2020.12.17更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「人身傷害保険」についての解説です。

 自動車事故の際に使用される任意保険のサービス内容は、大きく分けると、①自分や同乗者の(自分側の)損害を補償するものと②相手方への損害を代わって賠償するものとに分けられます。

 このうちの前者の1つに、「人身傷害保険」という保険商品があります。この保険は、保険契約者やその同居の家族などの一定範囲の人が交通事故によって怪我や死亡した場合に、自身の契約している自分側の保険会社が、その損害を補償するというサービスです。

  この保険が登場したのは比較的最近で、平成10年ころです。それまでの自動車保険は、相手に損害を補償するという点にのみ特化していましたが、このころから自分の損害を自分の契約している保険会社が補償するという新たな形の保険商品が誕生しています。

 その人身傷害保険については、具体的な内容は各保険会社の約款によって差はあるものの、ほとんどに共通して①使用しても等級が下がらない②相手の無保険や自身の過失といった事情に左右されにくい③簡易迅速に補償を受けられるという各メリットがあります。

 ②については、自身の契約する保険を使用するというものですから、相手が無保険や所在不明の場合でも、自身にも事故発生について過失がある場合でも、約款に定められた支払基準に基づいた保険金が受け取れるのが原則になっています。

 ③については、通常、相手方の保険会社が支払いを行う場合には、示談が成立するか、もしくは裁判所で判決が確定するまで、支払いがされないのが原則です(相手の保険会社による「一括対応」や「内払い」といった先払いの制度もありますが、お互いの主張が対立しているような事案では期待できません)。 

 これに対して、人身傷害保険を請求する場合、請求先は自分が契約している保険会社ですから、支払いは迅速に行われます。 

 以上のように、人身傷害保険は、被害者加害者双方の過失認識に差がある場合などに、非常に使い勝手の良い保険商品であるといえます。ただし、比較的新しく、複雑な点もあるので、すべての弁護士が十分に知識・経験を有しているとは、言い難いと思います。 

 当事務所の弁護士は、このような保険の知識に精通しておりますので、お気軽にご相談ください。

投稿者: 小島法律事務所

2020.12.03更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「あおり運転者に対する損害賠償請求」についての解説です。

 昨今、あおり運転に対する処罰規定が創設されるなど、あおり運転に対する関心が高まっています。

 あおり行為によって引き起こされた交通事故(たとえば、被害車両の後方から加害車両が車間距離を保持せず、急接近を繰り返したうえで、加害車両が被害車両の追突するような事故)が発生した場合、もちろん被害者は加害者に対して損害賠償を請求することができます。

 交通事故における加害者から被害者への賠償は、加害者が任意保険に加入している場合、その保険会社によって代わりになされるのが通常です。しかし、上述のようなあおり行為が原因となって事故が発生した場合には、加害者側の保険会社は、「故意免責」を理由として、被害者への保険対応を拒否する可能性があるのではないか、という疑問が生じます(現実にはあまりないとは思いますが)。

 まず、故意免責とは、保険金支払い事由にあたる事故が、被保険者(加害者)の故意によって生じた場合に、保険会社が保険金の支払いを拒否できるというものです(保険法17条1項、各種保険約款参照)。

 上述のような急接近を繰り返すようなあおり行為は、故意になされるものと考えられますから、そのあおり行為が原因で事故が発生した場合には、加害者側の保険会社は、この故意免責の主張をして、保険対応を拒否するという可能性が一応は考えられるのです。

 そして、以上の故意免責について生じる論点に関し、判断された最高裁の判例(最高裁平成5年3月30日判決(民集47巻4号3262頁))があるので要旨をご紹介します。

 この事件は、加害者が車両を発進させる際に、あるトラブルの相手方であった被害者が、当該車両の扉を開けようとしたり、フロントガラスをたたくなどしたために、加害者が車両を発進させたところ、これにより被害者が転倒し、数日後に死亡したという事件です。そして、被害者の遺族が加害者側に損害賠償請求を行ったところ、加害者側の保険会社は故意免責を主張して賠償を拒否したというものです。

 この事件において裁判所は、①未必の故意であっても故意免責の場合の「故意」に含まれることを前提にしつつ②任意保険契約当事者の意思解釈からすると、故意を原因とする事故においても、予期しなかったような損害が発生した場合には、免責の範囲外である、との判断を行いました。

 つまり、上記判例をあおり行為にも引き直して考えると、あおり行為を原因とする事故が発生した場合には、あおり行為の故意と、あおり行為による事故発生及び被害の範囲を加害者が予期していたかという2つの観点から、保険会社の故意免責の主張が成立するかが検討されることになるといえます。

