場合、被害者は加害者に対して傷害慰謝料を請求することになります。
 では、交通事故で、物的損害のみの場合、被害者は加害者に対して慰謝料を請求することができるでしょうか。

 

【物的損害に関する慰謝料】
 物損に関連する慰謝料については、赤い本では、「原則として、認められない。」と記載されています。
 この点、交通事故の事案ではありませんが、財産上の損害に関する慰謝料について、最高裁判所の判決では、『一般には財産上の損害だけであり、そのほかになお慰藉を要する精神上の損害もあわせて生じたといい得るためには、被害者(上告人)が侵害された利益に対し、財産価値以外に考慮に値する主観的精神的価値をも認めていたような特別の事情が存在しなければならない』と判示しています(最高裁判所昭和42年4月27日・裁集民87号305頁)
 ですから、原則としては、物損に関連する慰謝料は認めらませんが、「財産価値以外に考慮に値する主観的精神的価値をも認めていたような特別の事情」が存在する場合には、慰謝料が認められると思われます。

 

【物損に関して、慰謝料が認められた例】
 ここで、物損に関する慰謝料が認められた事例を紹介します。
 事案は、霊園における墓石等に対する衝突事故により墓石が倒壊し、骨壺が露出する等した事案です(大阪地方裁判所平成12年10月12日判決・自保ジ1406・4)。

 この事案において、裁判所は、「一般に、墓地、墓石等は、先祖や故人が眠る場所として、通常その所有者にとって、強い敬愛追慕の念を抱く対象となるものということができるから、侵害された物及び場所のそのような特殊性に鑑みれば、これを侵害されたことにより被った精神的苦痛に対する慰謝料も損害賠償の対象になるものと解するのが相当である。」と判示し、慰謝料として10万円を認めています。

投稿者: 小島法律事務所

2021.06.04更新

 今回は、飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「傷害慰謝料」についての解説です。

 交通事故によって、怪我を負い、その怪我の治療のために入院や通院を余儀なくされてしまった場合、その怪我や入通院による精神的苦痛は、傷害慰謝料という形で、加害者に対して、損害賠償請求を行います。

 この傷害慰謝料の算定については、実務では、赤い本に記載されてある入通院慰謝料表(通称別表)を基準に、治療期間に応じて金額を算出します。
 この別表は、慰謝料の目安表であり、別表Ⅰと別表Ⅱの2種類あります。そして、怪我の程度によって、表を使い分けます。
 なお、別表Ⅱよりも別表Ⅰで算定した方が、傷害慰謝料の金額は高くなります。

 ですので、傷害慰謝料の算定では、別表Ⅰと別表Ⅱのどちらを使うか、治療期間はどの様に算定するのかが問題となることが特に多いです。

 

【表の使い分け】
 赤い本によると、『傷害慰謝料については、原則として入通院期間を基礎として別表Ⅰを使用する。』『むち打ち症で他覚所見がない場合等は入院期間を基礎として別表Ⅱを使用する。』と、原則として別表Ⅰを使用し、例外として別表Ⅱを使用するとしています。
 そして、『「等」とは軽い打撲・軽い挫創(傷)の場合を意味する。』としています。

 ですので、大事故でない場合によく生じるむち打ちや軽い打撲の場合には、別表Ⅱを使用することになります。

 

【治療期間について】
 先ほどの説明の通り、別表Ⅰと別表Ⅱのいずれも、慰謝料の算定の基礎となる治療期間については、「入通院期間」としています。
 なお、入通院期間とは、治療を開始した日から治癒した日または症状固定日(症状固定については、過去ブログを参照してください。)になります。

 ですが、症状、治療内容、通院頻度は、個別事情であり、場合によっては治療が長引くこともあります。そのため、治療状況によっては、入通院期間すべてが、慰謝料の算定の基礎となるのか問題となります。

 この点、赤い本によれば、別表Ⅰについては、『通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえて実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある』としています。また、別表Ⅱについては、『通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。』としています。

 ここで気を付けていただきたいことは、実通院日数の3倍または3.5倍の期間を対象とするのは、あくまで例外であって、原則は入通院期間であることです。

 そして、「長期」とされる期間の目安については、青い本が『通院が長期化し、1年以上にわたりかつ通院頻度が極めて低く1か月に2~3回程度の割合にも達しない場合…前記基準表をそのまま機械的に適用できない。』と記載していることからすれば、1年が目安になると思われます。

 ですので、傷害慰謝料の算定おいては、多くの場合、実通院日数の3倍または3.5倍ではなく、入通院期間を用いて、金額を算定することになると思われます。

 

投稿者: 小島法律事務所

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