2019.08.09更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「車両の時価額」についての解説です。

 中古車両が交通事故によって全損となった場合には、事故前の車両取引価格(車両時価額+買替諸費用)が損害額となるのですが、そのうちの車両時価額を算定するのは困難となる場合があります。

 この点については実務上、昭和49年の最高裁判決(最判昭和49年4月15日民集28巻3号385頁)をベースに考えるのが主流です。この判例によれば、自動車の取引価格は「原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によつて定めるべきであり、右価格を課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によつて定めることは、加害者及び被害者がこれによることに異議がない等の特段の事情のないかぎり、許されないものというべきである」と判示されています。つまり、車両時価額は、全損となった車両と同種同等の車両の市場価格によって決定されるのが原則となっています。市場価格そのものは、レッドブック等の中古車情報誌のほか、専門業者の見積もり、インターネットサイトの中古車販売情報の写し等をもとに、最終的には裁判所が認定します。

 上記の車両時価額の算定方法は、判決でも「原則」といわれているとおり、例外があります。例えば、この判決でも指摘されているとおり、被害者と加害者双方の同意がある場合が挙げられます。そのほかに、他の裁判例によると、自動車の初年度登録から長期間が経過し車両の中古車市場での価格を算定する資料がない場合(東京地判平成13年4月19日交民集34巻2号535頁)もあります。そのほかにも、発売から間もない新車、特殊な車両や改造車など、中古車の市場価格が形成されていない場合も考えられます。

 このような例外的な場合には、税法上の概念である減価償却の考え方によって損害額が算定される場合があります。この点、減価償却には「定率法」と「定額法」の2つの方法があり、裁判ではいずれが採用されるかがさらなる問題になりえます。この点について、定率法を採用したと思われる裁判例は散見される(京都地判平成18年4月28日自保ジャ1651号21頁など)一方で、定額法を用いた裁判例は見当たりませんでした。

投稿者: 小島法律事務所

2019.07.30更新

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「施術費」についての解説です。

 交通事故の治療関係費に関連していわれる「施術費」とは、主に整骨院にかかる費用のことをいい、病院の費用である「治療費」とは区別されています。施術費は医療行為に伴う費用とは区別されますから、交通事故における治療関係費として裁判所に認められるか否かは、従来から特に争いになります。

 施術費が治療関係費として裁判所に認められる基準は、症状固定までに実際になされた施術であり、必要かつ相当な施術であるかという点です。これらについて、被害者側が詳細かつ具体的に主張・立証していく必要があります。ちなみに、医師による積極的な指示がある場合には、全額が認められやすい傾向にあります。

 現実には加害者側としても、交通事故の被害者が実際に整骨院に通院し、費用が発生しているからには、その一部は認めるとの反論を行うことがあります。その反論にあたり、どの程度の金額が妥当であるかを算定する手段としては、2つ考えられます。1つは労災保険料金や健康保険料金の1.5~2倍程度を上限とする考え(「保険基準説」)。もう1つは、請求額のおおよそ何割かを認めるという考えです(「割合説」)。前者の「保険基準説」は計算が煩雑で、加害者側に大きな負担になります。そこで実務上多く採用されているのが後者の「割合説」です。この基準は、請求額の〇〇パーセントを認めるという割合の認定となり、加害者側の反論は非常に楽になり、裁判所にとっても柔軟な認定を可能にする点にメリットがあります。 

以上の詳細については、「整骨院における施術費について」民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)下巻(講演録編)2018年が非常に参考になります。 

2015年には、複数の医院や整骨院が関与し、施術費を不正請求によって騙し取ったとして、数十人の逮捕者が出る事件が発生しました。この事件を端緒にしてか、被害者が施術費を請求した際に、加害者側が不正請求であるとして、全額について因果関係を争うというケースも増えています。

投稿者: 小島法律事務所

2019.07.24更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「LAC基準」についての解説です。

 「LAC基準」とは、交通事故の場面で、交通事故当事者が自身の損害保険会社の弁護士費用特約を利用するにあたり、予め日弁連リーガル・アクセス・センター(LAC)が損害保険会社と協議のうえで定めている弁護士費用の保険金支払基準のことをいいます。

 通常依頼者が弁護士と契約する場合には、報酬額などを契約当事者間で決定することが必要になりますが、LAC基準があることによって、支払い基準が明確化され統一されることになります。このように、LAC基準によって、依頼者、損害保険会社、弁護士がそれぞれ簡易迅速に契約・対応できるようになるというメリットが生じます。

 LAC基準の詳細な内容については、「LACマニュアル」に記載されており、弁護士及び日弁連と協定を結んだ各損害保険会社に共通の認識となっています。

投稿者: 小島法律事務所

2019.07.16更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「免許停止と免許取消の差」についての解説です。

 まず、どちらも道路交通法規に違反して車を運転した者に科される行政処分である点は共通しています。両者の違いは、免許停止が運転免許の効力が一時的に停止されるものであることに対して、免許取消は将来にわたって失効することにあります。つまり、免許取消の方が重い処分です。ただし、免許取消となっても、最短1年から最長10年間の欠格期間経過後に、免許を再取得することは可能です。