 したがって、あおり行為が原因となった事故が発生した場合でも、それをもって直ちに故意免責が適用されるわけではないということになります。

 当職の実感としては、実際に加害者側の保険会社が故意免責を主張するケース自体、稀だと思います。被害者と加害者が通謀して事故を起こすような(いわゆる、つくり事故の)ケース等の場合には故意免責が主張されますが、その場合には、ほとんどの加害者側の保険会社は、綿密な調査を行っていると思います。

 ちなみに、故意免責に該当し、加害者側の保険会社が保険対応を行わない場合には、自賠責に対する被害者請求のほか、加害者本人から賠償を受けたり、自身が加入する任意保険(人身傷害保険等)から一定の補償を受ける等の手段が考えられます。

投稿者: 小島法律事務所

2020.11.20更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「道路交通法改正後のあおり運転の状況」についての解説です。 

 まず、令和2年8月に大分県で、あおり運転の処罰規定が道路交通法に新設された後、初の逮捕者が出ました。加害者は、接近して約3kmにわたりクラクションを鳴らし続けるなどしたうえ、追突事故を起こし、更に被害者の肩をつかみ「包丁で刺す」などと述べ暴行・脅迫を行ったとして、令和2年10月時点で、刑事裁判が進行しています。

 令和2年9月には、北海道で、高速道路上で道路をふさいで後続車を停止させたとして、高速道路では初めてのあおり運転事件が書類送検されています。また、同月、兵庫県の公立中学校の教員も書類送検されています。

 令和2年10月には、静岡県の高速道路上で、約2kmにわたってクラクションや接近、追い抜きを繰り返し、接触事故を起こしたとして逮捕される事例も発生しています。

 このように、令和2年6月30日に道路交通法が改正されてあおり運転が新設されて以降、あおり運転に対して厳しい取り締まりが行われています。

 ちなみに、上述した事件はいずれも、急ブレーキ禁止義務違反(道路交通法24条)、車間距離保持義務違反(同26条)、追い越し方法違反(同28条1項)、警音器の使用方法違反(同54条2項)、安全運転義務違反(同70条)等の違反行為が見受けられ、あおり運転(道路交通法117条の2の2第11号)の「あおり行為」に該当する行為が行われています。

 そして、これらのあおり運転で逮捕・送検されているような事件の特徴としては、数キロメートルの長距離にわたって継続的に上記あおり行為を繰り返したり、高速道路上で進路をふさいで、被害車両を停止させるなど、特に悪質な事案であることが伺われます。

投稿者: 小島法律事務所

2020.11.20更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自賠責保険の支払基準改定」についての解説です。

 令和2年4月から、交通事故における自賠責保険の保険金支払基準が改訂されています。その理由は、金融庁のホームページによると、平均余命や物価水準等の事情を反映させるためとのことです。具体的な金額の変化は以下のとおりです。

 

 入通院慰謝料    4200円→4300円

 休業損害      5700円→6100円

 入院中の看護費   4100円→4200円

 自宅看護料     2050円→2100円

 葬式費用    原則60万円 →100万円

 死亡慰謝料(本人分)350万円→400万円

 そして、後遺障害慰謝料についても、12級以上は増額されています。

 

 この支払基準は、令和2年4月以降に発生した交通事故から適用されます。それ以前に発生した事故については旧基準が適用されますので、注意が必要です。

投稿者: 小島法律事務所

2020.11.19更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「経済的全損の損害賠償金額」についての解説です。(「全損」についての説明記事は こちら

 交通事故によって車両が経済的全損となった場合、その車両の損害としては、車両の時価相当額及び買替諸費用が認められます。一方で、経済的全損ではない場合、修理費用相当額が損害と認められます。

 要するに、車両時価相当額か、修理費用相当額の、どちらか低い方が、車両の損害として認められるのが原則となります。

 ただし、時価額等より修理費用が高いにもかかわらず、修理費用全額の賠償が認められるような例外もあります。

 まず、①被害車両と同種同等の車両が中古車市場で入手困難な場合です。この場合には、そもそも車両の時価額が明確ではないので、買いなおしにかかる費用もわからず、時価額を超える修理費用でも認めるほかないといえます(たとえば、特別な内装や塗装の施された観光バスにつき、同種車両の時価額を超えて修理費用全額が認められた事例として、札幌地判平成8年11月27日自保ジャ1189巻5号。)。

 また、②社会通念上、買いなおしではなく修理して使用したいと希望する相当な理由が認められる場合も、例外にあたることがあります(たとえば、同種同等の車両の購入が困難で、被害者が当該自動車に強い愛着があり、実際に修理まで行っていた事例において、時価額70万円に対し修理費用270万円余りが認められた事例。神戸地判平成8年5月24日・交民集29巻3号771頁など)。 

 ちなみに、③車両の時価額等が修理費用を上回っているものの、その差がわずかである場合にも、修理費用全額の賠償が認められることがあります(東京高判昭和57年6月17日 交民集15巻3号611頁)。

 以上のように、自動車事故における物損では、車両の時価額と修理費用額、自動車が経済的全損に該当するのか、そして賠償される金額はいくらになるか等、事故の被害者側と加害者側の双方ともに、幅広い知識と豊富な経験が要求されるといえます。

 当事務所の弁護士は、このような交通事故の知識と経験に精通しております。ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。

投稿者: 小島法律事務所

2020.11.05更新

  飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「交通事故による損害と消滅時効」の解説です

 皆さんもご存じのとおり、交通事故に関する損害賠償請求権(不法行為に基づく損害賠償請求権)は、一定期間行使しないと時効により消滅してしまいます(これを「消滅時効」といいます)。

 この消滅時効にかかるまでの期間は、改正前の民法では損害及び加害者を知ってから3年でした(旧民法724条)。しかし、改正民法では、原則は旧民法と同様に3年のままですが、生命または身体を害する不法行為については、5年に延長されました(改正民法724条の2)。

 つまり、交通事故の場合において、死亡や怪我に伴う人身損害の部分については、消滅時効にかかるまでの期間が、従前の3年から、5年に延長されたということです。

 多重事故や、後遺障害が発生するほどの被害が大きな事故である場合では、治療や交渉等が長引き、消滅時効にかかるまでの3年以内での訴訟提起に至らない場合もあります。その場合には、相手方と協議のうえで時効の延長を認めてもらったり、交渉を打ち切って訴訟を提起しなければなりませんでした。今回の改正では、これに猶予期間ができました。

 ただし、この時効の規定は、前述のとおり人身損害の部分にのみ適用ですから、物損の部分には適用されません。交通事故において人損と物損の双方が生じている場合には、両者で時効にかかるまでの期間が異なりますので、注意が必要です。

投稿者: 小島法律事務所

2020.11.04更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「飯塚市の交通事故発生件数の変遷」についての解説です。なお、以下の交通事故件数や人口のデータは、飯塚市のホームページにある統計データを参照しています。

 まず、平成17年(2005年)の飯塚市での警察に届け出された交通事故発生件数(物損のみも含む)は、1838件です。当時の飯塚市の人口は13万3357人なので、単純に計算すると、一人当たり交通事故発生率は、約0.01313件です。

 同様に計算していくと、平成22年(2010年)の飯塚市での事故発生件数は1329件で、当時の人口は13万1492人なので、一人あたりの交通事故発生率は、約0.01010件です。平成27年(2015年)の飯塚市での交通事故発生件数は1232件で、当時の人口は12万9146人なので、一人当たりの交通事故発生率は、約0.00953です。

 そして、現段階で最新のデータである平成30年の飯塚市での交通事故発生件数は、1084件です。当時の人口は12万8522人なので、一人あたりの交通事故発生率は、約0.00843です。

 以上を見ると、飯塚市内での事故の発生件数と発生率は、いずれも年度ごとに下がっていっているというのが読み取れます。

 自動車を安全運転に対する意識が改善されたことや、ブレーキアシスト機能等の自動車の性能の向上等が理由にあると推測されます。 

投稿者: 小島法律事務所

2020.11.04更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「自賠責保険と無責事故」についての解説です。

 自賠責保険とは、原則としてすべての自動車の所有者が加入を義務付けられている強制保険です。その趣旨は、大きな損害に繋がることもある自動車の交通事故による人身損害について、被害者の救済のため、一定の補償制度を確保しておくことにあります。