 免許停止は、違反点数6点以上でなされる処分です。6点の違反の例として、無車検運転や30km以上50km未満の速度超過などがあります。免許の停止期間は30~180日までの6段階です。

 対して、免許取消は、違反点数15点以上でなされる処分です。例えば、酒酔い運転は35点、無免許は25点の違反となっていますから、これらに該当すると免許取消処分を受けることになります。

投稿者: 小島法律事務所

2018.08.01更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による交通事故の物損についてのお知らせです。

交通事故の際に、乗っていた自動車や自転車が破損した場合は損害賠償請求することになります。のみならず、身に着けていた物車などに積んでいた物が破損することがあります。このような場合、通常、「物件損害自認書」(各社呼び名は違うと思いますが。)を相手方保険会社に提出して、賠償を求めます。

その際には、領収書被害品の写真を添付するとよいでしょう。経過年数による減額はありえますが、比較的容易に賠償を求めることができます。

気を付けたいのは、交通事故だからといって、車や自転車などの自身が運転していた物の損害ばかりに目が行って、身に着けていた物や車に搭載していた物(かえって車自体より高価な場合もあります。)の損害について請求し忘れることです。交通事故の被害に遭われた際は、どのような損害が発生したかを一番ご存じなのは被害者の方なので、「こんなものについても請求できるだろうか?」と思っても、とりあえず弁護士にご相談してもらいたいと思います。

投稿者: 小島法律事務所

2018.07.31更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「危険性帯有者」の解説です。

運転免許の取り消し、停止等については、道路交通法103条に規定があります。同条1項8号は「前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。」に免許を取り消し、または6か月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができると規定しています。

この8号については、1号から7号までと異なり、具体的な行為を規制しておらず「危険性帯有者」としての規制であると解されます。従前、この条項はあまり活用されていなかったようですが、近時の「あおり運転」の増加を受けて、あおり行為をした運転者が「危険性帯有者」として取り締まりを受ける可能性があります。

投稿者: 小島法律事務所

2018.07.30更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による、あおり運転の厳罰化についてのご報告です。近時、あおり運転の危険性が広く知られるようになり、厳罰化の流れとなっています。

道路交通法上も車間保持義務違反、急ブレーキ禁止違反、進路変更禁止違反、追い越し方法の違反、減光等義務違反、警音器(クラクション)制限違反、安全運転義務違反などに問われる可能性がありますが、刑法上も、暴行罪(東京高裁昭和50年4月15日判決参照。並進走行中の事案。)や殺人罪に問われる可能性もありますし、危険運転致死傷罪が適用されることもあります。今後具体的事案でどのような違反、犯罪となるかについては、引き続き注目していきたいと思います。

なお、あおり運転の立証にはドライブレコーダーが役に立つことがありますので、今後、ドライブレコーダーの普及によっても、あおり運転が減少する可能性はあります。また、自衛手段としても、ドライブレコーダーの搭載を検討する必要があります。

投稿者: 小島法律事務所

2018.03.29更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による交通事故関連の研修についてのご報告です。

平成30年3月28日に福岡県弁護士会で開催された交通賠償法研究会に出席しました。今回は「むちうち14級の境界」がテーマで、むちうち症状による後遺障害非該当と14級の境界がどこにあるのかについて議論されました。諸事情あって中座しなければならなかったのですが、レジュメに記載された事例報告の内容がとても素晴らしく、各先生方の工夫のあとが見られました。むちうちの非該当と14級との差がどこにあるかについては、なんとなくではありますが、基準らしきものが見えてきました。

投稿者: 小島法律事務所

2018.03.27更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による、交通事故ゼミのご報告です。平成30年3月23日、福岡市内の法律事務所で、福岡県弁護士会交通事故委員会が主催する第11回「交通事故ゼミ」が開かれました。今回のテーマは「損益相殺・過失相殺・素因減額」でした。いずれも一般的な書籍の最後の方に書かれているところでなかなか手が回らない分野ではあるのですが、過失相殺などは毎回問題になりますからとても重要です。また、損益相殺は覚えることが多く、このような機会に一度総復習できたのはよかったと思います。

交通事故ゼミはこれで最後となりました。1年間を通じて立場や経験値の違う弁護士と議論を深めることができたのはとても有意義でした。

投稿者: 小島法律事務所

2018.02.19更新

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による、交通事故ゼミのご報告です。平成30年2月15日、福岡市内の法律事務所で、福岡県弁護士会交通事故委員会が主催する第10回「交通事故ゼミ」が開かれました。今回のテーマは「部位別後遺障害」と「最近問題になっている後遺障害」でした。後遺障害については、人体の各部位はもちろん、精神障害についても問題になることから、適正な賠償を実現するためには、最低限の医学知識と後遺障害の認定のポイント、訴訟上の想定しうる争点をくまなく押さえておく必要があります。

投稿者: 小島法律事務所

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