 そのような趣旨ですから、事故発生について被害者側にも過失があった場合でも、支払額が減額されないか、減額の幅が小さく抑えられています。

 まず、被害者の過失割合が7割未満の場合には、怪我、後遺障害、死亡のいずれでも減額されません。

 また、けがの場合は過失割合が7割以上10割未満の場合でも、2割減に留まります。

 後遺障害・死亡の場合は複雑で、過失割合が7割以上8割未満の場合には2割減、8割以上9割未満には3割減、9割以上10割未満の場合には5割減、という扱いです。

 ただし、以上に対して、自賠責保険でも補償されない場合があります。それが無責事故といわれる類型です。これは、事故の発生について被害者に一方的(10割の)過失があるようなケースです(たとえば、信号停車中の車両に追突して、追突した人がけがをしたような場合です)。このような場合では、基本的に一方的過失がある人は自賠責保険では一切の補償がされません。一方的過失がある人は、契約している任意保険(たとえば、人身傷害保険や自損事故傷害保険等)による補償を検討することになります。

投稿者: 小島法律事務所

2020.10.22更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「ノンアルコールビールと飲酒運転について」の解説です。 

 飲酒運転とは、道路交通法上酒気帯び運転(65条1項)や酒酔運転(117条の2第1号)のことを指す言葉で、アルコールが体内に残っている(保有している)状態で運転することをいいます。

 ちなみに、ウイスキー入りのチョコレートや奈良漬けなど、アルコールが含有している食品を摂取してアルコールを保有した状態で運転しても、飲酒運転に分類されます。

 ノンアルコールビールに代表されるノンアルコール飲料とは、アルコールテイストではあるものの、法的にはアルコール飲料(酒類)に該当しない飲料のことをいいます。ですので、甘酒などと同じく、20歳未満でも飲むことができます。 

 そして、アルコール飲料とは、アルコール含有量が1%以上の飲料のことです(酒税法2条1項)。つまり、ノンアルコール飲料とはアルコール含有量が1%未満の飲料のことですから、アルコールの含有量が0%とは限らないということになります。

 実際にノンアルコール飲料で検索してみると、アルコールの含有量が0%でないものも散見されます(もっとも、昨今の飲酒運転の厳罰化もあってか、アルコール含有量0%のノンアルコール飲料も多くみられます)。

 ノンアルコール飲料だから大丈夫、と油断して飲んでしまうと、飲酒運転で摘発されてしまう可能性もあります。ですので、自動車の運転者はもちろん、未成年者、アルコールの影響を受けやすい人などは、ノンアルコール飲料との記載があっても、その飲料のアルコール含有量に注意して飲む必要があるといえるでしょう。

投稿者: 小島法律事務所

2020.10.08更新

  飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「あおり運転行為者による損害賠償請求」についての解説です。

 昨今、皆さんご存じのとおり、あおり運転が社会問題になっており、あおり運転に対する罰則の法制化もされ、広く議論がされています。

 今回は、あおり運転によって発生した交通事故について、民事訴訟で争いとなった興味深いケースをご紹介します。

 それは、名古屋地裁平成28年1月22日判決(交民49巻1号72頁)です。結論だけ先に紹介すると、あおり運転を行った者による損害賠償請求は、認められないという判断が下されました。

 この事件は、片側3車線道路を普通貨物自動車Y(以下、「Y」とします)が走行していたところ、後続を走行していた普通貨物自動車X(以下、「X」とします)がYの後ろに付き、左右に蛇行したり、前照灯をハイビームに上げ下げするなどしてあおり運転を行ったので、Yが別の車線へと退避すると、Xも車線変更してYを追い抜き、そのままYの前方へと割り込み、急ブレーキをかけ、これによりYがXに追突したというものです。あおり行為を行っていたXは、この事故による損害をYに請求して裁判になりました。

 この点、車と車の追突事故においては、追突した車両側の過失が大きいとされるのが一般的です。その一般論からすると、今回のケースではYがXに追突する形となっていますから、Yに不利な判断がされることも予想されます。

 しかしながら裁判所は、Yの過失も否定しがたいものの、本件の事故の発生は、XがYの前に割り込んだり急ブレーキをかけたりして、故意に誘発されたものであり、その事故結果もXが予測しえた範囲内であるから、「本件事故について、故意に道路交通法違反の運転等をした原告(X)が、被告(Y)の道路交通法違反の過失責任を問うことは、信義則上、許されない」として、Xの損害賠償請求を否定しました。 

 この判決については、あおり運転が事故発生の主要な原因である以上、その責任を負うべきはあおり運転を行った運転者であることからすれば、妥当なものであるといえます。

 また、本件の裁判所の認定によれば、追突したY側にも一定の過失があるとされているので、そのままではXの請求が一部は認められてしまう可能性があるところ、裁判所が信義則(民法1条3項)という法の一般原則を認めることで妥当な解決を図った点は特殊だといえます。

投稿者: 小島法律事務所

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